近年,診療ガイドラインに限らず,患者・市民グループの意見をガイドラインや書籍の内容に反映させることが国際的な流れとなっている.日本医療研究開発機構(Japan Agency for Medical Research and Development:AMED)の患者・市民参画(Patient and Public Involvement)ガイドブック1)においても,2000年代に入り患者参画の取り組みが強化され,欧州医薬品庁(European Medicines Agency:EMA)や米国食品医薬品局(Unites States Food and Drug Administration:FDA)と患者・市民連携による情報交換が進んでいることが記載されている. これらの現状を踏まえ,本書においても,「日本シェーグレン白書2020」 2)をベースとして,その内容を取り上げ,本ガイドラインの重要課題として提案することを目的とした. 実態調査方法は,2019年11月に日本シェーグレン患者会の会員に対して510部のアンケート送付を行い,276部(54%)の回収を得た.そのうえで,主治医への希望・医療満足度,治療薬・治験,発症時期,日常・学生生活・職業への影響,医師・社会への要望等についてアンケート結果をまとめた.さらに,SS診断前の状況についても調査を行った.最後に自由記載欄を設け275の声が寄せられた. アンケートは全国へ送付したが,会員数0人の8県から会員数72人の東京都と,関東地区に多い傾向があった.アンケートを回収ができた276部(54%)のうち,SSの診断が得られている回答者は262人(96.7%)であり,220人(81.8%)が医療機関でSSの治療を受けていた. 通院のみが242人(90.0%)であり,診断に際して施行した検査では,血液検査,シルマーテスト,ガムテストが多いのに対して,唾液腺造影,涙腺生検,唾液腺エコー施行率が低かった.通院について,1~3時間通院にかかる患者が83人(31.4%)みられ,1回の診察時間は3~10分が164人(62.3%)であったが3分未満が37人(14.1%)であった.主治医に自分の病気を質問できない患者が40人(15.0%)いて,質問すると主治医が怒るという意見も8人みられた(図1).現在受けている医療に満足と答えた患者は105人(39.6%)(図2)と少なく,主治医へは他科医師との連携やシェーグレンのことをもっと理解してほしい(N=64)という意見があった.問題点として,①腺・腺外症状に対して有効な免疫抑制療法がない,あるいは②選択肢が少ないことによる医師側の無理解や諦念感に基づく患者との関係性の悪化が挙げられた.126 1—1 調査の目的と方法 1—2 回答者の基本情報 1—3 診療内容や治療薬選択についてシェーグレン白書2020による患者の実態と声1
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