2757保険診療・社会保障テキスト 改訂第3版
3/8

121)社会保障とは1) 社会保障とは,傷病,障害,失業,死亡など様々なリスクから国民を守るために,社会全体で助け合い,支えようとする制度のことである.日本の場合,社会保障は社会保険料で運営される社会保険がその中心になり,加えて社会福祉,公的扶助,公衆衛生から構成されている. 社会保険には,傷病に備えた医療保険をはじめ,老後や障害を被った場合の年金保険,失業リスクに対する雇用保険,仕事上の傷病に対する労災保険,機能低下に伴う生活支援としての介護保険などが含まれる.社会保険の目的は,このようなリスクに対してあらかじめ備え,実際にリスクが発生した場合に生活困難を回避・軽減させることにある. また,社会福祉には子どもの保育や障害児者に対する福祉サービスなど,公的扶助には生活に困窮する人に対する保護と自立の助長,公衆衛生には感染症対策や予防接種等,公的に行う疾病予防や積極的な健康作りが含まれる.小児科医は日常業務において,医療だけでなく社会福祉(児童福祉や障害児福祉)や公衆衛生(予防接種,母子保健や学校保健等)を並行して担当している(図1)2).しかしそれぞれの予算が診療報酬とは別であることから,支払い方法を複雑にしている原因にもなっている.2)健康保険制度の歴史3) 日本の医療水準は世界各国で比較したとききわめて高い4)と評価されており,国民皆保険制度に代表される健康保険制度はその根幹を担っている. 日本の健康保険制度の歴史は戦前にはすでにはじまっていた富国強兵政策の一環として小規模な国民健康保険組合を設立することを奨励し,資格のある労働者を健康保険に強制加入させたことで,被保険者数は国民の約半数に到達した.しかし戦中・戦後の混乱によって多くの国民健康保険組合が存続不能な状態に陥ったこと,さらに農業従事者や,小規模な自営業者が健康保険に加入できずにいることが大きな問題となった.そこで,昭和33年に国民健康保険法が全面改正され,昭和36年から全国の市区町村で国民健康保険事業が開始された.国民健康保険法第5条は全国民に医療保険への加入を義務付けた.これが国民皆保険制度であり,所得の少ない世帯であっても継続的に保険に加入し,必要な給付を安定的に受けることが可能となった. 医療保険はその所属によって職域保険(被用者保険,通称:社保),地域保険(国民健康総論Ⅰわが国の社会保障と健康保険制度

元のページ  ../index.html#3

このブックを見る