本CQのアウトカムとして,診断率の向上,治療方針の決定,病態の把握,有害事象,口腔乾燥症状との相関が挙げられていたが,この推奨を作成するにあたり,特にシェーグレン症候群(Sjögrenʼs syndrome:SS)の診断率向上を重視し,ガムテスト,サクソンテスト,安静時唾液分泌量,口唇腺(labial salivary gland:LSG)生検,耳下腺生検に関する19本の観察研究を対象としたシステマティックレビュー(SR)を実施した. その結果,ガムテスト,サクソンテスト,安静時唾液分泌量,口唇腺生検,耳下腺生検はいずれもSSの診断率の向上に寄与するものと考えられた.特に,治療方針の決定において,口唇腺生検は唾液腺組織の採取率が良好であり,SSの病理組織診断に加え,SSの腺外病変や非ホジキンリンパ腫(nonHodgkin lymphoma:NHL)発症の予測因子にもなりえるため有用と考えられた.一方で,口唇腺生検陰性例では,SSの診断に耳下腺生検が有用である可能性が示された.また,大唾液腺の腫瘤,またはびまん性腫大を伴うSSに対するエコーガイド下大唾液腺コアニードル生検は,悪性リンパ腫の診断を含めて有用な結果が得られ,安全性も高く手術的生検を避けることができる可能性がある.加えて,検査に伴う有害事象は,口唇腺生検と耳下腺生検で同等であり,比較的安全と考えられた.ガムテストに関しては,実施時に学習効果を考慮する必要がある. 以上より,SSの診断や治療方針の決定に有用な口腔検査としては,ガムテスト,サクソンテスト,安静時唾液分泌量,口唇腺生検,耳下腺生検が有効な方法と判断した.これらの検査は,厚生労働省の診断基準(1999年)およびアメリカ・ヨーロッパ合同班の基準(2012年)にも採用され,広く認知されている.いずれの検査も保険適用されており,患者の経費増額などの負担はないと考えられる. 19本の観察研究(コホート研究11本1~11),症例対照研究1本12),横断研究6本13~18),症例集積研究1本19))を対象にSRを行った.メタアナリシスの対象となる研究はなかった. ガムテストに関して,3本の研究14,15,18)で,SS診断の感度83.3~86.7%,特異度79.4~86.8%,安静20推奨提示推奨作成の経過SRレポートのまとめ推奨文• SSの診断,治療方針の決定に有用な口腔検査としては,唾液分泌量測定(ガムテスト,サクソンテスト,吐唾法)と唾液腺生検(口唇腺生検,耳下腺部分生検)を推奨する.推奨の強さ強い:「実施する」ことを推奨するエビデンスの強さD(非常に弱い)費用対効果の観点からの留意事項評価未実施診断,治療方針の決定に有用な口腔検査は何かCQ1
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