2730産科麻酔化学
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産科麻酔学を探求することの意義 出産は,女性やその家族にとって人生の重大事であり,生理的な現象である一方,合併症や急変の危険性をはらむ側面も備えている.近年,妊産婦の高齢化,基礎疾患の合併の増加,また出産方法の多様化により,周産期医療はより高度な知識と技術,誠実な態度を求められるようになっている.そのなかで,「産科麻酔学」は,安全で安心かつ快適な出産を実現するために,極めて重要な位置を占める専門領域である.産科麻酔学の歴史的変遷 世界における産科麻酔学の歴史1)分娩時鎮痛の変遷産科麻酔学の黎明は1847年,イギリスの産婦人科医James Young Simpsonが,骨盤異常を有する産婦に対しエーテル吸入麻酔を用いたことにはじまる 1).同年11月にはクロロホルム麻酔も成功させ,これが後の普及の契機となった 2).当時は,出産の痛みは「神の懲罰」とみなされ,分娩時の鎮痛には宗教的・倫理的な抵抗が強かったが,1853年にJohn Snowがヴィクトリア女王の出産に際しクロロホルムを用いたことで,広く社会的に受け入れられるようになった 3).その後,20世紀初頭には,スコポラミンとモルヒネを併用した「twilight sleep(まどろみ分娩)」が欧米で流行するが,モルヒネの胎児への悪影響や母体の合併症により衰退していった 4).これにかわって,脊椎くも膜下鎮痛法や硬膜外鎮痛法などの脊髄幹鎮痛が台頭していき,1909年にWalter Stoeckelが仙骨麻酔を無痛分娩に応用し 5),1931年にはEugen Aburelが持続仙骨麻酔法を開発した 6).1940年代以降,腰部硬膜外麻酔が改良され,脊髄幹鎮痛による無痛111産科麻酔学(Obstetric Anes-thesiology)を学ぶにあたって産科麻酔学とは第1章11Key point 産科麻酔学(Obstetric Anesthesiology)とは,妊娠・分娩・産後の女性に対する鎮痛および麻酔管理と,心身両面のサポートを含む医学分野である. 産科麻酔に従事する医師は,妊娠に伴う生理学・解剖学的変化を熟知し,様々な状況に応じた適切な鎮痛・麻酔を提供することが求められている. 産科麻酔学は一時の鎮痛や麻酔だけでなく,かかわる妊産婦とその家族の豊かな家族関係の構築に重大な影響を及ぼす可能性があり,その社会的意義は日ごとに大きくなっている.Key point22

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