第1章思春期月経周期異常を診断するうえでとても有用な情報・データが記載されているため,ぜひ確認をしていただきたい.a.問診 まずは,どのような月経周期異常があるかを詳細に問診することが重要である.その際,AUB system 1 を用いると有用である.また,月経周期異常をきたすような背景の有無を調べることが重要である.急激な体重減少や体重増加は,月経周期異常を引き起こすため,身長や体重の変化についても確認する.さらに,合併症・既往歴(手術や抗腫瘍薬治療歴など含む)の有無,家族歴,内服薬の有無,生活環境の大きな変化の有無,学校などの活動歴(スポーツ歴)など,月経周期異常に影響を与える因子がないかを問診で確認する.また,まれではあるが,妊娠による無月経も可能性としては考えられるため,可能な範囲で性交歴なども問診するとよいだろう.その際,細心の注意を払うことはいうまでもない.b.診察 思春期の女性のため,一般的な婦人科診察は困難なことが多い.そのため,可能な範囲で経腹超音波や,場合によっては MRI などの画像検査を行い,器質的な異常の有無を確認する. また,PCOS の思春期条項では,アンドロゲン過剰症も含まれている.そのため,多毛や今回の診断基準には含まれていないが痤瘡などのアンドロゲン過剰症を疑う所見がないかの確認も重要である.また,モザイク型のTurner 症候群などは,続発性無月経をきたすことがあるため,Turner 症候群特有の身体所見の有無にも注意をする必要がある. ホルモン値を測定することは,病態の理解に役立つため,可能な範囲でホルモン採血を行う.測定項目は,エストラジオール,ゴナドトロピン〔黄体形成ホルモン(LH)と卵胞刺激ホルモン(FSH)〕をはじめ,プロゲステロン(P4),テストステロン(アンドロゲン),甲状腺刺激ホルモン(TSH),free T4(FT4),プロラクチン(PRL)などが,月経周期異常に影響を及ぼ21無月経・希発月経の病態・診断・治療:総論1)問診と診察2)エストラジオールとゴナドトロピンに着目すると
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