早産期における鎮痛・麻酔管理の特徴とは 早産期における麻酔管理は,通常の妊娠・分娩管理とは異なり,多くの複雑かつ不確定な要素が交錯するため難解になることがある.分娩が急速に進行することもあれば,予期せぬ帝王切開に移行することもある.また,母体合併症,使用中の薬剤,胎児の状態など,複数の因子を総合的に評価したうえで,安全かつ迅速な麻酔法を選択しなければならない.加えて,麻酔薬の胎児への影響や,子宮収縮抑制薬との薬物相互作用を考慮する必要があり,高度な臨床判断が求められることもある.また早産期では,HDP,常位胎盤早期剝離,前置胎盤,子宮内感染などの合併症を伴う頻度が高く,また胎児の未熟性のため胎児の予後や新生児管理にも影響が及ぶ可能性がある.このため,麻酔科医は,産科医,新生児科医と密接に連携しながら,分娩様式の選択,タイミング,麻酔方法,母児双方の急変時対応などについて,的確かつ迅速に意思決定を行う必要がある.早産期に考慮すべき胎児の生理学的特徴とは 一般的に早産児は正期産児に比べ,①薬物結合に利用できる蛋白質が少ないため,蛋白質-薬物親和性が低下する,②ビリルビンの濃度が高いため,蛋白質結合において薬物と競合する可能性がある,③血液-脳関門が不完全なため,中枢神経系への薬物の到達率が高い,④薬物の代謝および排泄能力が低い,⑤分娩時などに代謝性アシドーシスの発生率が高く局所麻酔薬のイオントラッピング現象が生じやすい,などといった特徴をもつ 1)2).胎児の薬物代謝酵素シトクロムP450は,妊娠14週頃にはすでに存在しているため,局所麻酔薬の抑制作用にも耐用能があるとする報告もあるが,原則としては,①~⑤の生理学的特徴に配慮した麻酔管理が求められる 3)4).66早産―麻酔科医の立場から産科的合併症の麻酔管理第9章66Key point早産期の分娩は予定外の緊急でありHDPや前置胎盤など産科的合併症があることが多く,また児の未熟性から分娩経過中に突如,NRFSとなることも多い.早産期の鎮痛および麻酔では,母体の循環動態の変動や酸塩基平衡の維持に努める必要がある.分娩直前まで切迫早産治療薬を使用している場合があり,その薬理作用にも配慮した麻酔管理が求められる.Key point274274
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