91244格筋の収縮により,少なくともその一部はインスリン作用と独立して糖の取り込みを促進する.その一方で肝臓は糖放出を増加させ,運動による血糖低下作用を打ち消すように働く. これらの生理学的な反応は,おもに運動強度や運動する時間の長さにより異なる.例えば,低強度〜中強度の運動中では血糖値の低下により,グルカゴン分泌が亢進し,インスリン分泌が低下する.また,より高い強度の運動により交感神経系が活性化され,カテコールアミンやグルカゴンの分泌が亢進する.これらのインスリン,グルカゴン,カテコールアミンの分泌の変化により,肝臓からの糖放出が亢進する.そのため,血糖値が正常範囲内にある場合は,血液中の糖の需要と供給のバランスが保たれ,運動中に著しい血糖値の変化はきたさないようになる2).その一方で,糖尿病患者においては,ある程度の高血糖の状態であれば,低血糖回避のために,これらのホルモン分泌の変化が生じにくく,運動による血糖低下作用が期待できる.しかしながら,コントロール不良な糖尿病患者がある程度の強度の運動を行うと,おもにはインスリン分泌不全による作用不全とこれらのインスリン拮抗ホルモンの影響により,血糖値の上昇とともに,運動中のカテコールアミン分泌に伴い脂肪分解による遊離脂肪酸(free fatty acid:FFA)の供給も増大し,肝臓におけるケトン体合成の亢進が進みやすくなる.糖尿病患者において,著しい高血糖など(空腹時血糖値250 mg/dL以上)の場合は運動療法を禁止する理由の1つはそのためである1).ある.運動中においては,筋収縮に伴うエネルギー需要の増大に対して,骨格筋細胞内のグリコーゲン,脂質,血中グルコース,FFAが利用される.骨格筋細胞2運動時のエネルギー産生経路 非運動時では,脂質が主要なエネルギー源の1つで1運動時における糖代謝の変化 ヒトにおいて,血糖値は一定で正常範囲になるよう 人類は,狩猟などを行っていた時代では,食料確保のために,身体活動(運動)が必要であった.ところが現代の生活では,近代化に伴い身体活動の必要性は大幅に減少した.このような生活環境の変化により,メタボリックシンドローム,2型糖尿病,高血圧症,脂質異常症,動脈硬化症といった疾患が増加している.運動は,2型糖尿病の主要な病因の1つであるインスリン抵抗性を改善させるなどにより血糖の低下をもたらすため,運動療法は食事療法や薬物療法と同様に,糖尿病の主要な治療手段の1つになっている1).本項では,運動時における生理学的な反応や運動療法によるインスリン抵抗性の改善の実際およびそのメカニズムについて解説する.に常に調節がなされている.例えば,空腹時においてもわずかなインスリンは,肝臓からの糖放出を抑制するのと同時に,おもに骨格筋における糖の取り込みを促進させている.そのような状態でも,空腹時血糖値が低血糖にも高血糖にもならずに,ほぼ一定に保たれるのは,肝糖放出や骨格筋糖取り込みといった血液への糖の出入りのバランスが保たれていることを意味している.運動時においても,健常者では著しい高血糖や低血糖をきたすことはほとんどないが,これも糖の出入りのバランスが保たれるからである.例えば,運動により骨格筋細胞内のグリコーゲンが分解され,エネルギー産生のために酸化される.それと同時に,骨運動による代謝改善のメカニズム意義と適用運動療法
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