第2章性成熟期(周産期含む) 月経困難症は骨盤に病変がない原発性月経困難症(機能性月経困難症)と,病変がある続発性月経困難症(器質性月経困難症)に分類されるが,病歴と診察だけで両者を区別することは必ずしも容易ではない.機能性月経症は除外診断が必要であり,クラミジア感染症を含めた感染症が鑑別としてあがる. 排卵周期が確立されると,初経後 6~12 か月に起こることが多い.原発性月経困難症による疼痛は通常下腹部に起こり,けいれん性,周期性で,背部および内腿に放散することがある.月経開始時に起こるか,月経に数時間だけ先行し,典型的には 8~72 時間持続する.痛みは,嘔吐,悪心,下痢,疲労,頭痛などの全身症状を伴うことがある.また,痛みに対する感受性が亢進することもある.検査では,骨盤内の器質的疾患を明らかにすることができない. しばしば初経の数年後に起こる.同定可能な骨盤疾患がある場合,30~40歳代で新たな症状として出現することもある.また,症状は月経が進むにつれて悪化することもある.続発性月経困難症の一般的な原因は,子宮内膜症,子宮腺筋症,子宮筋腫および子宮内ポリープなどである. プロスタグランジン合成酵素であるシクロオキシゲナーゼ(COX)経路を抑えることが重要である.このため,同疾患の治療として,非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)が頻用される.NASID の使用困難症例には,アセトアミノフェンが代替薬として使用される. ホルモン製剤としては,エストロジェンが子宮内膜の COX2 の誘導に作用し,プロゲステロン作用が COX2 を低下させることから,相対的,ないし絶対的にエストロジェン作用を減弱させるために低用量エストロジェン・プロゲスチン(LEP)配合薬,プロゲスチン製剤,GnRH 製剤が用いられる. LEP 配合薬やプロゲスチン製剤による相対的エストロジェン低下作用は診察・検査・鑑別1)原発性月経困難症(機能性月経困難症)2)続発性月経困難症(器質性月経困難症)治療・予後・対応109月経にまつわるもの 月経困難症
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