2739性感染症診断・治療ガイドライン2026
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第2部疾患別診断と治療下記の 1 または 2 を満たすものを活動性梅毒と診断する.1.症状がある症例のうち,以下のいずれかを満たすもの ①梅毒トレポネーマ PCR 陽性のもの*1 ② 梅毒トレポネーマ抗体・非トレポネーマ脂質抗体*2のいずれかが陽性であって*3,病歴(感染機会・梅毒治療歴など)や梅毒トレポネーマ抗体・非トレポネーマ脂質抗体の値の推移から,活動性と判断されるもの*42. 症状がない症例のうち,梅毒トレポネーマ抗体陽性で,病歴や梅毒トレポネーマ抗体・非トレポネーマ脂質抗体の値の推移から*3,潜伏梅毒と判断されるもの*1:梅毒トレポネーマ PCR 検査の種々の制約で事実上,この基準を満たすケースは少ない.*2:RPR と称する検査が多い.*3:梅毒トレポネーマ抗体と非トレポネーマ脂質抗体は同時測定を原則とする.*4: 梅毒トレポネーマ抗体・非トレポネーマ脂質抗体のいずれかが陽性であっても,病歴や両抗体値の推移から活動性がないと判断される場合は,陳旧性梅毒に分類する.〔日本性感染症学会(編):性感染症 診断・治療ガイドライン 2020 梅毒の項改訂版.https://jssti.jp/pdf/baidokukaikou_20230620.pdf(アクセス日:2025 年 10 月 7 日)より〕エビデンスレベル:Expert Opinion 推奨グレード:B65診断基準を表 4 に示す12). TP 抗体陽性を重視した診断基準となっている.診断基準を踏まえても判断に迷う事例への具体的対応を以下に示す.1. 梅毒一次病変を疑う発疹を認めるが,TP 抗体(-)・STS(-) 可能であれば,病変部滲出液の梅毒トレポネーマ PCR 検査を試みる.感染機会,梅毒治療歴をよく聴取し,梅毒の可能性が高いと医師が判断した場合は抗体の陽性化を待たずに暫定的に治療を開始してもよい. PCR 陽性が確認できた場合,活動性梅毒確定例と判断する. PCR 陰性または実施できなかった場合,治療開始の 2~4 週間後に,TP 抗体と STS の両者を再検し,一方もしくは両者が陽性化していた場合は値の多寡にかかわらず活動性梅毒と判断する. PCR 陰性または実施できず,かつ,TP 抗体と STS の両者が陰性のまま推移した場合は疑診にとどまる.2.無症状だが,TP 抗体(+)・STS(+) 感染機会,梅毒治療歴をよく聴取する. 感染のリスクが 3 か月以内にあり,過去の治療歴がなく,活動性梅毒と判断した場合は潜伏梅毒として治療を開始する.判断が困難なときは 2~4 週間後に再検査する. 感染のリスクが 3 か月以上ない場合,4 週間後に TP 抗体と STS を再検する.どちらかが有意な増加をしていた場合は活動性梅毒と判断し,潜伏梅毒として治療を開始する.どちらも増加がない場合は慎重な経過観察を行うが,治療歴がなければ活動性梅毒と判断して治療開始することもありうる. 表 4  活動性梅毒の診断基準解 説BQ01.梅 毒06 活動性梅毒の診断基準はどのようなものか?

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