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臨床小児麻酔ハンドブック 改訂第4版診断と治療社 | 書籍詳細:臨床小児麻酔ハンドブック 改訂第4版

神戸大学大学院医学研究科外科系講座麻酔科学分野 教授

溝渕 知司(みぞぶち さとし) 監修

兵庫県立こども病院麻酔科

香川 哲郎(かがわ てつろう) 編集

兵庫県立こども病院麻酔科

鹿原 史寿子(かばら しずこ) 編集

改訂第4版 B5判 並製 404頁 2020年06月19日発行

ISBN9784787824080

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小児麻酔専門医はもちろん,一般麻酔医や研修医,コメディカルまで,小児周術期にかかわるすべてのスタッフを対象に,小児麻酔の現場で幅広く役立つ実践的情報を凝縮した臨床ハンドブック.収録する疾患や術式をより読みやすい構成とし,図表や写真を多数掲載,生理学的内容から心臓外科手術をはじめとした各種手術における麻酔方法まで,基礎・臨床の最新知見を網羅した改訂第4版.7年ぶりの全面改訂.

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目次

序 文
編集にあたって
執筆者一覧

I.小児麻酔の基礎知識
 1.術前の評価と準備 (髙辻小枝子)
  術前診察とインフォームドコンセント/術前の絶飲食/患児の不安軽減とプレパレ―ション/麻酔前投薬/
  保護者同伴入室
 2.吸入麻酔薬 (柘植江里香)
  セボフルラン/亜酸化窒素/デスフルラン
 3.静脈麻酔薬 (横田有理)
  総論/チオペンタール/プロポフォール/ミダゾラム/ケタミン/デクスメデトミジン
 4.筋弛緩薬 (田口真也)
  総論/おもな筋弛緩薬/筋弛緩からの拮抗・回復と抜管
 5.小児麻酔に必要な物品と麻酔回路 (池島典之・香川哲郎)
  小児麻酔に必要な物品/麻酔回路・麻酔器

II.小児麻酔の流れと手技
 1.気道管理と麻酔の導入 (香川哲郎)
  気道管理の原則/緩徐導入/急速導入/迅速導入とその変法/困難気道への対応
 2.気管挿管法 (香川哲郎)
  気管チューブの選択/経口挿管/経鼻挿管/意識下挿管
 3.声門上器具 (香川哲郎)
  声門上器具の種類/声門上器具の適応と禁忌/小児における声門上器具使用の注意点/LMAの挿入と抜去/
  声門上器具をガイドとしたファイバー挿管
 4.血管確保 (池島典之・香川哲郎)
  血管透視用ライトを用いた静脈路確保/超音波ガイド下の末梢動脈・静脈確保/中心静脈カテーテル挿入
 5.麻酔中の諸問題への対応 (鹿原史寿子)
  呼吸管理/循環管理/輸液管理/輸血管理/体温管理
 6.麻酔の維持と麻酔からの覚醒 (長谷川達也)
  麻酔の維持/麻酔からの覚醒
 7.術後早期の問題と術後回復室(PACU) (長谷川達也)
  術後早期の問題への対応/術後回復室(PACU)
 8.小児における術後鎮痛法① ―鎮痛薬の使用― (末田 彩)
  小児麻酔と術後鎮痛/痛みの評価法/多角的疼痛管理/鎮痛薬の使用法
 9.小児における術後鎮痛法② ―区域麻酔法― (末田 彩)
  総論/仙骨硬膜外麻酔/胸部・腰部硬膜外麻酔/神経ブロック/術者による局所麻酔

III.よくある問題と合併症
 1.発熱と呼吸器合併症 (土居ゆみ)
  発熱と気道感染/気管支喘息
 2.内分泌疾患 (野村有紀)
  糖尿病(DM)/尿崩症(DI)/抗利尿ホルモン不適合分泌症候群(SIADH)/甲状腺機能亢進症/
  甲状腺機能低下症/副腎不全/肥満
 3.血液疾患 (大井まゆ)
  白血病/免疫性血小板減少症(ITP)/血友病/von Willebrand病
 4.脳性麻痺・発達障害 (田中康智)
  脳性麻痺(CP)/てんかん/発達障害
 5.悪性高熱症とプロポフォール注入症候群 (田中康智)
  悪性高熱症/プロポフォール注入症候群(PRIS)
 6.アレルギーとアナフィラキシー (金子隆彦)
  アナフィラキシー

IV.手術別,各科別の小児麻酔
 1.新生児期の麻酔 (鹿原史寿子)
  新生児の解剖学的・生理学的特徴/新生児の麻酔管理
 2.腹部手術・消化管手術の麻酔 (鹿原史寿子)
  気管食道瘻・食道閉鎖症/先天性横隔膜ヘルニア/肥厚性幽門狭窄症/十二指腸・小腸の閉塞性疾患/
  壊死性腸炎(NEC)/消化管穿孔/消化管重複症/腸管重複症/ヒルシュスプルング病・類縁疾患/
  直腸肛門奇形・鎖肛/膀胱外反症・総排泄腔外反症/胆道閉鎖症/門脈圧亢進・食道静脈瘤・脾機能亢進/
  先天性胆道拡張症/臍帯ヘルニア・腹壁破裂/鼠径ヘルニア・陰嚢水腫/臍ヘルニア/乳児期以降の急性腹症/
  尿膜管遺残/胃食道逆流症(GERD)/消化管異物/腹腔鏡下手術の麻酔/消化管内視鏡検査の麻酔
 3.開胸手術の麻酔 (大西広泰)
  分離肺換気(片肺換気,一側肺換気)/胸腔鏡下手術/開胸手術の術後鎮痛/嚢胞性肺疾患/漏斗胸/乳び胸/
  横隔膜弛緩症/横隔膜挙上症
 4.腫瘍疾患の麻酔 (坪井ちづ・廣瀬徹也)
  総論/中心静脈カテーテル挿入術/前縦隔腫瘍/腹部腫瘍摘出術総論/褐色細胞腫/神経芽腫/仙尾部奇形腫/
  その他の腫瘍性疾患
 5.上気道,気管手術の麻酔 (香川哲郎・廣瀬徹也)
  気管切開/硬性気管支鏡検査/気道異物/頚部・口腔内の腫瘍・嚢胞・瘻孔/気管軟化症/声門下狭窄症/
  先天性気管狭窄症/気管腕頭動脈瘻/喉頭気管分離術/EXIT
 6.眼科手術の麻酔 (秋泉春樹)
  基本方針/眼科手術における気道確保法/斜視手術・眼瞼下垂手術・睫毛内反手術/眼内手術/
  先天性鼻涙管閉鎖/未熟児網膜症(ROP)/網膜芽細胞腫
 7.耳鼻咽喉科手術の麻酔 (大西広泰)
  基本方針/アデノイド切除術・口蓋扁桃摘出術/鼓膜切開術・鼓膜換気チューブ挿入術/
  鼓膜形成術・鼓室形成術/喉頭マイクロ手術
 8.形成外科手術の麻酔 (小西麻意)
  基本方針/口唇裂・口蓋裂/耳介形成/熱傷
 9.歯科治療に対する麻酔 (小西麻意)
  基本方針/麻酔管理 
 10.脳神経外科手術の麻酔 (大西広泰・小西麻意)
  解剖学的・生理学的特徴/麻酔管理の基本的事項/水頭症/神経内視鏡/二分脊椎/キアリ奇形/
  頭蓋骨縫合早期癒合症/脳腫瘍/もやもや病/動静脈奇形(AVM)/頭部外傷
 11.泌尿器科手術の麻酔 (上嶋江利)
  包茎/尿道下裂/膀胱尿管逆流(VUR)/停留精巣/急性陰嚢症(特に精巣捻転)/経尿道的手術・検査の麻酔/
  水腎症・水尿管症/精索静脈瘤/腎生検/腹膜透析用カテーテル挿入/腎移植
 12.整形外科手術の麻酔 (上嶋江利・髙辻小枝子)
  小児整形外科手術の一般的注意事項/小児整形外科手術における区域麻酔の概要/
  発育性股関節形成不全(DDH)/ペルテス病/大腿骨頭すべり症(SCFE)/内反足および足の先天奇形/脚長差/
  手の先天奇形/筋性斜頚/骨折/ボツリヌス治療/側弯症/骨腫瘍
 13.心臓外科手術の麻酔:総論 (藤原孝志)
  先天性心疾患(CHD)総論/先天性心疾患患者に特徴的な病態/先天性心疾患患者の非心臓手術/
  心臓カテーテル検査・カテーテルインターベンションの麻酔/心臓手術を受ける患者の術前評価と麻酔準備・
  モニタリング/人工心肺を使用した開心術の一般的手順と麻酔管理
 14.心臓外科手術の麻酔:各論①―疾患別麻酔管理― (藤原孝志)
  心房中隔欠損(ASD)/部分肺静脈還流異常(PAPVR)/心室中隔欠損(VSD)/右室二腔症(TCRV,DCRV)/
  房室中隔欠損(AVSD)/動脈管開存(PDA)/大動脈縮窄(CoA)・大動脈弓離断(IAA)/
  大動脈弁・弁上・弁下狭窄(AS)/ファロー四徴(TOF)/肺動脈閉鎖・心室中隔欠損(PA/VSD)/
  両大血管右室起始(DORV)/三尖弁閉鎖(TA)/純型肺動脈閉鎖(PA/IVS)/肺動脈狭窄(PS)/
  総動脈幹症/大動脈肺動脈窓(AP window)/単心室(SV)/完全大血管転位(TGA)/
  修正大血管転位(cTGA)/総肺静脈還流異常(TAPVR)/三心房心/左心低形成症候群(HLHS)/
  エプスタイン奇形/血管輪/乳児特発性僧房弁腱索断裂
 15.心臓外科手術の麻酔:各論②―術式別麻酔管理― (藤原孝志)
  体肺動脈短絡術(SPシャント)/肺動脈絞扼術(PAB)/両方向性Glenn手術(BDG)/TCPC手術/
  動脈スイッチ手術(ASO)/Rastelli手術/Norwood手術/Ross手術,Ross-Konno手術/ペースメーカー植え込み術
 16.手術室外の麻酔 (鈴木 毅)
  手術室外の麻酔総論/MRI検査/血管造影検査/放射線治療/病棟での処置に対する全身麻酔
 17.日帰り手術の麻酔 (鹿原史寿子)
  日帰り手術の概要/日帰り手術の長所と短所/日帰り手術の対象/日帰り手術の麻酔

V.付 録
 1.コンパクトデータ集 (横尾知樹)
  基本となる気管チューブのサイズと挿入長/小児の平均体重,平均身長,気管チューブ・LMAのサイズ/
  エアウェイスコープおよび声門上器具に適応するチューブのサイズ/麻酔器具の準備の目安/
  術前の絶飲食時間/小児の心拍数,血圧/小児の呼吸回数/小児のヘモグロビン(Hb)・
  ヘマトクリット(Hct)/体重に対する体内水分の割合/循環血液量(EBV)/血液ガス/許容出血量(ABL)/
  Hbを1g/dL上昇させる赤血球液投与量/濃厚血小板輸血により上昇する血小板数/
  中心静脈カテーテルの挿入長の目安/維持輸液量/周術期輸液量/カテコラミンの希釈法/
  局所麻酔薬使用量/循環作動薬一覧表/発育期の分類/早産児・低出生体重児の分類/手術前後の予防接種
 2.心臓外科略語集 (内本明宏)
 3.おもな先天奇形症候群一覧 (岡本拓磨・内本明宏)

VI.索 引
 和文索引
 欧文索引
 数字・ギリシャ文字

臨床の現場から
 子どもを診察する際のポイント
 プロポフォールと食物アレルギー
 動揺歯への対応
 血管外漏出を未然に防ぐ
 ヒト・メタニューモウイルス
 新生児の消化管閉鎖・狭窄の麻酔導入
 麻酔に影響しうる点眼薬
 病棟での熱傷に対する処置時の麻酔
 粒子線治療中の医療機器誤作動防止対策

メモ
 ミダゾラムシロップ
 人工呼吸器使用時は胸郭の上昇をチェック!
 人工呼吸中に突然発症する低酸素血症
 錐体外路症状
 局所麻酔薬中毒
 小児の喉頭痙攣のリスク
 血中トリプターゼ濃度測定
 ラテックスフルーツ症候群
 低出生体重児に対するアトロピンの投与量
 先天性副腎過形成症
 区分診断法
 FVMカクテル

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序文

序 文

 2003年に本書の初版が発行され17年が過ぎた.その間2度の改訂が行われ今回は3度目の改訂となる.若いころ師事した上司に,“何度も改訂されている本は良い本,すなわち名著です.本を読んで勉強するなら何度も改訂されている本を,また,新しく直近に改訂されている本を読んで勉強しなさい.“と教えられた.本書は20年も経たずに3度目の改訂,今回第4版の発行である.その点では手前味噌ながら,この本も名著の仲間に入るのかなと思ったりする.
 本書は元々,小児を専門としない麻酔科医や小児病院で働く医師,学生や麻酔初心者を対象とした小児麻酔の教科書・マニュアルとして刊行されたと聞く.しかし,改訂4版を迎え毎回進化を遂げ,内容はもはやマニュアルではなく最新の見解や情報を加味しリニューアルした教科書となった.小児麻酔を勉強するための最適の書として,麻酔科医だけでなく小児科医や小児外科医,さらには看護師等パラメディカルの方々が読んでもすぐ理解できる内容である.今回は特に,前回から愛読されている方が読んでも新たに読み進められることに加え,医師以外の方々もスムーズに読める内容になることを目指した.
 前回第3版が出版されたのが2013年であるから今回の改訂は7年ぶりとなる.第2版から第3版までの改訂が5年であったから今回の改訂は少し長くなった.いくつか理由があると考えるが,その一因として,前回の改訂時に注目されたデスフルランやスガマデクスなどの新たな使用やビデオ喉頭鏡の普及など,今回ここ数年間では大きく目を見張るような新しい薬物や器具の登場が少なかったことがあると思う.もちろん,さらなる安全な麻酔管理を目指して麻酔法の改新は日々続いているが,ある意味,麻酔は安定期に入っていると言えるかもしれない.しかし,低侵襲手術と称した内視鏡手術の普及やエビデンスの蓄積,ガイドラインの作成などは近年急速に進んでおり,今後も注視しておく必要があろう.
 少子高齢化が叫ばれて久しい.再生医療や分子標的製剤の開発,新たな病態の解明など医療の進歩を考えると小児麻酔のニーズは減っていく可能性がある.しかし,まだまだ改善する点は多く,これからは術式の進歩も含めて,特に麻酔の質の改善が加速して行われると私は考える.私は予言をするだけの能力は兼ね備えていないが,前回の改訂時に序文で記された前川先生の予言は見事に的中している.本書が長く続き(長く続くということは名著であるということ),予言とはおこがましいが質の改善がさらに進むであろうとする私のこの独り言がどうなっているか次回楽しみである.
 医療の進歩に終わりはない.常に進化していくことが医学の発展になり患者を一人でも多く病気から救うことになる.今回の改訂が今と近未来の安全で質の高い小児麻酔提供の一助になり,さらに安全で安心な医療が全国の小児に提供できることを心から願ってやまない.

 2020年5月
神戸大学大学院医学研究科外科系講座麻酔科学分野教授
溝渕知司



編集にあたって

 この本の第3版が出版されてから7年が経過した.この間,すでに成人で普及している全静脈麻酔(TIVA),神経ブロック,超音波装置の使用,術後回復室の運用などが小児麻酔領域にもかなり浸透した.そしてこれらに伴って覚醒の質が改善し,鎮痛に対する理解が深まり,周術期の安全性が高まった感がある.また各学会が中心となってガイドラインの整備が進み,さまざまな疾患や病態に対する対応の標準化が進んだ.小児外科系診療科,特に小児外科や小児心臓外科領域では疾患の理解,病態の解明,治療法や手術法の進化がみられた.第4版ではこれらを踏まえ,できるだけ新しい情報を加えて改訂を行った.また麻酔科医と各小児診療科が対等に話し合えるよう,基本的な知識とともにその領域の専門用語も盛り込み,索引を充実させた.
 日本は少子化が進んでおり,出生数は減少しているが,医療の高度化,合併症をもつ患者の増加,手術適応の拡大,新しい術式の開発などにより,小児の手術は減少していない.また小児を扱う医療機関の集約化が進んでいるとはいいがたく,広く日本の多くの施設で小児の手術が行われている.こうしたなか,本書が小児の麻酔を担当するときのプラクティカルガイドとなり,麻酔科医のみならず小児医療を取り巻く多くの医療関係者の麻酔への理解を助け,ひいては安全・快適な小児麻酔の一助となれば幸いである.
 最後に,専門的な立場からご助言をいただいた兵庫県立こども病院の前田貢作,福澤宏明,森田圭一(小児外科),松久弘典,松島峻介(心臓血管外科),田中敏克(循環器内科),小山淳二(脳神経外科),小野田素大(形成外科),大津雅秀(耳鼻科),小林大介(整形外科),杉多良文(泌尿器科),野村耕治(眼科),芳本誠司(新生児内科) (敬称略)の諸氏に感謝したい.

 2020年5月
兵庫県立こども病院麻酔科 香川哲郎・鹿原史寿子