(中村英樹)23 口唇生検は,1999年旧厚生省診断基準においても2016年米国リウマチ学会/欧州リウマチ学会分類基準においても採用されている.しかし,下口唇に局所麻酔を施行し小唾液腺採取を行う侵襲を伴う手技であるため,わが国で行った二次サーベイ1)では施行率40%に留まっている.唾液腺エコーなどの画像診断が,わが国の診断基準に採用されていないことを考えると,口唇生検による病理学的な評価の重要性は高いと考えられる. 特に口腔検査,眼科検査,抗Ro/SS—A, La/SS—B抗体のうち一項目のみ陽性の場合は,確定診断のために必要となるため,局所麻酔アレルギーなどがなければ施行することを推奨する.注意すべきは4 mm2あたり1 focus(50個以上のリンパ球浸潤)以上であることが診断の条件となっており,1977年の厚生省研究班による診断基準にあった「小葉内」あたりではない点である.これは欧米のChisholmとMasonらが導管周囲に4 mm2あたり1 focusのリンパ球浸潤があるものをgrade 3とした報告2)を1999年基準にも採用した結果と考えられる. 口唇生検における二次濾胞構造の出現は,高疾患活動性,低補体,クリオグロブリン血症と並んで悪性リンパ腫のリスク因子となる可能性も想定されている3). また,唾液腺におけるリンパ上皮性病変(lymphoepithelial lesion:LEL)がmucosa—associated lymphoid tissue(MALT)リンパ腫の母地となるうるため,口唇生検を行う意義があると考える.このため,疾患活動性の高い患者や低補体を有する例ではリンパ腫リスクが高いと考えて,LELや異所性二次濾胞の出現を確認するうえでも可能な限り口唇生検を施行することが望ましい.1) Tsuboi H, Asashima H, Takai C, et al.:Primary and secondary surveys on epidemiology of Sjögren’s syndrome in Japan. Mod Rheumatol 2014;24:464‒470.2) Chisholm DM, Mason DK:Labial salivary gland biopsy in Sjögren’s disease. J Clin Pathol 1968;21:656‒660.3) Theander E, Vasaitis L, Baecklund E, et al.:Lymphoid organisation in labial salivary gland biopsies is a possible pre-dictor for the development of malignant lymphoma in primary Sjögren’s syndrome. Ann Rheum Dis 2011;70:1363‒1368.文 献コラム1口唇生検をどういうときにすべきか
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