xiii1.薬剤の選択病歴,発作症状と脳波のてんかん性発作波の形から,発作型とてんかん症候群を診断.発作型とてんかん症候群に適する薬を選択.有効性と副作用をあわせて使用順位を決定.発作型が複数の場合,多い発作,生活に最も支障がある発作,危険な発作をねらうが,困難なら抑制しやすい発作をねらう.2.薬剤の使い方発作がいつ起こるか,いつ多いかを確認.薬剤の選択にこれを加味する.発作の好発時間に血中濃度が高くなるように,各 ASM の開始量,半減期,ピーク時間をもとに投与量,分服回数,薬の配分(均等とは限らず 1 日のなかでいつ多くするか・不均等処方も)を決める.新生児期を除けば,年齢が若いほどある血中濃度を得るのに要する投与量(mg/kg)は多く,半減期とピーク時間は短く,思春期以降は成人とほぼ同様になることに注意.選択した薬を開始量または維持量の少量で開始し,少量,中等量,多量と 3~4 段階くらいで漸増する(▶▶第 3 章 表 3-2,表 3-3).半減期が短い薬は 1 週間ごとでもよいが,長い薬は 2 週間ごとに増量する.多量でも発作が抑制されない場合は,副作用が出ていなければ,参照域の血中濃度の上限(▶▶第 3 章 表 3-2)を超えて増量してもよい.十分な血中濃度でも発作を抑制できなければ,他の薬に変更.3.難治てんかん適切と思われる薬剤の選択と使い方を繰り返しても発作抑制が困難なら,単剤→ 2 剤→ 3 剤と多剤併用療法.発作型だけでなく,相互作用や作用機序を考慮した合理的多剤併用を行う(▶▶第 7 章).複数の発作型をもつ難治てんかんではそれぞれの発作型に対する薬を組み合わせるが,ASM の相互作用に注意し,作用機序の異なる薬を組み合わせる(合理的多剤併用療法,▶▶第 5 章,第 6 章).薬物療法で難治なら外科治療を考慮し,外科適応評価を行う.頭部 MRI で器質的病変(特に FCD など)があれば,早期に外科適応評価.4.家族への説明薬をきちんと飲んでもらい,みせかけの難治(偽性薬剤抵抗性)やドクターショッピングを防ぎ,十分な治療を行うためには重要.発作型診断,てんかん症候群診断,治療方針,よく起こるあるいは重大な副作用,予後(発作予後,発達予後)の見通し,日�生活・学校生活上の注意,断薬のめやすと再発の危険率などを可能な範囲で説明するのが望ましい. 1) Saito Y, et al.:Periodic cycles of seizure clustering and suppression in children with epilepsy strongly suggest focal cortical dysplasia. Dev Med Child Neurol 2023;65:431-436. 2) Fitzgerald MP, et al.:Treatment responsiveness in KCNT1-related epilepsy. Neurotherapeutics 2019;16:848-857. 3) Kwan P, et al.:Definition of drug resistant epilepsy: consensus proposal by the ad hoc Task Force of the ILAE Commission on Therapeutic Strategies. Epilepsia 2010;51:1069-1077. Erratum in: Epilepsia. 2010;51:1922. 4) Berg AT, et al.:Remission of epilepsy after two drug failures in children: a prospective study. Ann Neurol 2009;65:510-519.チャート 2 MRI で局在病変がないてんかんの薬物治療の具体的手順チャート 1 の文献
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