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書籍詳細

脳波判読オープンキャンパス診断と治療社 | 書籍詳細:脳波判読オープンキャンパス
誰でも学べる7STEP

広島大学病院脳神経内科

音成 秀一郎(ねしげ しゅういちろう) 著

京都大学大学院医学研究科てんかん・運動異常生理学講座

池田 昭夫(いけだ あきお) 著

初版 B5判 並製 332頁 2021年03月18日発行

ISBN9784787824615

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病態の多様化が進む中で,より複雑化してきている脳波検査について, 本書は初学者が脳波判読の基礎からしっかりと学ぶことができるよう, 読者の判読スキルに応じて読み進めるべき項目を紹介.また,脳波所見を判定していく手順をデジタル脳波の使い方も含めて丁寧に説明し,最終的な脳波レポートの作成ができるように手順をわかりやすく解説した.臨床脳波に携わる初学者の医師や臨床検査技師にとって必携の一冊.

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目次

◆カラー口絵
◆刊行にあたって
◆本書の脳波・てんかん用語
◆本書の難易度について
◆執筆者紹介

第Ⅰ章 知っておきたい脳波のこと
1 脳波所見会に参加する前に
 1.てんかん分類・発作分類
 2.脳波は2つの電極間の引き算
 3.波形が「上向き」の時に考える脳波のパターン
 4.波形は「上向き?」,「下向き?」これが脳波のすべて
 5.脳波の電極の名前
 6.4つの電極で脳を四分割,スクリーニングする
 7.耳朶の活性化とは
2 脳波判読をはじめる前に
 1.脳波の判読 ─「波」に名前をつける作業─
 2.効率よく判読するための事前準備
 3.判読効率がよい脳波モンタージュ
 4.MPでなぜ波形は上向きか?
 5.BPもMPも原理は同じ

第Ⅱ章 脳波レポートが出来るまでの7 STEP
1 脳波判読STEP1 脳波の全体像を把握する
[A] 脳波ではそもそも何がわかるの?
 1.脳波でわかる3つのこと
 2.脳波判読レポート完成までの7 STEP
 3.脳波レポート:各項目の役割を理解する
 4.周波数でみる波の種類
[B] 脳波判読STEP1 脳波全体のプロフィールチェック
 1.脳波は最初にどこから読めばよい?
 2.DSA:時間と周波数でみる脳波

2 脳波判読STEP2 4つのルーチンチェック
[A] ルーチンチェック①:背景活動(後頭部優位律動)
 1.脳波の4つのルーチンチェック
 2.PDRのチェックポイントは?
 3.正常なPDRのサンプル
 4.PDRを確認するモンタージュは?
 5.PDRの正常・異常の境界
 6.PDRの評価:組織化(organization)としての4段階判定
 7.組織化(organization)が不良なPDRのサンプル
 8.PDRの適正サンプルの探し方
[B] ルーチンチェック②:覚醒時の全般性徐波
 1.覚醒時の背景活動に全般性徐波はあるか?
 2.成人脳波で,覚醒時での全般性徐波は異常と解釈できるか?
 3.びまん性脳症を判定(背景活動の解釈)
[C] ルーチンチェック③:睡眠脳波
 1.睡眠脳波のチェック①:睡眠stage
 2.覚醒度の変化:覚醒から睡眠までの脳波サンプル
 3.睡眠脳波のチェック②:生理的な睡眠脳波の所見はあるか?
 4.睡眠脳波のチェック③:睡眠異常症の脳波所見
 5.睡眠脳波でspikeと間違えやすい所見
 6.睡眠中のベータ波の評価と解釈は?
[D] ルーチンチェック④:賦活脳波
 1.賦活脳波(光刺激と過呼吸)
 2.光駆動反応(photic driving)の正常と異常
 3.閃光賦活で誘発される突発波

3 脳波判読STEP3 異常波形のスクリーニング(所見の拾い上げ)
[A] 波形のチェック(全般性と局所性の鑑別)
 1.判読時の適切な表示条件は?
 2.分布の評価:全般性 vs. 局所性
 3.分布と最大点のパターン
[B] 全般性の活動のチェック
 1.全般性の所見を拾い上げ(MPでのスクリーニング)
 2.全般性のspike:3つのチェックポイント
[C] 局所性の活動のチェック(MP)
 1.MPの判読手順:耳朶の活性化を見落とさない
 2.耳朶の活性化:みるべきポイント
 3.耳朶の活性化:パターンで覚える
 4.耳朶の活性化:サンプル1
 5.耳朶の活性化:サンプル2
 6.徐波での耳朶の活性化
 7.筋電図で隠れた徐波
 8.BPでは見落としかねない耳朶の活性化
[D] 局所性の活動のチェック(BP)
 1.TLE-BP:側頭部spike検出①
 2.TLE-BP:側頭部spike検出②
 3.発作間欠期のてんかん性放電の所見の記載事項は?
[E] spikeのトリセツ
 1.spike・sharp waveの形態:必要条件と特徴は?
 2.spikeのアトラス:焦点性のspikeの様々な波形
 3.spike判定のフローチャート
 4.鋭一過性波(sharp transients)とは
 5.STsのトリセツ
 6.STsのサンプル
 7.spikeの解釈:レポートの記載方法
 8.spike:形態での分類
 9.代表的な周期性放電のサンプル
 10.spike:同期性や潜時による分類
[F] 徐波(slow)のトリセツ
 1.異常な局所徐波:4つのチェックポイント
 2.異常な局所徐波のトリセツ
 3.側頭部の局所徐波:側頭葉てんかんでのサンプル①
 4.徐波の所見の記載方法
 5.側頭部の局所徐波:側頭葉てんかんでのサンプル②
 6.てんかんと関連がある徐波(断片化したspike)

4 脳波判読STEP4~7 レポートのまとめ方
[A] 脳波判読STEP4 異常波形の再現性チェック
 1.各所見の再現性を確認する
[B] 脳波判読STEP5 所見のまとめ
 1.評価項目別の所見のまとめ方
[C] 脳波判読STEP6 総合判定
 1.総合判定は4段階評価で行う
 2.総合判定:4つのチェックポイント
[D] 脳波判読STEP7 解釈と臨床へのフィードバック
 1.所見の解釈の決まりごと
 2.所見と解釈の記載例

5 最後の確認作業
[A] アーチファクトの除外
 1.脳波 vs. アーチファクト:分布パターンで区分
 2.脳波 vs. アーチファクト:振幅の減衰で区別
 3.アーチファクトのパターン:一つの電極によるアーチファクト
 4.アーチファクトのパターン:広く分布しすぎている
 5.アーチファクトのパターン:一側の半球だけに分布
 6.アーチファクトのパターン:広く分布したspike様波形
 7.各アーチファクトの発生部位
[B] 正常亜型の除外
 1.正常亜型の種類
 2.徐波タイプの生理的な正常所見
 3.正常亜型のサンプル

◆文献一覧
◆INDEX
◆おわりに

Column
脳波の放課後学習
(基礎編)
・脳波の「波」の成り立ち
・側頭葉てんかんで大事な電極,対応する発作(前兆)
・脳波の限界 —MRIはstatic(静的),脳波はdynamic(動的)—
・脳波所見会に参加しよう!
・どのモンタージュを最初に選択する?(MP vs. BP)
・DSAをパターン認識で覚える
・角膜電位は「陽性」
・睡眠脳波とてんかん性放電で注意すべきこと

(応用編) 
・周波数は車のエンジンの回転数
・発作間欠期脳波と発作時脳波は異なるもの
・脳波の組織化(organization)
・覚醒度が確認できる5つの脳波所見
・SWCは周波数チェックが大事
・必ずしも「BPでの位相逆転(phase reversal)=最大点」ではない
・電位マップの活用:spikeの最大点を確認

実臨床に役立つ!? 脳波の豆知識
・脳波は上が「陰性」
・脳波の電極の番号とは
・脳波の起源はどこ?
・周波数の語源
・開閉眼でのアーチファクトはBell現象
・睡眠脳波とその特徴
・ルーチンとしての閃光賦活は必須か?
・ルーチンとしての過呼吸賦活は必須か?
・発作時脳波変化の定義の時代的変遷:特異度から感度重視へ
・spikeとsharp waveを区別する持続時間(70ms)の意義は?
・spikeの棘波と後続徐波(after-slow):アクセルとブレーキ
・発作時にに脳波変化がなければてんかんは否定できるか?
・局所徐波はてんかん焦点とその周囲にあり,慢性的な機能低下を示唆
・脳波所見の臨床的意義度(abnormal significance)
・正常亜型の例外

てんかん臨床 ワンポイントアドバイス
・てんかんの「領域」 spike発生源がてんかん焦点とは限らない
・全般てんかんでも焦点性のspikeを認めることがある
・周期性放電の分類と鑑別疾患
・三相波(triphasic wave)とsharp waveの鑑別(抗てんかん薬の治療の必要性は?)
・明瞭なspikeの臨床的特異性はその発生部位(脳葉)に依存する
・局所徐波の患者への説明ポイント
・意識障害の脳波のチェックポイント
・てんかんと片頭痛

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序文

刊行にあたって

 この度「脳波判読オープンキャンパス 誰でも学べる7STEP」という名前で,初学者の皆様を対象にした脳波の教科書を出版できることとなりました.

 1)本書は,京都大学脳神経内科で,毎週水曜日の夜に約20年間以上にわたって大学院生博士課程と神経内科研修医の若手の先生方を対象に開催してきた,最も基本的なレベルから外来脳波を学ぶ脳波判読所見会の内容に主に基づきます(長時間ビデオ脳波カンファランスは別途開催してきました).最初の2000年当時は,ハイブリッド型デジタル脳波計のペン書きの紙書き脳波を脳波所見台(EEGボード)であらかじめ研修の先生に所見を書いてもらい,それを一症例ずつ問題点を提示して実際の波形で議論していく方法でした.京大病院では2008年から中央管理の完全ペーパレスデジタル脳波システムとなってreview stationで脳波表示を自在に変更できるようになり,院外からの参加の先生も徐々に増え,カンファランス室にプロジェクターで大写しにして議論ができるようになりました.さらに2020年春以降のコロナ禍では院内カンファランスがwebカンファランスに移行したことを契機に,院内外の参加者がコロナ禍の影響がなく参加できるようにwebカンファランスにおいてreview stationで脳波表示をお互いに操作書き込みできる形式となりました.上記の過程を通じての今までの経験を踏まえて,初学者の皆様に脳波判読の入門書をお届けできることを考えていましたが,音成秀一郎先生の極めて大きな協力を得て最終的に二人で本書の共著として発刊できることとなりました.

 2) 臨床脳波は,ドイツの精神科医のHans Berger教授が世界ではじめてヒトの脳波記録を報告した1929年から90年以上の年月が経ち,臨床脳波は日常診療のclinical toolとして確立し,世界的には1989年からのデジタル脳波第一世代,1996年以降のデジタル脳波第二世代(wide band EEG時代),2010年以降は本格的にwide band EEG時代となりました.「脳波の最も基本的な知識と判読技量」がなければ,新しいデジタル脳波を正しく使うことは困難です.臨床脳波の判読では時に大変困難な波形所見もありますが,その時は常に「back to the basic」の精神で基本に立ち返って判読することは大変肝要です.また臨床脳波とそれを取り巻く状況は常に進歩・変化しています.超高齢社会での高齢者てんかんの著増,自己免疫性脳炎とてんかんの新概念の確立,そしてcritical care EEGの重要性と多様性が注目されています.デジタル脳波の技術革新は,遠隔脳波判読システムのグローバル化,脳波自動判読,人工知能テクノロジーの導入,脳波所見の評価と解釈もビッグデータに基づき感度特異度が瞬時にメタデータとして提供される時代がすぐやってくるかもしれません.その時も「脳波の最も基本的な知識と判読技量」はその基本として肝要です.

 3)本書はそのタイトルにありますように「誰でも学ぶことができる」をモットーに,基本に忠実な脳波判読の手順を紹介しています.そして,医師,医療従事者,学生,関連分野領域の皆様が自由に学ぶことができるようにという願いも込めて「オープンキャンパス」という言葉をタイトルの中に入れました.初期研修医から指導医まで,専門診療科や職種を問わず多くの医療従事者のお役に立てるように本書では以下の特徴があります.
I. 脳波機器の専門的な点は極力簡略化し,初学者が入門しやすいよう配慮しました.
II. 脳波レポート作成までの各STEPでは,誰でも判定や解釈ができるように随所にフローチャートを作成しました.
III. 脳波アトラスだけでなく,概念図などオリジナルの図や表を200点以上用意しました.
IV. 専門用語が理解しやすいように,日本語と英語をできる限り併記しました.
V. 脳波やてんかん関連のコラムを随所に作成し,脳波のなぜ? を楽しみながら学べるようにしました.
 ご自身の現在の到達度にあわせたSTEPを集中的に利用されるのも一法です.また一方でやや難易度の高い項目も本書にはあります.そしてその中には初学者であってもいつかは最低限理解しなければならない一つの峠(山)があります(minimum requirement).最初から難易度の高い項目に挑戦すると挫折してしまうかもしれません.よって本書では難易度を4段階に設定し,読者の判読レベルに応じて読み進めるべき項目がわかるように配慮しました.

 臨床脳波に興味のある読者の皆様にとって,自由に楽しく脳波を学べるよう,そしてそれぞれの目的に応じて本書がお役に立てれば大変幸いです.
 最後に,1)に記しましたように,過去20年間以上毎週脳波所見会を継続できたのは歴代の大学院生,EEG epilepsy fellow,医員の皆様が自主的に協力していただき,判読担当者の割り当て,デジタル脳波計の準備,webカンファランスの準備と配信操作など多大な御協力のおかげです.あらためましてお礼を申し上げます.

2021年1月吉日
コロナ禍の緊急事態宣言中の京大病院で
池田昭夫

PS:
 小生の最初の臨床脳波のメンターの京都大学医学研究科名誉教授 柴崎 浩先生,当時米国クリーブランドクリニックてんかん・臨床神経生理学部門ハンス・リューダース先生に感謝申し上げます.また京大病院脳神経内科での脳波てんかん部門を常にサポートいただいてきた京都大学臨床神経学教授 高橋良輔先生に深謝いたします.