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内科医のための抗不安薬・抗うつ薬の使い方診断と治療社 | 書籍詳細:内科医のための抗不安薬・抗うつ薬の使い方

田崎病院副院長

松浦 雅人(まつうら まさと) 編著

初版 B5判 並製 176頁 2016年10月14日発行

ISBN9784787822796

定価:4,180円(本体価格3,800円+税)
  

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一般内科医もうつ病や不安症への対応が求められるようになる中で,臨床現場での具体的な対処法と使用する薬剤について症例を交えてわかりやすく解説する.患者から質問されることの多いクリニカル・クエスチョンへの回答と,うつ病・不安症に関わるコラムを充実させ,読みやすいながら日常診療に役立つ一冊である.一般内科医に向けて睡眠薬の使い方を解説した前著につづく好評第2弾となる.

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目次

はじめに
本書の参考文献
執筆者一覧

第1章 抗不安薬・抗うつ薬治療の基本
1.抗不安薬治療を始めるときに,知っておくべきこと
2.抗うつ薬治療を始めるときに,知っておくべきこと
3.抗うつ薬に抗不安薬や睡眠薬を併用するとき
4.双極性うつ病には抗うつ薬を使用しない
5.精神科医への紹介が必要なうつ病
6.抗不安薬をやめるときに,知っておくべきこと
7.抗うつ薬をやめるときに,知っておくべきこと
8.小児・思春期例に対する抗不安薬・抗うつ薬の使い方
9.女性に対する抗不安薬・抗うつ薬の使い方
10.高齢者に対する抗不安薬・抗うつ薬の使い方
11.認知症に対する抗不安薬・抗うつ薬の使い方
12.高血圧・心疾患をもつ人への抗不安薬・抗うつ薬投与
13.腎疾患・泌尿器疾患をもつ人への抗不安薬・抗うつ薬投与
14.呼吸器疾患をもつ人への抗不安薬・抗うつ薬投与
15.消化器疾患をもつ人への抗不安薬・抗うつ薬投与
16.その他の身体疾患をもつ人への抗不安薬・抗うつ薬投与
17.薬剤によって惹起されるうつ病
18.抗不安薬・抗うつ薬の代謝と相互作用
19.抗不安薬・抗うつ薬を過量服用してしまったら
20.抗不安薬・抗うつ薬を服用している人の自動車運転

第2章 抗不安薬・抗うつ薬各論
A 不安症・うつ病のいずれにも用いる薬物
1.選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)
①エスシタロプラム
②フルボキサミン
③セルトラリン
④パロキセチン
2.漢方エキス製剤
B 主に不安症に用いる薬剤
3-1.長期間使用することのあるベンゾジアゼピン系抗不安薬
①トフィソパム
②エチゾラム
③フルタゾラム
④ジアゼパム
⑤メキサゾラム
⑥フルトプラゼパム
⑦クロナゼパム
3-2.長期間使用することのある非ベンゾジアゼピン系抗不安薬
①タンドスピロン
②カルテオロール
③ヒドロキシジン
④ガンマオリザノール
3-3.短期間使用するベンゾジアゼピン系抗不安薬
①クロチアゼパム
②ブロマゼパム
③ロラゼパム
④アルプラゾラム
⑤フルジアゼパム
⑥クロルジアゼポキシド
⑦オキサゾラム
⑧クロキサゾラム
⑨メダゼパム
⑩クロラゼプ酸二カリウム
⑪ロフラゼプ酸エチル
C 主にうつ病に用いる薬物
4-1.選択的セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬(SNRI)
①デュロキセチン
②ミルナシプラン
③ベンラファキシン
4-2.鎮静系抗うつ薬
①ミルタザピン
②ミアンセリン
③セチプチリン
④トラゾドン
4-3.ベンザミド誘導体
①スルピリド
D 重症うつ病・入院例に用いる薬物
5-1.非選択的セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬
①イミプラミン
②トリミプラミン
③クロミプラミン
④アミトリプチリン
⑤ドスレピン
5-2.非選択的ノルアドレナリン再取り込み阻害薬
①ノルトリプチリン
②アモキサピン
③ロフェプラミン
④マプロチリン
5-3.中枢刺激薬
①ペモリン
E 主に躁うつ病に用いる薬物
6-1.気分安定薬
①炭酸リチウム
②バルプロ酸
③カルバマゼピン
④ラモトリギン
6-2.非定型抗精神病薬
①アリピプラゾール
②オランザピン
③クエチアピン

第3章 Q&A
Q1 薬物を使わないで不安症を治す方法はありますか
Q2 パニック発作が起こったらどうしたらいいですか
Q3 薬物を使わないでうつ病を治す方法はありますか
Q4 うつ病の断眠療法,覚醒療法とはどんなものですか
Q5 抗不安薬・抗うつ薬と安定剤(トランキライザー)は違いますか
Q6 抗不安薬・抗うつ薬をのむと記憶が飛びますか
Q7 抗不安薬・抗うつ薬をのみつづけると効果が薄れますか
Q8 抗不安薬・抗うつ薬をのみつづけると依存症になりますか
Q9 抗不安薬・抗うつ薬をのみつづけると認知症になりますか
Q10 抗不安薬・抗うつ薬は緑内障の人にも使えますか
Q11 抗不安薬・抗うつ薬の代わりになるサプリメントはありますか
Q12 不安症・うつ病によい食品はありますか
Q13 妊娠中に抗不安薬・抗うつ薬をのんでも大丈夫ですか
Q14 授乳中に抗不安薬・抗うつ薬をのんでも大丈夫ですか
Q15 抗不安薬・抗うつ薬とアルコールをいっしょにのんではいけませんか
Q16 抗不安薬・抗うつ薬の効果に喫煙の影響はありますか
Q17 抗不安薬・抗うつ薬の処方日数は制限されているのですか
Q18 抗不安薬・抗うつ薬で副作用が出た時に救済されますか
Q19 嚥下障害のある患者さんに抗不安薬・抗うつ薬をのんでもらう方法はありますか
Q20 抗不安薬・抗うつ薬をジュースでのんでも大丈夫ですか
Q21 抗不安薬・抗うつ薬をお茶,炭酸飲料,アルカリイオン水などでのんでも大丈夫ですか
Q22 ジェネリック医薬品とはなんですか

付 録
1 抗不安薬・抗うつ薬の発売年,商品名,剤型,後発医薬品の有無
2 抗不安薬・抗うつ薬の規制区分,処方日数制限,多剤投与制限
3 抗不安薬・抗うつ薬の用量,最高血中濃度到達時間(Tmax),消失半減期(T1/2),等価換算表
4 抗不安薬・抗うつ薬の胎児危険度分類と授乳の可否

索 引

Column
・映画:アナライズ・ミー
・ジークムント・フロイト
・森田正馬
・「源氏物語」の紫の上
・アブラハム・リンカーン
・ヨハン・ヴォルフガング・フォン・ゲーテ
・
アーネスト・ヘミングウェイ 降圧剤によって
 誘発された老年期うつ病

memo
・最初の抗不安薬は抗菌薬から発見された
・企業のストレスチェック制度
・
過労死自殺は企業の責任であると最高裁が認定した
 電通過労死事件
・日本の自殺率はいまだに高い
・日本人は不安症やうつ病になりやすい?
・三環系抗うつ薬は抗ヒスタミン薬から生まれた
・双極性障害の人は創造的な仕事に従事する
・
双極性障害の治療薬リチウムが世に出るのに
 20年以上かかった
・デューラーの版画「メランコリア」
・SSRIブーム
・うつ病の疾病負荷はきわめて高い
・
うつ病の脳内モノアミン欠乏説は
 降圧剤レセルピンのおかげ
・ブロックバスター
・抗うつ薬の始まりは抗結核薬のイプロニアジド
・
医師は薬剤添付文書を参照し
 情報を収集しなければならない
・産業革命がうつ病を引き起こした
・キルケゴールの「死にいたる病」
・不安症やうつ病による社会的損失
・トリプトファン事件
・
強迫症とPTSDは
 不安症のカテゴリーから外れた
・後発医薬品(ジェネリック)とは
・
ベンゾジアゼピン系抗不安薬の開発は偶然の産物
 (セレンディピティ)
・うつ病の増加は製薬会社の疾患喧伝?
・中枢刺激薬について

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序文

厚生労働省が3年ごとに実施している疾病調査では,最近の12年間でうつ病が2.4倍に増加し,現在の日本にはおよそ100万人の患者がいるという.これは日本人の15人に一人が生涯に一度はうつ病を経験することに相当する.男性は働き盛りの40代がピークで,女性は加齢とともに増える.うつ病増加の原因として,社会経済的変化により心理的ストレスが増加したため,あるいはうつ病は心の風邪といった啓発キャンペーンによりうつ病が社会的に認知されて受診への閾値が下がったため,さらには副作用の少ない新規抗うつ薬が多く発売されたためなど,さまざまに説明されている.うつ病患者が最初に精神科を受診する割合は10%に満たないといわれ,急増したうつ病患者の大半はかかりつけ医を初診する.そのため,一般内科医もうつ病への対処法や抗うつ薬の知識が求められる時代となった.
うつ病とともに不安症は最も有病率の高い精神疾患である.日本の処方箋の実態調査では,いまだに抗不安薬の処方率が5%と高く,ついで睡眠薬が4%,抗うつ薬が2%の順である.抗不安薬はベンゾジアゼピン系薬剤が多く用いられ,これは依存性を生じ乱用のリスクがある.海外ではその使用が急速に減少しているが,日本ではいまだに多く処方されている実態がある.ベンゾジアゼピン系薬剤の多くは向精神薬に指定され厳重な管理が求められ,保険診療上も処方日数や多剤投与が制限されており,その使用は慎重にすべきである.
うつ病と不安症は関連が深く,不安症が先行してうつ病が発症することが少なくない.また,不安症を合併したうつ病は治療に抵抗することが多い.さらに,うつ病寛解後に不安症が残遺する例はうつ病の再発率が高い.新規抗うつ薬といわれる選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)が抗不安作用をもつことから,うつ病とともに不安症にも第一選択薬として用いられるようになった.かつて行われていたような不安症に抗不安薬,うつ病に抗うつ薬といった単純な図式があてはまらなくなっている.
新規抗うつ薬のSSRIは重篤な副作用が少ないとはいえ,若年者には効果が乏しい.また,賦活症候群や離脱症候群といった副作用が生じ,若年者の自殺関連行動が増加するのではないかといった危惧がある.また,高齢者はさまざまな身体疾患の治療薬を服用しており,SSRIを高齢者に用いると薬物相互作用によって予期せぬ副作用が生じることもある.最近は,選択的セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬(SNRI)やノルアドレナリン作動性・特異的セロトニン作動薬(NaSSA)とよばれる使い勝手のよい抗うつ薬も市販されている.一般内科医もSSRI,SNRI,NaSSAといった新規抗うつ薬の使い分けを心得ておく必要がある.
本書は内科医が不安症やうつ病の薬物療法を効果的かつ安全に行うために必要な知識と治療の実際を解説した.第I章では不安症やうつ病の治療の基本を述べ,第II章では抗不安薬や抗うつ薬を個別に解説し,第III章では患者や家族から質問されることの多いクリニカル・クエスチョンに回答した.また,不安症やうつ病に関する豆知識をコラムとして充実させた.薬剤に関しては最新の情報を提供するように努めたが,医薬品情報は日々更新されており,読者におかれては折に触れて薬剤の添付文書に目を通すことを勧めたい.本書が内科医の日常診療に役立つことを願っている.

2016年9月
松浦雅人