第1章てんかんの薬物治療の考え方る3 T1/2,Tmax,年齢による薬物動態の変化(思春1.発作症状,好発時間を確認,すでに治療中であれば血中濃度も確認2.薬の選択:その発作症状に妥当な薬か ・妥当でない→中止,妥当な薬に変更 ・妥当だが効いていない薬 血中濃度が推奨域より低いか中程度→濃度上限まで増量 血中濃度が高い→妥当な薬の中で変更(なるべく作用機序の異なる薬)3.薬の使い方:発作の好発時間に血中濃度が高くなるように配分,十分量まで使用 ・ ピーク時間(Tmax)と半減期(T1/2),眠気の有無を考慮して薬剤と投与時間を選択 ・ 均等分 2,分 3 である必要はない→発作が多い時間に分 2(1,2),分 1(夜)など不均等処方 ・日中はなるべく眠くならないように4.薬剤変更:変更しようとする薬の効果の有無,量,血中濃度による ① 効いていそう:新薬を追加・増量し,発作が 1/2 以下となったら被変更薬の減量・中止を開始,以後,追加・増量と減量・中止を同時に並行 ②効いていなさそう:追加・増量と減量・中止を同時に並行 ③ 投与量が開始量の 1/2 以下か血中濃度が推奨域下限の 1/2 以下:はじめから中止し,追加・増量5. 減量・増量の間隔と幅:多くは 2 週間ごと,T1/2 が短い薬は 1 週間ごとでも可.さらに 1~2 週間待ってもよい ・増量幅:4 段階くらい, 減量幅:1/3~1/4 ずつ6. 相互作用に注意と活用:目的とする薬の血中濃度を上げるために血中濃度を上げる薬を増量・追加,下げる薬を減量・中止7.作用機序の考慮:その症状に対し有効と思われる薬のなかで作用機序が異なる薬に変更用を考慮する.b.発作の好発時間に血中濃度を高くするために期以降は成人とほぼ同様)を考慮する.これまでは T1/2 と Tmax はあまり重要視されてこなかったが,発作が起こりやすい時間に高濃度にするためには重要である.c.薬剤選択のために多剤併用時は,作用機序が異なる薬を組み合わせ,相互作用で血中濃度を下げる薬を避け,合 理 的 多 剤 併 用 を 念 頭 に お く(▶▶ 第 7 章「II 合理的多剤併用療法」).4. 治療がうまくいかない場合はどうしたらよいか ― 原因と対応(▶▶チャート 4)その発作症状・てんかん症候群に対し,薬剤選択,投与量,服用時間と配分,アドヒアランスは適切かを検討する.詳しくは,第 7 章で述べる.表 1-1 てんかんの薬物治療のまとめ規の抗てんかん発作薬(antiseizure medication:ASM)により併用療法の方が発作消失率は向上している4)という報告もある⑥発達性てんかん性脳症では遺伝子検査を行い,precision medicine(精密医療)を検討す3.薬物動態の活用発作の好発時間に最も高濃度にするためには,ASM の臨床薬物動態(▶▶表 4-1)に基づいた薬剤使用が有用で,以下を考慮する.ここでは原則を述べるにとどめ,具体的には,第 4章「Ⅰ 抗てんかん発作薬の処方に必要な薬理項目とその意義」を参照していただきたい.投与量,治療域の血中濃度,半減期(T1/2),ピーク時間(Tmax),相互作用,作用機序,年齢による薬物動態の変化,副作用a.安全かつ十分な治療のために投与量(開始量,維持量,増量速度,減量速度),治療域の血中濃度(有効血中濃度),副作
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