Chapter3ADHDの心理社会的療法この社会モデルの考え方を医療現場に導入し,本人の特性を前提とした支援を行う実践である. ADHDのある成人は,能力や知的水準に比して日常生活・就労スキルに凸凹があり,特定の状況下で著しい困難を示すことが多い.医療者は診察室での短い観察にとどまらず,生活・職場・家庭など複数の環境での行動を把握し,どの要因が負担を増やしているかを丁寧に聴き取る必要がある.環境調整は,ADHDの治療・支援の柱であり,再発予防や社会的機能の安定に不可欠である. ADHDでは,睡眠・食事・活動のリズムの乱れが,注意のばらつきや衝動性,情動の不安定さを悪化させる.夜間の過集中やスマホの長時間使用によって就寝が遅れ,昼夜逆転を生じる例も多い.こうしたリズムの乱れは,日中の覚醒度の低下,集中困難,遅刻や欠勤の増加につながり,社会生活への影響が大きい. まずは,起床・就寝・食事・外出といった生活の基点を固定するよう助言する.とくに「起床時間を一定に保つ」ことが最も重要である.朝の起床時間を決めると,入眠時刻や食事のリズムが自然に整いやすくなる.急激に生活時間を前倒しするのではなく,段階的に早めていくやり方が現実的である. 朝は,カーテンを開けて朝の光を浴びる,決まった時間に朝食をとるなど,身体の概日リズムを整える行動を組み込む.就寝前2時間はスマホやPCなどの強い光刺激を避け,照明を落として心身を休めるよう指導する.こうした行動の具体化とルーチン化が,ADHDの人にとって実行を支える鍵となる. 概日リズム睡眠障害を併発する場合や,自己調整のみで安定化が難しい場合には,少量のメラトニン受容体作動薬(ラメルテオンなど)を併用することもある.これは,内因的なリズムを整える目的で用いるものであり,睡眠導入剤とは異なる性質をもつ.薬物療法を行う際には,同時に生活リズムの記録をつけ,行動面の調整と併用することが望ましい. 医療者は,本人の眠れない,朝起きられないという訴えを単なる怠惰として69生活環境の整え方
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