2731消化器外科SSI予防のための周術期管理ガイドライン 2025
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29BQ2-2が高い傾向にあった.また,消化器外科領域以外の研究10報 5-8, 10, 12, 19, 22-24)ならびに全研究14報の統合解析では,術前の鼻腔MRSA保菌者では全SSI発生率が有意に上昇した.したがって,術前の鼻腔MRSA保菌は消化器外科領域を含む多くの手術領域において等しくSSI発生のリスク因子となると判断し,本BQの結論を導いた.術前の鼻腔MRSA保菌者と非保菌者におけるSSI発生率の比較について,エビデンス総体を表BQ2-2-1に示す.まず,MRSAを原因とするSSI発生率に対して,解析に用いた報告は全14報,総症例数は鼻腔MRSA保菌群が1,582例,非保菌群が26,559例であった.このうち,消化器外科手術患者を含む研究5報 14, 15, 17, 18, 20)において,術前の鼻腔MRSA保菌者と非保菌者のMRSAを原因とするSSI発生率を比較した結果,オッズ比(OR):11.81〔95%信頼区間(CI):9.00-15.48,I2 = 0%,p <0.001〕となり鼻腔MRSA保菌群のSSI発生率は有意に上昇した(図BQ2-2-1).また,消化器外科領域以外を対象とした研究9報 5, 6, 9, 10, 12, 13, 19, 21, 23)について同様に比較検討した結果,OR:16.91(95%CI:8.95-31.93,I2 = 0%,p <0.001)となり有意差を認めた(図BQ2-2-1).全研究をまとめた14報での統合解析においても,OR:12.48(95%CI:9.72-16.01,I2 = 0%,p <0.001)となり有意差を認めた.本結果について解析対象はすべて観察研究(OBS)であるが,いずれのORも数値は非常に高く,I2は0%と研究結果の一貫性が認められ,症例数は十分に集積された.したがって,消化器外科手術領域ならびに消化器外科以外の手術領域において,術前の鼻腔MRSA保菌はMRSAを原因とするSSI発生に大きな影響を与えうると判断した.次に,MRSA以外の原因微生物も含めた全SSI発生率に対して,解析に用いた報告は全14報,総症例数は鼻腔MRSA保菌群が558例,非保菌群が13,730例であった.このうち,消化器外科手術患者を含む研究4報 11, 15, 16, 18)において,術前の鼻腔MRSA保菌者と非保菌者の全SSI発生率を比較した結果,OR:1.81(95%CI:0.98-3.35,I2 = 19%,p = 0.06)と有意差は認めないものの,鼻腔MRSA保菌群で全SSI発生率は高い傾向にあった(図BQ2-2-2別添).一方,消化器外科領域以外を対象とした研究10報 5-8, 10, 12, 19, 22-24)について同様に比較検討した結果,OR:4.38(95%CI:2.42-7.92,I2 = 0%,p <0.001)となり有意差を認めた(図BQ2-2-2別添).全研究をまとめた14報での統合解析においても,OR:2.72(95%CI:1.78-4.16,I2 = 8%,p <0.001)となり鼻腔MRSA保菌群の全SSI発生率は有意に上昇した.エビデンスのまとめ鼻腔MRSA保菌の有無によるSSI発生率のエビデンス総体表BQ2-2-1アウトカム研究デザイン /研究数バイアスリスク*非一貫性*不精確性*非直接性*その他 (出版バイアスなど)*上昇要因(観察研究)*リスク人数(アウトカム率)効果指標(種類)効果指標統合値95%信頼区間エビデンスの確実性 **重要性***コメント対照群分母対照群分子(%)介入群分母介入群分子(%)MRSAを原因とするSSI発生率(対象:消化器外科手術含む研究)OBS/5-1-1-1-20+219,0191230.6%1,3511168.6%OR11.819.00-15.48低8MRSAを原因とするSSI発生率(対象:消化器外科手術以外の研究)OBS/9-1-10-20+27,540370.5%231177.4%OR16.918.95-31.93低8全SSI発生率(対象:消化器外科手術含む研究)OBS/4-1-1-1-2006,7461582.3%405174.2%OR1.810.98-3.35低8全SSI発生率(対象:消化器外科手術以外の研究)OBS/10-1-10-20+16,9841772.5%1531610.5%OR4.382.42-7.92低8SSIとサーベイランス、サルコペニア、フレイル第 2章

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