2746女性内分泌クリニカルクエスチョン100 改訂第2版
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早発思春期の診断基準と臨床的問題点経年齢が早いと最終身長が低くなるばかりでなく,成人後の心血管疾患や代謝性疾患のリスクが高くなるとの報告もある.治療による予防効果の有無は未定だが,注意は必要である. 早発思春期は性ステロイドホルモンの分泌により第 2 次性徴が標準より早く出現した状態である.表 1 に日本産科婦人科学会による診断基準と,「間脳下垂体機能障害に関する調査研究」班『中枢性思春期早発症の診断と治療の手引き(平成 30 年度改訂)』による基準を併記した1,2).数値の相違があるが,調査時期が異なるためやむを得まい. 早発思春期が臨床的に問題となる理由を表 23)に示した.早発思春期をきたす原疾患(表3)4)が潜伏している可能性があり,可能であれば原疾患そのものに対応する必要がある. 原疾患を伴わない場合でも,本人が周囲との違いを嫌がる心理的な問題や,いじめ・性犯罪などの社会的な問題が起きないよう,改善を図る必要がある. また,早期には性ステロイドホルモンの産生増加により成長ホルモン(growth hormone:GH)の夜間分泌が増加し,インスリン様成長因子 1(insulin‒like growth factor 1:IGF‒1)などの種々の介在因子を経て骨格が成長するため,周囲に比べて早く身長が伸び始めるが,やがて骨端線の閉鎖も早期にきたすため,最終身長はむしろ低めになる.最終身長の正常化表 1  早発思春期の定義乳房発育陰毛発生初経発来表 2  早発思春期の臨床的意義1.潜在する病変の発現症状である可能性があり,精査が必要2.本人に心理的,社会的問題を引き起こす可能性がある3.早期には急激な身長増加をみるが,骨年齢が促進され,骨端線も早期に閉鎖して,最終的には低身長に終わる4.将来,心血管障害,2 型糖尿病,乳癌などの発症リスクが高くなる可能性〔日本産科婦人科学会編:産科婦人科用語集・用語解説集 改訂第 5 版.201.日本産科婦人科学会,2025,厚生労働科学研究費補助金難治性疾患等政策研究事業「間脳下垂体機能障害に関する調査研究」班:間脳下垂体機能障害の診断と治療の手引き(平成 30 年度改訂).日内分泌会誌 2019;95:25­28〕〔綾部琢哉:早発思春期.産と婦 2013;80(suppl):176­181〕早発思春期(日本産科婦人科学会)7 歳未満9 歳未満10 歳未満中枢性思春期早発症(間脳下垂体機能障害の診断と治療の手引き)7 歳 6 か月未満8 歳未満10 歳 6 か月未満5Chapter 1 思春期CQ2早発思春期の治療は必要か?A 思春期発来が早くなった原因があれば,その原疾患への対応が必要である.初

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