2747今日からできる!成人のADHD診療
6/8

 病院の受付の前で鞄の中の受診カードを紛失したと探していたり,実際に紛失していたりする成人のADHDをもつ患者に出会うことがある.また,予約に遅れてくることだけでなく,予約自体を忘れていたということもある.予約日に受診がなかった場合にも,後日「忘れていた」と次の予約取得のための連絡があると,ホッと安心するといった経験をすることもある.約束に遅れたり,約束自体を忘れていたり,また,必要な物をなくすといった行動はADHDの特性とも重なる.本項では,このような特性をもつ成人のADHD患者に対しては,どのように捉えたらよいのか,架空ケースを用いつつ,筆者の経験を中心にまとめたい.34歳,男性IT関連企業に勤務している.1年前に初診となったが,以降,診察日に予約時間から遅れて来院することが多い.当初は遅れるという連絡はなかったが,あるとき,受付で遅れる場合には連絡がほしいとこれまでになく強い口調で伝えられてからは,遅れる場合には連絡を入れてくれるようになっている. 今回も予約時間の30分前に受付に連絡があり,40分遅れの診察となった.入室した途端,「すみません! バスに乗ったら逆方面のバスに乗ったことに気づいて.慌てて降りたらどこにいるのかわからなくて.近所のコンビニでバス停の場所を聞いて,次に来たバスで最初の駅に戻って,そこからいつもの路線のバスに乗ってきました」.汗だくで「ゴメンナサイ」とジェスチャーをしつつ状況を説明してくれる.本人の話を傾聴しつつ,少し落ち着いたタイミングで,医師が「今日は遅刻が続いている理由を一緒に整理しましょう」と促した.遅刻の理由を問うと,「家を出る直前にたまっていた食器を洗って,それから会社からのメールを確認して,上司からのメールに返事をしていたら家を出る時間になっていて“やばい”と思って走ってバ198CASE 1年齢・性別予約時間への遅刻遅刻の経緯はじめに架空ケースまじめに取り組むからこそ,遅れてしまう男性

元のページ  ../index.html#6

このブックを見る