第19章脂肪細胞の肥大化アディポネクチンレプチンTNF-αIL-6MCP-1遊離脂肪酸摂食抑制, 生殖インスリン抵抗性異所性脂肪慢性炎症動脈硬化臓器機能障害19 肥満症図1 肥満症の病態血中濃度や遺伝子多型が心血管イベントや糖尿病の発症に相関することが報告されている.近年アディポネクチン受容体が報告され,細胞内シグナル伝達経路が明らかになるとともに,肥満に伴うアディポネクチン作用不全が提唱されている. 前述のように,余剰のエネルギーを中性脂肪として蓄積することは,脂肪組織の最も重要な機能の1つであり,個体の栄養状態に対応して交感神経系やホルモンにより巧妙に制御されている.慢性的な過栄養に対して,脂肪細胞は肥大化(サイズの増大)や過形成(細胞数の増加)により脂肪蓄積量を増やして対応するが,その適応が破綻すると,過剰な脂肪は血中を介して非脂肪組織に蓄積し(異所性脂肪),インスリン抵抗性やインスリン分泌障害などの臓器機能障害を誘導する(図1).日本を含むアジアでは,肥満のない代謝機能障害関連脂肪性肝疾患(metabolic dysfunction associated steatotic liver disease:MASLD)も高頻度に認められ, その背景には,皮下脂肪へのエネルギー蓄積能が低く,肝臓を含む実質臓器への異所性脂肪蓄積をきたしやすい点がある.このように,脂肪組織における脂肪蓄積の制御は全身に大きな影響を及ぼすと想定される2).TNF-α:tumor necrosis factor-α,IL-6:interleukin-6,MCP-1:monocyte chemoattractant protein-1. 近年,肥満症の病態生理において,「慢性炎症」が注目されている.慢性炎症では,ストレスや傷害の持続や収束機転の不全により長期間にわたり炎症反応が遷延し,最終的には臓器機能不全に至る.慢性的な過栄養や運動不足により,肥満の早期より脂肪細胞の肥大が認められる.肥大化した脂肪細胞はTNF-αやIL-6,PAI-1といった炎症性サイトカインやMCP-1などのケモカインの産生が亢進し,アディポネクチンなどの抗炎症性サイトカインの産生が減少する.さらに肥満が進行すると脂肪組織へのマクロファージの浸潤,血管新生,細胞外マトリックスの過剰産生などが認められ,動脈硬化の「血管壁リモデリング」と酷似した「脂肪組織リモデリング」を呈する(図1).その結果,アディポカイン産生調節の破綻や脂肪蓄積能の低下,炎症の促進・慢性化をきたす.このように,肥満症は代謝性疾患であるのみならず,慢性炎症性疾患の側面も有している2). 腸内細菌叢は肥満の発症および進展に関与しており,特定の菌群のバランス変化が病態に影響を及ぼす.肥満者ではFirmicutes門が増加し,Bacteroidetes門が肥満症と慢性炎症肥満と腸内細菌異所性脂肪549
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