麻酔科専門医を志す後期研修医・および指導医が主な読者対象.キーとなる麻酔手技,周術期合併症,危機管理,術式別麻酔ポイントなど,麻酔科医なら知っておきたい臨床現場のエッセンスを余すところなく収載.待望の改訂第3版.
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目次
第1章 基本事項
1 麻酔科医の活動分野 北野敬明
2 麻酔科標榜医,認定医,専門医について 小板橋俊哉
3 専門医認定試験の概要:何のためにどのような試験が行われるか 佐和貞治
4 麻酔関連研究と方向性 廣田和美
5 診療報酬と麻酔料・麻酔管理料 横田美幸
6 麻酔科におけるコミュニケーション 草間宣好,祖父江和哉
7 麻酔関連偶発症例調査 森松博史
8 医師賠償保険について 横田美幸,関 誠
第2章 術前回診と術前管理
1 術前回診の基本とインフォームド・コンセント 佐藤大三
2 麻酔リスクのスコア化:呼吸・心臓リスクの評価 坂口嘉郎
3 注意すべき病歴と身体所見,必要検査 矢田部智昭,横山正尚
4 気道の評価 石川輝彦,磯野史朗
5 手術の中止・延期を考慮する場合 佐藤暢一
6 前投薬のあり方 佐藤暢一
7 術前使用薬 尾前 毅
8 肺血栓塞栓症の予防 北口勝康
9 術前輸血準備 澤村成史
10 術前経口摂取と水分管理 小竹良文
11 ERASR プロトコル 谷口英喜
12 麻酔法選択に関する考え方 恒吉勇男
第3章 よくある術前合併症
1 高血圧 山田麻里子,田中 誠
2 心房細動 尾前 毅
3 ペースメーカー・ICD(植込み型除細動器)装着患者 中森裕毅,亀井政孝
4 虚血性心疾患(狭心症,心筋梗塞)―評価,リスク,治療,周術期の対応 山浦 健
5 冠動脈ステント挿入後 前田琢磨,大西佳彦
6 脳血管障害 位田みつる,川口昌彦
7 閉塞性動脈硬化症(ASO) 赤澤年正
8 気管支喘息 杉原世里,萩平 哲
9 COPD 五藤恵次
10 間質性肺炎 五藤恵次
11 糖尿病 江木盛時
12 腎不全,血液透析 田原慎太郎,内藤嘉之
13 睡眠時無呼吸症候群 木島理恵,磯野史朗
14 肝障害,肝硬変 森 敏洋,森本裕二
15 肥 満 森 敏洋,森本裕二
16 甲状腺機能異常 畠山 登
17 感染症 木下真央,佐和貞治
18 手術室における感染対策(手術室の構造,消毒・滅菌など) 水谷 光
19 心不全 石井久成
第4章 生理学的変化
1 新生児,乳児 上園晶一
2 高齢者 小倉 信
3 妊 婦 角倉弘行
第5章 手術室入室
1 麻酔器の始業点検 石田公美子,川真田樹人
2 患者の同定 大橋一郎,中塚秀輝
3 安全な麻酔のためのモニター指針 中馬理一郎
第6章 モニタリング
1 パルスオキシメータ 小平亜美,中沢弘一
2 カプノメータ 石田裕介,中沢弘一
3 体 温 立花俊祐,山蔭道明
4 動脈カテーテル 溝部俊樹
5 肺動脈カテーテル 十時崇彰,垣花泰之
6 筋弛緩モニター 安岡直子,鈴木孝浩
7 尿 量 平田一雄
8 心電図 山口敬介
9 経食道心エコー法 金 信秀
10 周術期ポイントオブケア超音波:ABCD sonography 浅野健吾,鈴木昭広
11 BIS(bispectral index) 長田 理
12 脊髄モニタリング 出口浩之,三ツ間祐介
13 脳の酸素モニタリング(rSO2:局所脳酸素飽和度について) 吉谷健司
第7章 静脈路
1 静脈路確保のコツ 鈴木利保
2 静脈留置カテーテルの選択法 鈴木利保
3 中心静脈路の適応と禁忌 太田隆嗣,小出康弘
4 中心静脈カテーテル挿入法と部位別の注意点 太田隆嗣,小出康弘
5 輸液・輸血の加温法 立花俊祐,山蔭道明
第8章 体液管理
1 維持輸液 小竹良文
2 細胞外液輸液剤と投与量 飯島毅彦
3 中心静脈栄養における注意点 清水 優,橋本 悟
4 人工膠質液 武石健太,長坂安子
5 アルブミン溶液 飯島毅彦
6 赤血球輸血 坂口嘉郎
7 血小板濃厚液 香取信之
8 新鮮凍結血漿(FFP) 鈴木章悟,西脇公俊
9 自己血回収 大西佳彦
第9章 血液凝固管理
1 ヘパリン・低分子へパリン・ACT 松永 明
2 プロタミン 神山 圭,大畑めぐみ
3 へパリン起因性血小板減少症(HIT)への対応 前田琢磨,宮田茂樹
第10章 危機管理
1 低酸素症 中尾慎一
2 喉頭痙攣 武藤理香
3 誤 嚥 本田 完
4 気 胸 秋元 亮,川前金幸
5 出血性ショック,危機的出血 合谷木 徹
6 アナフィラキシーショック 萬家俊博,鈴木康之
7 低血圧 小森万希子
8 低心拍出量症候群(大動脈内バルーンパンピング含む) 小森万希子
9 不整脈(心室細動・心室頻拍等/除細動含む) 濱場千夏,林 行雄
10 心静止,PEA,高度徐脈 髙橋伸二
11 局所麻酔薬中毒 横山正尚
12 乏尿(鑑別診断,対応) 村山隆紀
13 高カリウム血症・低カリウム血症 五十洲 剛,村川雅洋
14 低カルシウム血症・高カルシウム血症 小田 裕
15 悪性高熱症 河本昌志
16 腹腔鏡手術の合併症 花山千恵,村川雅洋
17 頭蓋内圧亢進 山下 理,松本美志也
18 播種性血管内凝固症候群(DIC) 和田剛志
第11章 区域麻酔
1 脊髄くも膜下麻酔 内海 功,近江禎子
2 硬膜外麻酔(胸部,腰部,仙骨) 廣木忠直,齋藤 繁
3 超音波ガイド下神経ブロックの基本 森本康裕
4 腕神経叢ブロック 佐倉伸一
5 閉鎖神経ブロック 北山眞任
6 体幹・下肢の神経ブロック 中本達夫
7 小児の神経ブロック 柴田康之
8 術中鎮静法 武田敏宏,白神豪太郎
9 抗血栓療法時の区域麻酔の注意点 佐藤祐子,藤原祥裕
10 局所麻酔薬浸潤・持続投与 堀田訓久
第12章 全身麻酔の導入
1 急速導入 稲垣喜三
2 迅速導入 足立健彦
3 吸入麻酔薬による導入(緩徐導入) 佐古澄子,内田 整
4 意識下挿管 西川精宣
第13章 気道確保法
1 気管挿管:成人 古屋敦司,松川 隆
2 気管挿管:小児 釜田峰都
3 気道確保困難な場合:フェイスマスク換気,挿管困難 水本一弘
4 ファイバースコープガイド下気管挿管 青山和義
5 ラリンジアルマスクと声門上デバイス 浅井 隆
6 その他の挿管用デバイスと適応 上嶋浩順
第14章 術中呼吸管理
1 通常の症例:術後呼吸器合併症を減らすために 藤野裕士
2 片肺換気 中野雄介,鈴木健二
3 特殊な換気:高頻度換気(HFV) 渋谷伸子,山崎光章
第15章 全身麻酔の維持
1 吸入麻酔薬 小林 充,中島芳樹
2 全静脈麻酔(TIVA) 坪川恒久
3 筋弛緩とその評価 安岡直子,鈴木孝浩
第16章 麻酔からの覚醒
1 上手な覚醒のやり方 萬 知子,鵜澤康二
2 抗コリンエステラーゼ薬による筋弛緩の拮抗 安岡直子,鈴木孝浩
3 スガマデクスによる筋弛緩の拮抗 小竹良文
4 抜管の基準,手術室退出基準 富山芳信,田中克哉
第17章 術後早期の管理
1 術後回復室における管理と退室基準 前島亨一郎,中塚秀輝
2 術後人工呼吸の適応(人工呼吸器含む) 杉本憲治,西脇公俊
3 術後鎮静 鈴木武志,森﨑 浩
第18章 麻酔合併症への対処
1 歯牙損傷 原 哲也
2 嗄 声 原 哲也
3 神経障害:全身麻酔,区域麻酔,体位 今町憲貴,齊藤洋司
4 眼損傷・角膜損傷 奥田泰久,新井丈郎
5 悪心・嘔吐(PONV) 平木照之
6 シバリング 木村 哲,西川俊昭
7 覚醒遅延・術中覚醒の鑑別診断 外山裕章,山内正憲
8 麻薬と呼吸抑制 大槻明広
9 輸血副作用 北口勝康
第19章 術後鎮痛法と鎮痛薬
1 痛みの評価 山口 忍,飯田宏樹
2 multimodal analgesia 井上莊一郎
3 自己調節鎮痛法 河野泰大,川﨑貴士
4 オピオイド鎮痛薬と拮抗性オピオイド鎮痛薬 西田茉那,馬場 洋
5 アセトアミノフェン 吉田朱里,川股知之
6 非ステロイド性抗炎症薬:NSAIDs 山本達郎
第20章 術式別麻酔ポイント
1 脳腫瘍 小林賢礼,内野博之
2 脳動脈瘤,くも膜下出血の麻酔 木村慶信,住田臣造
3 脳動静脈奇形(AVM) 片山勝之
4 awake Craniotomyの麻酔 石田高志,川真田樹人
5 頚動脈手術,頭蓋外血管手術 松原珠美,肥川義雄
6 CABG(人工心肺,人工心肺からの離脱法含む) 五代幸平
7 OPCABの麻酔 林 健太郎,遠山裕樹,国沢卓之
8 大動脈弁置換術 池崎弘之
9 僧帽弁置換術,僧帽弁形成術 松永 明
10 上行,弓部大動脈瘤手術(Bentall手術含む) 長谷知美,小出康弘
11 胸部下行,腹部大動脈瘤手術 垣花 学
12 心房中隔欠損症(ASD),心室中隔欠損症(VSD)根治術 岩崎達雄
13 Fallot四徴症(TOF)根治術 岩崎達雄
14 BT(Blalock-Taussig)シャント 何 廣臣
15 肺切除術 萩平 哲
16 気管形成術 石川晴士
17 胸腺摘出術,重症筋無力症 羽間恵太,中塚秀輝
18 食道全摘術(開胸・開腹) 山口敬介
19 食道癌手術における周術期管理 谷口 巧
20 肝切除術 福田和彦
21 広汎子宮全摘術(下腹部手術) 間嶋 望,南 敏明
22 腹部内視鏡外科の麻酔 土田英昭,森川高宗
23 帝王切開術 奥富俊之
24 婦人科腹腔鏡下,子宮鏡下手術 田中源重
25 新生児緊急手術 小原崇一郎
26 小児ヘルニア手術,包茎手術 香川哲郎
27 四肢・骨盤切断術 廣瀬宗孝
28 股関節・膝関節置換術 加藤 実
29 頚椎,胸椎手術 脊戸山景子,松本美志也
30 腎摘出術,膀胱全摘術 位田みつる,川口昌彦
31 原発性アルドステロン症,Cushing症候群に対する副腎手術 小山行秀,河野達郎
32 褐色細胞腫に対する副腎手術 黒澤 伸
33 腎移植 永田博文,鈴木健二
34 経尿道的膀胱腫瘍切除(TUR-Bt)経尿道的前立腺切除(TUR-P) 奥田泰久,新井丈郎
35 ロボット支援手術(泌尿器) 栗山直英,西田 修
36 ロボット支援手術(呼吸器,心臓外科,その他) 西川精宣
37 肝移植 瀨川 一
38 多発外傷 畠山 登
39 Monitored Anesthesia Care (MAC) 角山正博
40 気道内異物 舟橋優太郎,川名 信
41 耳鼻科手術 箱﨑貴大,村川雅洋
42 眼科手術 井谷 基,多田羅恒雄
43 検査の麻酔(MRI検査を含む) 今宿康彦,北川裕利
44 脳死移植(脳死ドナーの管理) 辛島裕士
付 録
1 薬物の特徴と投与法 次田佳代,関 久美子,重見研司
2 心血管作動薬の選択 髙橋伸二
索 引
◆Column
Vigilance 北野敬明
日本専門医機構 佐和貞治
日本麻酔科学会「認定制度運営細則」に基づく「麻酔科専門医に関する内規」 佐和貞治
論文数の減少 廣田和美
パブリケーションバイアス 廣田和美
意思疎通の大切さ 草間宣好
評価があってこその管理 石川輝彦
フローチャート 北口勝康
抗血栓薬と区域麻酔 北口勝康
硬膜外麻酔前後の休薬期間 北口勝康
吸入麻酔薬vs.静脈麻酔薬 恒吉勇男
CRT(cardiac resynchronization therapy:心臓再同期療法)とは 中森裕毅
モニターの活用 中森裕毅
ペースメーカーを操ろう 中森裕毅
METs 山浦 健
抗血小板薬に対するヘパリン置換? 前田琢磨
術中のアナフィラキシー様反応 萩平 哲
副甲状腺機能の異常 畠山 登
手術前医学管理料 佐和貞治
ヒト免疫不全ウイルス 佐和貞治
血液・体液曝露後対策 佐和貞治
アルコール禁忌 水谷 光
略称の限界?! 石井久成
緊急帝王切開の麻酔 角倉弘行
徹底した確認作業が第一! 大橋一郎
人類初の血圧測定は、侵襲的な観血的血圧測定だった! 溝部俊樹
気道の評価で胃のエコー? 浅野健吾
術中覚醒を回避するには 長田 理
安全機構付き静脈留置カテーテルの種類 鈴木利保
静脈留置カテーテルのフラッシュバックパターンについて 鈴木利保
血管作動薬と容量負荷 飯島毅彦
HES製剤の販売について:欧州連合での販売中止と再開 武石健太
大量出血時におけるフィブリノゲン製剤の投与 鈴木章悟
直接経口抗凝固薬(DOAC)について 松永 明
HIT抗体に反応しやすい人としにくい人がいる? 前田琢磨
HITのコンサルトは何時すればいいのか? 前田琢磨
麻酔導入時の不用意な触診に注意 武藤理香
昔日の見聞録 本田 完
IABPとペーシング機能付き肺動脈カテーテルを使用した高度心機能低下患者の非心臓手術の経験 小森万希子
広いQRS頻脈性不整脈でも上室性の場合がある 林 行雄
抗不整脈薬と除細動閾値 林 行雄
PCPSの限界 林 行雄
ニフェカラントとアミオダロン 林 行雄
リピッドレスキュー 横山正尚
まれな生体反応の存在 村山隆紀
筋生検診断 河本昌志
DIC:エビデンスと治療の必要性 和田剛志
ガイド針使用のススメ 内海 功
呼吸抑制について 内海 功
麻酔の効果判定 内海 功
baricityについて 内海 功
マーキングとタイムアウト 柴田康之
鎮静は難しい 武田敏宏
術後せん妄とカテーテル事故抜去 佐藤祐子
死 腔 藤野裕士
TCIとは? 坪川恒久
術後低酸素血症例について 鵜澤康二
換気のモニター 中塚秀輝
デクスメデトミジン 中塚秀輝
再挿管時にはMcGRATH? 中塚秀輝
硬膜外PCAの落とし穴 中塚秀輝
周術期口腔機能管理料 原 哲也
術後の下肢の痛み,痺れ 今町憲貴
眼保護シールを取り去るタイミング 奥田泰久
ウインドウピリオドとNAT検査 北口勝康
生物由来製品感染等被害救済制度 北口勝康
麻酔上達の近道は患者の苦痛に耳を傾けること 井上莊一郎
抗血小板薬内服中患者の経鼻挿管にまつわる苦い記憶 松原珠美
ミルリノンを上手く使おう 五代幸平
吻合中の薬剤の使用方法 林 健太郎
医療技術の進歩と病気への意識 垣花 学
ダブルルーメンチューブ(DLT)か? 気管支ブロッカー(BB)か? 山口敬介
手術時間の延長 谷口 巧
肝切除術中の血圧低下の原因は出血だけではない 福田和彦
帝王切開術に硬膜外カテーテルは必要か 奥富俊之
麻酔法が限定される合併症患者 廣瀬宗孝
輸液は多く? 少なく? 位田みつる
急激なナトリウム濃度の補正には注意! 奥田泰久
HoLEP(ホルミウムヤグレーザー前立腺手術) 奥田泰久
頭頚部手術でのLMA FlexibleTM 箱嵜貴大
どんな症例でも気を緩めてはいけない 井谷 基
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序文
シリーズ総監修の序
「研修ノート」は,かつての「研修医ノート」シリーズを全面的に刷新し,新シリーズとして刊行するものである.
旧シリーズ「研修医ノート」は内科研修医のためのテキストとして1993年に出版された.その後,循環器,産婦人科,小児科,呼吸器,消化器,皮膚科など,診療科別に「研修医ノート」が相次いで刊行された.いずれも一般のマニュアルとは異なり,「基礎的な手技」だけではなく「医師としての心得」や「患者とのコミュニケーション」などの基本,あるいは「書類の書き方」,「保険制度」など,重要な事項でありながら平素は学ぶ機会の少ない事項を取り上げ,卒後間もない若手医師のための指導書として好評を博してきた.
しかしながら,時代の変化により研修医に要求される内容は大きく変化してきた.“医療崩壊”が社会問題となるなかで,研修教育の充実はますます重要となりつつある.さらに医療への信頼回復や医療安全のためには,患者やスタッフとのコミュニケーションの改善が必須であることはいうまでもない.
このような状況に鑑み,「研修医ノート」シリーズのあり方を再検討し,「研修ノート」の名のもとに,新シリーズとして刊行することとした.読者対象は後期研修医とし,専門分野の決定後に直面するさまざまな問題に対する考え方と対応を示すことにより,医師として歩んでいくうえでの“道標”となることを目的としている.
本シリーズでは,全人的教育に必要な「医の基本」を記述すること,最新の知見を十分に反映し,若い読者向けに視覚的情報を増やしつつも,分量はコンパクトとした.編集・執筆に当たっては,後期研修医の実態に即して,必要かつ不可欠な内容を盛り込んでいただくようお願いした.“全国の若手医師の必読書” として,本シリーズが,長く読み継がれることを願っている.
終わりにご執筆頂いた諸先生に心より感謝を申し上げます.
2018年11月吉日
自治医科大学学長
永井良三
第3版編集の序
2010年に出版された初版に続き,2014年に出された第2版も,多くの研修医や麻酔科専門医を目指す先生方に活用されている.2018年度からは新専門医制度も開始され,さらに本書の需要は高まっているように感じている.
4年ぶり改訂であるが,麻酔科領域でも大きな進歩や発展があった.コンパクトな判型をそのままに,執筆者も大幅に入れ替え,すべての章にわたってその内容を一新すべく見直し,書き直しを行った.困難気道管理や産科危機的出血へ対応指針など最新のガイドラインも解説し,その実践に関する記載も充実させた.膠質液や輸血指針など新しい輸液や輸血に対する考え方も解説した.
本書は,日々の症例に対応するために,使いやすく,読みやすい形式としている.各章でこれだけは理解してほしいエッセンスはDOsやDON’Tsにまとめてある.初期研修医の先生方にも読みやすく解説を加えてある.しかし,本書は単なる麻酔how to本ではない.麻酔科専門医となるために必要な知識や技術,感染管理を含む危機管理法などを網羅している.麻酔管理を含む周術期管理に関する事項だけではなく,麻酔科医の活動分野や,新専門医制度を含む認定制度,専門医認定試験の概要,今後の研究の方向性など研究にかかわる事項,医療訴訟を避けるための方法や医師賠償保険といった現代では避けることができない法律的事項もカバーしている.周術期管理に関しては,手術・麻酔前の準備,麻酔法の選択,よくある合併疾患への対処など術前評価や準備に関する章に始まり,モニタリング,血管確保,気道確保,全身麻酔や超音波ガイド下神経ブロックの方法など術中管理についての章も豊富に設けた.代表的な手術における麻酔管理のポイントに関する章もできる限り含めた.周術期に起こるトラブルにどう対処するかについての危機管理,合併症対策にも重点をおいた.術後鎮痛や術後鎮静に係る事項についての章もある.周術期管理において,麻酔科医としての考え方や対処法を理解していただければと願っている.
巻末には麻酔管理で使用する薬物について,その特徴や投与法もまとめてあるので,是非活用していただきたい.
本書は,初期研修医に役立つだけでなく,麻酔科専門医にとっても知識や技術,コミュニケーション能力の習得に大いに役立ってきたと信じている.研修医や専攻生だけでなく,それらの医師を指導する立場の先生方にも活用していただいていることにも感謝している.
このバージョンアップした「麻酔科研修ノート第3版」がさらに広く活用され,より質の高い麻酔科診療が実施されることを願っている.
2018年11月9日
編者一同