2741高血圧診療ステップアップ 改訂第2版
7/8

影響が懸念され,60%以上の狭窄がある病変では,外科的内膜剝離術や頸動脈ステント留置術などの治療が検討されることがある.b 血流評価1.カラードプラ法およびパワードプラ法カラードプラ法は,血管内腔の描出に用いられ,血流の方向や速度を定性的に視覚化することができる.そのため,逆流が生じている場合や,乱流の存在は色調の変化によって把握でき,また狭窄部位においては血流速度が局所的に上昇することで色の変化が生じるため,狭窄病変の識別に役立つ.ただし,カラードプラには限界もある.血流が遅い部位や,超音波プローブに対して平行に流れている部分ではカラー表示がなされないことがあり,その結果,カラーの欠損領域を誤ってプラークと判断してしまう可能性がある.一方,パワードプラ法は血流の方向を示すことはでないものの,カラードプラでは表示が困難な低速の血流や,プローブと平行な流れも検出可能という利点がある.したがって,両者の特性を理解したうえで適切に使い分けることが,狭窄病変の正確な評価には不可欠となる.2.血流速度血流速度の測定は,内頸動脈の狭窄病変の診断において有用な情報を提供する.狭窄部を通過した直後では血流速度が増加し,収縮期最高血流速度(peak-systolic velocity:PSV)が150cm/secを超える場合,有意な狭窄の可能性が示唆される.さらに,PSVが200cm/sec以上となる場合には,70%を超える高度狭窄が疑われる図4.血流波形からは,PSVに加えて,拡張末期血流速度(end-diastolic velocity:EDV)および平均血流速度(time-averaged maximum velocity:TAMV)が測定され,これらをもとにpulsatility index(PI:〔PSV−EDV〕/TAMV)やresistive index(RI:〔PSV−EDV〕/PSV)を算出し,動脈硬化の評価にも活用されている 4).ただし,PIやRIは末梢血管抵抗の指標として有用である一方で,心機能や心拍数などの影響を受けやすい点についても十分な理解が求められる.2 心エコーa 左室肥大の評価 図5心エコー検査は,左室肥大の診断において有効な手段である.左室心筋重量の推定には複数の方法が提案されているが,ここではMモード法を用いた代表的な手法を紹介する.この方法では,拡張末期における心室中隔厚(interventricular septum:IVS)と左室後壁厚(left ventricular posterior wall thickness:PW),ならびに左室内径(left ventric-ular end-diastolic dimension:LVDd)を測定し,それらの値をもとに左室心筋重量(left ventricular mass)を算出し,さらに体表面積で補正した左室心筋重量係数(left ventricular mass index:LVMI)を求める.左室心筋重量=0.8×{1.04×[(LVDd+IVS+PW)3−(LVDd)3]}+0.6左心室は,圧負荷により求心性肥大,容量負荷により遠心性肥大を呈する.米国心エコー図学会では,LVMIに加え,相対的左室壁厚(relative wall thickness:RWT=〔IVS+PW〕/LVDd)を用いて,左室の肥大型を四つのタイプに分類することを推奨している 5).相対的左室壁厚が0.42を超え,かつLVMIが男性で115g/m2超,女性で95g/m2超であれば,求心性左室肥大と診断される.心形態の分類においては,脳性ナトリウム利尿ペプチド(BNP)値は一般に,正常構造<求心性リモデリング<遠心性肥大総頸動脈b.狭窄率a.面積狭窄率外頸動脈内頸動脈aAEbc NASCET法 = b−a/b×100 ECST法 = c−a/c×100= 100(%)E−AE図3 狭窄率の算出法NASCET:North American Symptomatic Carotid Endoarterectomy Trial,ECST:European Carotid Surgery Trial67SECTION B.特殊検査(1)―エコー・CT・MRI(心臓・腎臓・筋性動脈)

元のページ  ../index.html#7

このブックを見る