2727はじめよう骨粗鬆症治療薬 選び方と使い方
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―基礎疾患がある場合  こんなときどうする?Part6閉経前閉経後卵巣副腎アンドロゲンエストロゲン変換アロマターゼアロマターゼ阻害薬(AI)図 1 乳がんにおけるホルモンの作用機序アロマターゼ阻害薬によりエストロゲンの血中濃度は 0 になるている.3)乳がん術後における AI の作用機序乳がんの薬物療法は,抗がん剤であるシクロホスファミド(cyclophosphamide:CPA),メトトレキサート(methotrexate:MTX),ホルモン療法で使用される薬剤は,選択的エストロゲ ン 受 容 体 修 飾 薬(selective estrogen receptor modulator:SERM) で あ る タ モ キ シ フ ェ ン(tamoxifen:TAM),LH-RH アナログであるゴセレリン,AI であるアナストロゾール,レトロゾール,エキセメスタンなどがあり,いずれも続発性骨粗鬆症を引き起こす.女性は閉経前後でエストロゲンが分泌される部位が異なり,閉経前にはエストロゲンは主として卵巣から分泌され,閉経後には卵巣からのエストロゲン分泌量は極めて減少し,卵巣に代わって副腎から分泌される男性ホルモンがアロマターゼにより脂肪組織で変換されてエストロゲンとなる.閉経前の患者には SERM である TAM が,閉経後の患者においては AI が奨励されている.TAM の作用機序はエストロゲン受容体とエストロゲンの結合を競合的に阻害することで効果を示し,骨に対しては閉経状況で異なる作用となり,閉経前は骨量減少に働き,閉経後は骨量増加に働く.AI の作用機序は,男性ホルモンの女性ホルモンへの変換酵素であるアロマターゼを阻害することにより,乳がん細胞の増殖を抑制する.AI には極めて強力な抗エストロゲン作用があり,AI によってエストロゲンの血中濃度はほぼゼロになる(図1).そのため,AI は乳がん組織のみならず全身におけるエストロゲン作用を著明に低下させる.骨組織におけるエストロゲン作用の低下は,骨吸収の亢進と骨密度の低下をもたらす.そのため AI の重要な副作用として骨粗鬆症および骨折リスク上昇が懸念されてきた.現在,術後 5~10 年までの投与が標準治療となっている.そのため,ホルモン療法に伴うエストロゲンエストロゲンによる乳がん細胞の増殖203

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