2727はじめよう骨粗鬆症治療薬 選び方と使い方
4/8

E  骨粗鬆症診療の目標は骨折リスクの低減 包括的骨折リスク評価法の必要性32Part 2診断のキホン!骨折のハイリスク者を発見し,その患者のリスク要因を除去,減弱する.低骨密度は骨折のリスク要因の 1 つである.骨密度を使用しない FRAX® と OSTA は骨密度測定対象者の抽出に利用する.骨密度を使用する FRAX® は薬物治療開始基準の中で利用する.2 型糖尿病では,FRAX® は骨折確率を過小評価するので要注意!骨粗鬆症では骨密度は低下しているが,それによって大きな障害が発生するわけではない.しかし,ひとたび骨折すれば,日常生活動作が傷害され,生活の質(QOL)が低下し,死亡リスクも上昇する等,重大な問題を引き起こす.したがって,骨粗鬆症診療の目標は骨折予防であり,そのために個々の患者の骨折リスクを評価し,ハイリスク者を発見し,その患者のリスク要因を除去,減弱して骨折リスクを低減することを目指す.骨折リスクの評価法として最も広く用いられるのは骨密度測定である.骨密度が低下するほど,骨折リスクが上昇することには多くのコホート研究からのエビデンスがある.12 のコホート研究のメタアナリシス1)によれば,二重エネルギー X 線吸収法(dual-energy X-ray absorptiometry:DXA)による大腿骨頸部骨密度の 1SD 低下ごとに大腿骨近位部骨折リスクは 2.21 倍,骨粗鬆症性骨折リスクは 1.56 倍になる.ただし,人数でみると,骨密度が骨粗鬆症域よりも低骨密度域のほうがはるかに多いので,骨折者数は前者よりも後者から生じるほうが多くなる1).したがって,骨密度では骨折例の見逃しが多くなり,40 歳以上の地域住民女性を対象に若年成人平均値(YAM)の 70%未満で向こう 10 年間の骨折者を予測すると感度は 35.2%であった2).これは低骨密度が骨折のリスク要因の 1 つにすぎないからで,これを改善するには他の骨折のリスク要因を加味した包括的な骨折リスク評価法が必要になる.骨粗鬆症のリスク評価 1 2

元のページ  ../index.html#4

このブックを見る