2733実践 小児てんかんの薬物治療 改訂第2版
6/10

第10章てんかん症てててててててて  87 1 自然終息性てんかん症候群▲ ILAE のてんかん症候群分類 2022 に示されているてんかん症候群を解説し,理解しやすいように,▲ 新生児期・乳児期,小児期,様々な年齢で発症,特発性全般てんかんの 4 つに分けられているが,▲ 治療に関してはこのてんかん症候群分類では全く示されてはいないので,文献と経験に基づく著者治療を含めてなるべく具体的な症例を提示した.おおむね初発年齢順に提示した.の意見を入れた.2022 年に ILAE は新しいてんかん症候群分類を発表した(表 10-1)1).発症年齢と予後(発作予後,発達予後)という点からは,図 10-1のようにまとめられると筆者は考えている.これを主に発症年齢順に解説し,理解しやすくするために症例も示す.脳波は,すべてその症候群の自験例のものである.疾患の解説で,脳波は日常診療の実際に鑑みて発作間欠時の所見にとどめ,発作時脳波には触れていない.また治療に関しては,この分類では全く示されていないので,文献と経験に基づく筆者の意見である.なお,症候群名は旧来の名称も[ ]で記載した.1. 自然終息性(家族性)新生児てんかん[自然終息性新生児けいれん,自然終息性家族性新生児てんかん]a.概念家族歴の有無によらず,家族性も非家族性も同様の発作症状と脳波所見,遺伝学的病因を示し,生後 2~7 日に初発する.発作は生後 6 か月までに寛解するが,大部分は生後 6 週までに消失する.抗てんかん発作薬(ASM)は数週間で中止できることが多い.発達は正常だが,少数例で学習障害や軽度の運動障害を伴うことがある.生後 1 か月以降に発症する場合は除外される.b.発作発作開始時の焦点性強直が特徴で,頭部,顔面,四肢にみられる.これ以外の発作で始まる場合は,本症は除外される.ひとつの発作内あるいは発作ごとに左右が変わることが多く,また両側強直発作や両側間代発作に移行することがある(旧来の二次性全般化).無呼吸やチアノーゼが発作の 1/3 でみられる.発作は群発し,数時間から数日にわたることもあるが,自然に終息し,発作と発作の間の行動や神経学所見は正常である.1/3 は,後年,熱性けいれんや種々のけいれんを示す.c.脳波背景波は正常または軽度の非特異的異常がみられ,発作間欠期には 2/3 に焦点性てんかん性発作波が主に中心部,中心側頭部,前頭側頭部にみられる.発作頻発時には,焦点性あるいは広汎性徐波がみられることがある.d.頭部画像けいれんの原因となる異常はない.e.遺伝家 族 性 は 常 染 色 体 顕 性 遺 伝( 浸 透 率 85%)で,家族内でてんかんの持続期間が異なる場合があるが,90% 以上で病的遺伝子変異が認めらP O I N T第10 章てんかん症候群(ILAE) I 新生児期,幼児期 2)

元のページ  ../index.html#6

このブックを見る