2732シェーグレン症候群診療ガイドライン2025年版
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 シェーグレン症候群(Sjögren’s syndrome:SS)の腺病変の評価として,唾液腺エコー検査は非侵襲的な検査であることから,その実施に関する報告は増えており,有用性を評価することは重要な臨床課題である.唾液腺エコー検査は国際的な診断・分類基準には含まれていないが,本CQの推奨作成にあたっては診断能,重症度評価の有用性を重要視した. 本CQのアウトカムとして,SSの診断,SSの重症度,SSの治療反応性が挙げられ,システマティックレビュー(SR)が行われた. SRでは,2017年版ガイドラインで採用された論文に17本の論文を追加し,計22本(14本の観察研究と2本のRCT,2本の定性的SR,4本のメタアナリシス)を対象とした. SRの結果,診断能については,4本のメタアナリシスを含む14本の研究で,報告によって幅はあるが感度:67~100%,特異度:71~95.5%と報告されていた.重症度分類については,さまざまなスコアリングシステムが使用されていたが,唾液分泌量との相関も報告されていた.また,SSの全身的な疾患活動性指標(ESSDAI,ESSPRI)との関連も示されていた. SSの治療反応性については,1つの症例対照研究において治療効果(唾液分泌増加量)を評価するのに有用と報告されていたが,有意水準には達しておらず,2つのRCTにおいて生物学的製剤の治療反応性を評価されていたが,臨床試験薬といった新薬に対する治験の効果であり,判定困難と考えられた. 総合すると,唾液腺エコー検査はSSの腺病変の診断や重症度の評価に有用と考えられた. 論文数は増えているが,観察研究およびそのメタ解析が多く,RCTは治験薬の評価が主アウトカムであり,唾液腺エコー検査の評価がアウトカムではなかったため,エビデンスの総括はエビデンスの強さC(弱)であった. 益と害のバランスに関しては,上記のエビデンスレベルではあるが,一定の診断能や重症度との関連が報告されており,有害事象や患者の負担は少ないと判断された. 唾液腺エコー検査は診断や重症度の評価に有用性を示す報告が増えており,実地診療でも評価の機会が増えている.検査実施の侵襲性はなく,検査費用からも汎用性が期待されると考えられた. 以上より,推奨としては,唾液腺エコー検査は,腺病変の診断と重症度の評価に有用な検査として54推奨提示推奨作成の経過推奨の強さ弱い:「実施する」ことを提案するエビデンスの強さC(弱)費用対効果の観点からの留意事項評価未実施推奨文• 唾液腺エコー検査は,腺病変の診断と重症度の評価に有用な検査として実施することを提案する.唾液腺エコー検査は診断,重症度,治療反応性評価にどれだけ寄与するかCQ13

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