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書籍詳細

肝臓疾患診断におけるMREハンドブック診断と治療社 | 書籍詳細:肝臓疾患診断におけるMREハンドブック

福岡大学医学部放射線医学教室 主任教授

吉満 研吾(よしみつ けんご) 編集

横浜市立大学大学院医学研究科肝胆膵消化器病学教室 主任教授

中島 淳(なかじま あつし) 編集

山梨大学医学部放射線医学講座 准教授

本杉 宇太郎(もとすぎ うたろう) 編集

初版 B5判 並製ソフトカバー,2色刷(巻頭カラー) 104頁 2015年10月01日発行

ISBN9784787822062

定価:4,070円(本体価格3,700円+税)
  

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MRエラストグラフィ(MRE)は非侵襲的に肝線維化の程度を診断できる有用な検査法であり,侵襲的検査である肝生検の一部を代替する技術として期待されている.本書は,実際にMREを施行する放射線科医や放射線技師のみならず,一般の消化器内科医がMREの原理や施行手順を理解し,読影を進められるように構成されている.本領域をリードする編集・執筆陣による一冊.

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目次

巻頭カラー口絵
編集・執筆者一覧 
序 文 吉満研吾 

I What ? ― MREの原理と基礎
1 MRE技術概論  本杉宇太郎 
2 MREパルスシーケンス  若山哲也 
3 弾性算出法  菅 幹生 

II How ? ― MRE撮像・弾性率測定の実際
1 MRE手順書  中牟田隆司 
2 読影方法  光藤利通 
3 読影のピットフォール  吉満研吾 
4 トラブルシューティング  吉満研吾 

III When ? ― 肝疾患マネージメントにおけるMREの有用性
1 脂肪肝,NASH  今城健人,米田正人,中島 淳 
2 C型慢性肝炎  阿部和道,高橋敦史,大平弘正 
3 肝硬変,肝腫瘍  品川喜紳 

IV Why ? ― MREへの期待
1 MREの優位性―再現性,IDEAL-IQ,EOBプリモビストR  本杉宇太郎 
2 各種エラストグラフィとの違い  米田正人,今城健人,斉藤 聡,中島 淳 

Richard L. Ehman特別手記 ― Magnetic Resonance Elastography: Current Status and Future Directions(MRエラストグラフィ:現状と今後の展望)
原 文 
邦 訳 

編集後記  中島 淳 
和文索引 
欧文-数字索引

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序文

 MRエラストグラフィ(MRE)の歴史は,1995年にMayoクリニックのRichard L. Ehman 先生らのグループが最初の論文をScienceに報告したことに始まる.現在では,MREの臨床応用は肝だけに留まらず,脳・心筋を含めた全身に拡大している.その間,彼らはこの分野で世界をリードし続け,他の追随を許していない.一方,国内では,2001年に九州大学の本田 浩 先生(現 九州大学大学院医学研究院臨床放射線科学分野 教授)がMREの端緒的研究を始められ,当時同じグループにいた筆者もその一部に参加させていただいた.しかしながら,肝切除標本での硬度測定には何とか成功したものの,臨床応用では技術的困難さから一度も成功することはなかった.また,本書にも御執筆いただいている菅 幹生 先生をはじめ,他のグループもほぼ同時期にMREの基礎的研究を開始し,着実な進歩を遂げていたが,やはり本格的な臨床応用には至らなかった.そのような状況のなか,2010年に山梨大学医学部放射線医学講座の本杉宇太郎 先生らのグループが個人輸入の形でEhman 先生のMayoクリニックからMREを導入し,わが国における臨床応用が保険外診療の形で始まった.
 一方,私事ではあるが,筆者が2008年に福岡大学に移ったタイミングが偶然にもMR機の更新時期と重なり,メーカーから「MREが商品として提供できるようになった」とのお話しをいただいたため,迷わずMRE搭載3T機を本邦1号機として導入することにした.結局,諸般の事情により満を持して2012年からの稼働となったが,実際に使用してみると,なかなか画像が出てこない,画像が出てきてもどこをどのように測定してよいのかわからないなど,多くの困難に直面した.当時は適切な教科書もなかったので,Ehman 先生に直接お会いして教えていただきながら試行錯誤を繰り返し,何とか臨床MREの「朧気な姿」が見えてきた今日この頃である.
 この度,横浜市立大学大学院医学研究科肝胆膵消化器病学教室の中島 淳 先生から本書の共同編集のお話しをいただき,前出の本杉 先生との3名で,実臨床に即したMREのハンドブックを出版する運びとなった.我々は物理学者・数学者ではないので「真にMREを理解しているか」と問われれば自信はないが,この素晴らしい技術が世に普及するために「我々の苦労した経験が少しでもお役に立てば」との思いである.くしくも国内では初期の頃からMREに関わる縁があり,途中で何度も挫折を経験したのちに,形を変えてこのような実践書の編集に参画できたことは,個人的にはこのうえない喜びである.
 今後,MREは技術の進歩とともにさらに簡略化され,その精度も向上していくことが期待される.本書の内容は,普遍的な部分とそうでない部分が混在していると思われるが,少なくとも「現時点のversion(v.24)において,MREという技術を世に広める意義は十分にある」と考えている.本書がMREの普及とともに,それに関わる放射線科医,放射線技師,消化器内科医の先生方の一助となり,最終的に多くの肝疾患の患者さんに還元されることを願ってやまない.

2015年9月吉日
吉満研吾
福岡大学医学部放射線医学教室 主任教授