2 1 てんかんの治療方針 2 てんかんの薬物治療の基本的手順 3 薬物治療と実際の手順(▶▶チャート 3)▲ てんかんの薬物治療は,その発作に最も適合する薬を,発作が起こりやすい時間に最も高濃度にな▲ そのためには,どんな発作症状か,いつ起こるかが最も重要である.▲ 発作型とてんかん症候群に基づいて薬を選択するが,複数の発作型を示す症候群では発作型に基づ▲ 投与量,治療域の血中濃度,半減期,ピーク時間,相互作用,年齢による変化などの抗てんかん発▲ すでに治療されているてんかんでは,過去の薬の見直し(発作に対して妥当か,十分量を使用したるように使用することである.く薬剤選択となる.発作型が全般性か焦点性かにより,薬剤を選択する.作薬の薬理動態に基づいて,発作の好発時間に薬が高濃度になるようにする.か)も重要である.てんかんの原因は不明であることも多いが,脳形成異常,遺伝子異常,低酸素脳症,脳炎・脳症,その他の中枢神経感染症,腫瘍,代謝異常,免疫関連(自己免疫),外傷,脳血管障害などがある.てんかんの治療は原因によっても異なり,▶▶チャート 1 の手順で対応する.初発,紹介にかかわらず,はじめて治療する場合は▶▶チャート 2 の手順としている.てんかんの薬物治療は,そのてんかんの発作に最も適合する薬を発作が起こりやすい時間に最も高濃度になるように使用することであり,そのためにはどんな発作症状がいつ起こるかが最も重要な情報である.まとめを表 1-1 に示す.1. 治療結果からみたてんかん・てんかん症候群の分類薬物治療による発作予後という点からみれば,国際てんかん分類(国際抗てんかん連盟〈International League Against Epikepsy:ILAE〉2022 年1),EpilepsyDiagnosis.org 2024 年2))は,焦点性や全般性にかかわりなく以下の 4 群に大別される.したがって,治療にとっては発作症状とてんかん症候群の診断が第一歩であり,かつ最も重要である.詳細は第 2 章 1 で述べる.2.薬剤選択の基本①病歴,発作症状,脳波のてんかん性発作波の部位・形から発作型とてんかん症候群を診断②旧来の特発性てんかん,発達性てんかん性脳症,中間群てんかん性脳症では,てんかん症候群に基づく薬剤選択.ただし,複数の発作型を示す症候群では,そのうえで発作型に基づく薬剤選択③潜因性・症候性焦点性てんかん,症候性全般てんかんでは,発作症状に基づく薬剤選択④難治てんかんでは,発作症状に基づく薬剤選択に,相互作用と作用機序を加えた合理的多剤併用⑤基本は単剤療法だが,3 剤までで,それ以降は多剤併用を考慮する.ある薬が効かない場合,他の薬による単剤治療と併用療法では発作消失率は変わらず,統計的な有意差はないものの併用療法の方が副作用は少なく3),新P O I N T第1 章てんかんの薬物治療の考え方
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