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クリニカルクエスチョン

麻酔科クリニカルクエスチョン101診断と治療社 | 書籍詳細:麻酔科クリニカルクエスチョン101

順天堂大学医学部麻酔科学・ペインクリニック講座 主任教授

稲田 英一(いなだ えいいち) 編集

初版 B5判 2色(口絵カラーあり) 260頁 2016年05月30日発行

ISBN9784787822185

定価:5,940円(本体価格5,400円+税)
  

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麻酔管理や周術期管理など日常の麻酔科診療でいだくことの多いクリニカルクエスチョン101を取り上げ,エキスパートの執筆陣が具体的かつわかりやすく解説.「Mini Lecture」や「One Point Advice」などコラムも充実!!

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目次

Chapter 1  術前回診と術前評価
Q1 前投薬が行われなくなったのはなぜか?
Q2 抗血小板薬やワルファリンは術前いつ中止すべきか?
Q3 ARBやACE阻害薬を使用している患者における注意点は何か?
Q4 ステロイド服用患者への対応で気をつけることは何か? 対応は何か?
Q5 輸血準備はどの程度しておくのが適切か?
Q6 自己血貯血の適応や注意点は何か?
Q7 気道確保困難が予想される病歴や所見は何か?
Q8 術前の絶飲食ガイドラインはどのようなものなのか?
Q9 麻酔に関するインフォームドコンセントではどこまで説明すべきか?
Chapter 2  モニタリング
Q10 安全な麻酔のためのモニター指針とはどのようなものか?
Q11 体温はどこで測定すべきか? 測定部位による差はあるか?
Q12 モニター心電図はどのような誘導を用いるべきか?
Q13 運動誘発電位や体性感覚誘発電位をモニターする場合の麻酔上の注意点は何か?
Q14 近赤外線分光法モニターによる脳酸素化の有用性と問題点は何か?
Q15 動脈カテーテルの合併症にはどのようなものがあるか?
Q16 APCOはどのような原理で心拍出量を測定しているのか?
Q17 肺動脈カテーテルの適応は何か? 最近はなぜその使用が減ってきたのか?
Q18 BISモニターを使用する意義は何か? その有用性と問題点は何か?
Chapter 3  麻酔全般
Q19 WHOの手術安全チェックリストとはどのようなものか?
Q20 全静脈麻酔(TIVA)が適応となるのはどのような手術か?
Q21 デスフルランとセボフルランはどのように使い分けるか?
Q22 レミフェンタニルの投与量はどの程度が適当か?
Q23 Target controlled infusion (TCI), open-TCIとはどのような方法か?
Q24 麻酔薬の幼若脳への有害作用はどのようなものか? 54
Q25 揮発性吸入麻酔薬の心筋保護作用(プレ,ポストコンデショニング)とはどのようなものか?
Chapter 4  気道確保
Q26 声門上器具の適応と禁忌は何か?
Q27 声門上器具を用いた気管挿管法にはどのようなものがあるか?
Q28 困難気道への対応アルゴリズムはどのようなものか?
Q29 小児でカフ付き気管チューブを用いることの有用性と問題点は何か?
Q30 カフにはどれだけの空気を注入したらよいか? 適切なカフ内圧はどれくらいか?
Q31 ビデオ喉頭鏡はどのように使うのがよいか?
Q32 外科的気道確保の適応,方法はどのようなものか?
Chapter 5  区域麻酔
Q33 脊髄くも膜下麻酔(脊麻)や硬膜外麻酔の禁忌にはどのようなものがあるか?
Q34 硬膜外麻酔は術後肺合併症を減少させるか?
Q35 超音波ガイド下神経ブロックを成功させるコツは何か?
Q36 局所麻酔薬中毒の治療はどのようにすべきか,lipid emulsion therapyとは何か?
Q37 硬膜外麻酔と硬膜外鎮痛における局所麻酔薬の種類や濃度の使い分けはどのようにするか?
Q38 脊髄幹麻酔におけるオピオイドの使用で注意することは何か?
Q39 脊髄くも膜下麻酔をしたが麻酔レベルが不十分な場合はどのように対応するか?
Q40 腕神経叢ブロックの合併症にはどのようなものがあるか?
Chapter 6  麻酔導入
Q41 輪状軟骨部圧迫の意義や問題点は何か?
Q42 小児の術前不安を解消する方法にはどのようなものがあるか?
Q43 小児で吸入導入はどのように行うか?
Q44 成人においてVIMAはどのように行うか?
Q45 TIVAの場合のプロポフォール,レミフェンタニルの投与量設定はどのようにするか?
Q46 プロポフォールの血管痛はなぜ起こるか? 防ぐ方法はあるか?
Chapter 7  麻酔維持
Q47 術中覚醒の予防法にはどのようなものがあるか?
Q48 triple lowとは何か? 112
Q49 術中の低血圧の鑑別診断は何か? 治療はどうするか?
Q50 術中の高血圧の鑑別診断は何か? 治療はどうするか?
Q51 術中の新鮮ガス流量はどの程度にすべきか?
Chapter 8  麻酔からの覚醒
Q52 揮発性麻酔薬からの覚醒はどのようにして起こるか?
Q53 プロポフォールからの覚醒はどのようにすると良好にできるか?
Chapter 9  術後鎮痛
Q54 経静脈PCA(IV-PCA)の設定はどのようにすべきか?
Q55 硬膜外PCA(PCEA)の設定はどのようにすべきか?
Q56 長時間留置する硬膜外カテーテルの取り扱い上の注意点は何か?
Q57 フルルビプロフェンアキセチルの特徴,適応,禁忌,使用法は?
Q58 アセトアミノフェンの適応,禁忌,投与量はどうか?
Q59 麻薬投与患者での看視上の注意点およびその治療はどのようなものか?
Chapter 10  麻酔器など機器類
Q60 ソーダライムはどのようにして二酸化炭素を吸収するか? 吸収能力はどの程度か?
Q61 ソーダライムと揮発性吸入麻酔薬との反応で生成される有害物質は何か?
Q62 ロタメータの太さが異なっているのはなぜか?
Q63 APL弁の機能とは何か?
Chapter 11  体温管理
Q64 麻酔中,なぜ体温は低下するか?
Q65 低体温の有害作用にはどのようなものがあるか?
Q66 低体温の予防法にはどのようなものがあるか?
Q67 低体温の治療にはどのようなものがあるか?
Q68 体温上昇の鑑別診断は何か?
Chapter 12  輸液管理
Q69 goal-directed fluid therapy,輸液の適切な指標は何か?
Q70 晶質液と膠質液をどのように使い分けるか?
Q71 中分子量ヒドロキシエチルデンプン(HES)はどのように用いるか?
Q72 尿量が減少した際の鑑別診断は何か? どのように診断し,治療するか?
Chapter 13  輸血管理
Q73 赤血球輸血のトリガーや輸血の効果とは? 保管法,使用制限はどの程度か?
Q74 新鮮凍結血漿投与のトリガーや輸血の効果は何か? 保管法,使用制限はどの程度か?
Q75 血小板輸血のトリガーや輸血の効果は何か? 保管法,使用制限はどの程度か?
Q76 フィブリノゲン補充はどのように行うか.目標値はいくつか.
Q77 輸血関連急性肺障害(TRALI)と輸血関連循環過負荷(TACO)とはどのような病態か?
Q78 massive transfusion protocol (MTP)とはどのようなものか?
Q79 血液型不適合輸血の診断および発生時の治療法はどのようなものか?
Chapter 14  呼吸管理
Q80 全身麻酔の呼吸への影響はどのようなものか?
Q81 手術部位により呼吸への影響はどのように異なるか?
Q82 術中の人工呼吸の設定はどのようにしたらよいのか?
Q83 一側肺換気中の換気条件はどのようにすべきか?
Q84 術後の酸素投与はどのようにしたらよいか?
Q85 術後の抜管基準はどのようなものか? どのような患者で術後人工呼吸が必要か?
Q86 術中の気道内圧異常の鑑別診断にはどのようなものがあるか? 対処法は何か?
Chapter 15  代謝管理
Q87 高血糖の有害作用は何か?
Q88 低血糖の有害作用は何か?
Q89 糖尿病患者におけるインスリン,経口糖尿病薬は周術期にどのように使用するか?
Chapter 16  麻酔合併症
Q90 硬膜穿刺後頭痛はどのように治療するか?
Q91 悪性高熱症はどのように治療するか?
Q92 誤嚥を起こした場合はどのように対処するか?
Q93 歯牙損傷が起きた場合,どのように対応するか?
Q94 術中に気管支喘息発作が起きたときはどのように診断し対応するのか?
Q95 術中の心筋虚血はどのように診断し対応するか?
Q96 術中の低酸素血症の鑑別診断は何か? どのように対応するか?
Q97 術中の心停止にはどのように対応するか(全身麻酔の場合,脊髄くも膜下麻酔の場合)?
Q98 周術期の失明の頻度はどれくらいか? どのような術式で多いか? その原因は何か?
Chapter 17  特殊な麻酔管理
Q99 適切な人工心肺の灌流圧,灌流量はどの程度必要か?
Q100 超低体温循環停止はどの程度の時間継続が可能か?
Q101 awake craniotomyの麻酔管理はどのように行うか?

索引

Mini Lecture
薬剤溶出性ステントと抗血小板薬
コルチゾールの生理的分泌と侵襲時の分泌
ACTH(コシントロピン)負荷試験
フィブリノゲン
希釈式・回収式自己血輸血の適応と注意点について
日本のガイドラインと各国のガイドラインの違い(絶飲食ガイドライン)
医療事故調査制度
アラームポイント
Allenテストの意義とは?
心機能モニターとしての特徴
高信頼性組織から学ぶ患者安全
リモートプレコンディショニング
術前や麻酔導入時の不安が小児の周術期管理にどのような影響を及ぼすか?
心拍出量の増大ではプロポフォールの血中濃度は低下する
末梢血管の痛みを引き起こす薬物
術中覚醒が起きた場合の対応
酸素流量の調節
小児の覚醒時興奮と脳波
集中治療における鎮静
肥満患者とプロポフォール
余剰麻酔ガス
leg up positionの手術では低体温になりやすい
nutrient-induced thermogenesisの機序
goal-directed fluid therapyの特徴
輸液反応性,前負荷反応性,前負荷依存性
relative hypovolemia
腎血流および尿生成の生理学
ヘパリン起因性血小板減少症(HIT)
低流量での酸素マスク
理想体重の計算
低酸素血症リスクの軽減
深麻酔下抜管
ダントロレン
“aspiration pneumonia”と“aspiration pneumonitis”は違う?
量規定換気と圧規定換気の選択
冠動脈攣縮
周術期患者の命を守る麻酔科医
予 防
神経モニタリングで神経合併症を予防

One Point Advice
ステロイドカバーは本当に必要か?
宗教的問題におけるIC
3極誘導心電図しかないときに胸部誘導をモニターするには?
機器のセッティング
「うちの子は麻酔を受けても脳は大丈夫でしょうか?」と聞かれたら
脊髄幹麻酔の禁忌について
静脈路のない小児に対する声門上器具挿入のタイミング
triple lowへの反論
スムーズにPCAを導入するには?
PCA実施中の呼吸抑制
小児における体温管理:低体温・うつ熱にも注意
ARDSにおける人工呼吸設定
酸素化のモニタリング
SpO2を過信しない
ダントロレン投与について
患者安全のためのコミュニケーションスキル

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序文

編集の序

 麻酔管理や周術期管理にあたっている先生方は,日頃から多くの疑問をもちながら診療をされているのではないかと思います.私たちの周りには多くの情報があふれています.教科書,論文,インターネットから得られる情報,学会や研究会で得る情報,同僚から得られる情報など様々です.残念ながら,すべての質問にevidenceに基づいた回答が得られるわけではありません.それらの情報の信頼性,正確性,限界などについても理解しておく必要があります.そうしたなかで最善の麻酔科診療をしていくのは大変なことです.それでも,私たちは毎日の診療をしていかなければなりません.
 本書では,私たちが日常的に自分自身に問いかけたり,研修医や専攻生から質問を受けることが多いクリニカルクエスチョン101問取り上げました.まずは,術前回診と術前評価に関するクリニカルクエスチョンです.術前の投与薬物はどうするか,輸血準備はどのように行うべきか,術前説明をどのように行うべきかについて取り上げました.モニタリングの章では,基本的モニタリングや,誘発電位,BIS,近赤外線分光法を取り上げました.麻酔全般の章では,揮発性麻酔や静脈麻酔薬,オピオイドについての質問を取り上げました.気道確保では,困難気道への対応や,気道確保に用いる器具について,区域麻酔では,脊髄くも膜下麻酔や硬膜外麻酔,神経ブロック,局所麻酔薬中毒への対応などに触れました.麻酔導入,麻酔維持,麻酔からの覚醒のそれぞれのステージにおいて起こりうる合併症や,薬物投与の基本について取り上げました.術後鎮痛の様々な方法についての問題も取り上げています.全身管理において重要な体温管理,輸液管理,輸血管理,呼吸管理,代謝管理に対するクリニカルクエスチョンも取り上げました.誤嚥,気管支喘息,心筋虚血,低酸素血症,心停止,失明などの麻酔合併症が起きた場合の対応についても,その診断や対応について取り上げました.
 クリニカルクエスチョンの回答は,できるだけ簡潔に,多くの図表を入れて執筆していただきました.最新のガイドラインや知見も多く含まれています.知識の整理のためにも大変に有用なものとなっていると思います.
 本書が日常診療や教育に役立つことを願っています.
 
2016年5月
順天堂大学医学部麻酔科学・ペインクリニック講座 主任教授
稲田英一