2746女性内分泌クリニカルクエスチョン100 改訂第2版
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早発思春期と心血管疾患・代謝性疾患早発思春期の治療表 3  早発思春期の分類1.ゴナドトロピン依存性GnRH↑ LH↑ FSH↑2.ゴナドトロピン非依存性3.異性性4.部分型Chapter 1 思春期〔甲村弘子:思春期早発症.産と婦 2024;91(suppl):100­104 を参考に作成〕1)特発性2)器質性  中枢神経系腫瘍      中枢神経系の障害(炎症,外傷,水頭症,放射線照射後)      慢性的ステロイド曝露1)性ホルモン産生疾患 LH↓ FSH↓  卵巣腫瘍,副腎腫瘍  McCune­Albright 症候群2)原発性甲状腺機能低下症 LH↑ FSH↑3)医原性,外因性:食品,薬剤,化粧品 LH↓ FSH↓1)男性化卵巣腫瘍,男性化副腎腫瘍2)先天性副腎皮質過形成1)早発乳房発育2)早発陰毛発生3)早発月経6を目指すことが治療の目的の 1 つとなる. 近年,初経年齢とさまざまな疾患との関連が報告されるようになった.多囊胞性卵巣症候群(polycystic ovary syndrome:PCOS)との関連,胎内環境との関連を示唆した報告もあり,病態生理の理解も含めて注意していく必要があろう.以下に簡単に紹介する. 低出生体重児で 8 歳未満に恥毛発育を示した少女を 2 群に分け,一方の群にはメトホルミン(メトグルコ®)を 8~12 歳まで 4 年間,1 日 1 回内服投与(425 mg を 2 年間,続けて 850 mg を 2 年間)したところ,何も投与しなかった群よりも初経が遅れ,初経後の身長が高くなり,体脂肪や肝脂肪が減り,PCOS の発症率が低下したとする報告がある(図 1)5).インスリン抵抗性を示す高インスリン血症が病態に関与していると推察されている. 初経年齢と成人後の高血圧,肥満,脂質代謝異常,心血管障害,糖尿病,乳癌などの相対リスクの報告でも,初経年齢が早いほど発生率が高くなる傾向が示されている6). これらの報告からは,早発思春期と成人後の疾患との関連が示唆されるが,早発思春期の治療によりこれらの疾患を予防できるかどうかは今後の検討を待ちたい. キスペプチン(kisspeptin:KISS1)のレベルに作用する薬剤も研究されつつあるが,現在は下記対応が一般的である.治療は一般的な思春期発来年齢になるまで続けることが多い.① 中枢性・ゴナドトロピン依存性の場合は GnRH アナログが使用されるが,開始が遅れると身長に対する効果は期待できない.治療中止後は,性腺機能は速やかに本来の状態に復する.

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