に起こる.けいれんは生後 3~20 か月(ピークは 6 か月)で発症し,発作はしばしば初期には頻発して難治なこともあるが,通常は発症から1 年以内に自然終息する.後年まで発作が残る例が少数ある.後の発達は正常である.家族性と非家族性は,家族歴の有無以外は同じである.家族性の場合は,常染色体顕性遺伝である.b.発作発作は動作停止,チアノーゼ,意識減損を伴う凝視,自動症,頭部向反や眼球偏位,間代を伴う焦点発作で始まり,両側強直間代けいれんとなるが,左右が一定でない間代けいれん,筋緊張亢進を伴わない意識減損発作もある.50%は発作が群発する.1/3 は発作抑制後,1~3 か月で再発する.c.脳波発作間欠期には発作波はない(発作時は焦点性発作波あり).後年には発作波が出てくることもある.d.遺伝家族性は常染色体顕性遺伝で,浸透率は不完全だが高い.家族性では遺伝子変異は 80% で認 め ら れ,PRRT2(>90%),SCN2A, SCN8A の変異が認められる.PRRT2 変異では後に発作性運動誘発性ジスキネジアを示す例がある.e.鑑別自然終息性家族性新生児乳児てんかん,仮死・脳血管障害・感染・代謝異常・電解質異常などによる急性症候性けいれん,皮質形成異常や脳損傷などの構造異常,遊走性焦点発作を伴う乳児てんかん,Drave 症候群.f.治療診断できれば無治療.群発するなら,CBZ 5 mg/kg 分 1(夕食後).生後 10 か月(第 12 章で掲載する良性乳児けいれんと同じ症例〈p.156〉)症例主訴 チアノーゼ,眼球上転を伴う全般性強直90間代けいれん(GTCS).家族歴・胎生期・周生期・発達歴・既往歴 特記すべきことなし.現 病 歴 生 後 10 か 月: 朝, 保 育 園 で 急 にGTCS, チ ア ノ ー ゼ,1 分. 発 作 後 入 眠 30分.熱はなかった.夜,同様の発作.2 日後の深夜,授乳中に同様の発作 1 分.現症 一般身体所見,神経学的所見,発達は異常なし.検査 発作間欠時睡眠脳波:発作波なし,背景活動異常なし,spindle の出現良好.経 過 無 治 療 で 観 察.1 歳 1 か 月, 保 育 園 で遊んでいて同様の発作.発熱,下痢なし.脳波は睡眠時に疑わしい棘波が F3 に 2 回.発達は正常で,現症も異常なし. 無治療で経過観察とし,次に発作があればASM 開始としたが,以後発作はなく,発達も正常.解説 発達が正常な乳児に誘因なく GTCS が起こり,短期間に繰り返しているが,脳波でてんかん性発作波がない場合に本症を疑う.基 本 は 無 治 療 だ が, 繰 り 返 す 場 合 は CBZ 5 mg/kg 分 1(夕食後)を開始する.4. 素因性てんかん熱性けいれんプラス(GEFS+)スペクトラム[熱性けいれんプラスを伴う素因性てんかん〈GEFS+〉]a.概念「熱性けいれんプラス」とは熱性けいれんを伴うという意味ではなく,熱性けいれんが終息する年齢(6 歳)を超えて熱性けいれんが起こるか,無熱性けいれんを伴う典型的ではない熱性けいれんという意味である.熱性けいれんを生後 6 か月以前から発症し,6 歳以降も起こるが,典型的には自然終息性で,思春期には消失す る.GEFS+ で は 通 常 の 熱 性 け い れ ん が 多く,次いで熱性けいれんプラスが多いが,家族内のてんかん発症者全員が熱性けいれんを示すとは限らない.また,種々の全般発作や焦点性
元のページ ../index.html#9