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小児感染症診療マスト&ベスト診断と治療社 | 書籍詳細:小児感染症診療マスト&ベスト

兵庫県立こども病院 感染症内科

笠井 正志(かさい まさし) 監修

兵庫県立こども病院 感染症内科

大竹 正悟(おおたけ しょうご) 著

初版 A5判 並製 340頁 2022年05月06日発行

ISBN9784787825261

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小児科の最前線,兵庫県立こども病院の師弟タッグ,笠井正志先生,大竹正悟先生による小児感染症診療の記念碑的著作!
著者入魂の80のフローチャートと簡潔明解な解説によって,臨床場面でよく出会う症候を軸に診断から治療までのフローを体験的に習得.小児感染症診療における思考のプロセスが体系化された「読めば,匠」間違いなしの至高の一冊!(フローチャートをオンラインで閲覧できるシリアルコード付き)

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目次

序 文 笠井正志
まえがき 大竹正悟
略語一覧
イントロダクション
本書のマエセツ

第1章 症候別の鑑別診断
各症候の診かた・考えかた・注意点
1 生後3か月未満の発熱 鑑別診断フロー
2 不機嫌 鑑別診断フロー
3 咽頭痛 鑑別診断フロー
4 頸部腫瘤 鑑別診断フロー
5 頸部リンパ節腫脹 鑑別診断フロー
6 眼球結膜充血 鑑別診断フロー
7 咳嗽 鑑別診断フロー
8 無呼吸発作 鑑別診断フロー
9 腹痛 鑑別診断フロー
10 下痢 鑑別診断フロー
11 肝腫大 鑑別診断フロー
12 脾腫大 鑑別診断フロー

第2章 気道感染症
気道感染症の診かた・考えかた・注意点
13 「呼吸器症状・画像所見から疑う」肺炎かな?と仮説
14 「特殊な患者背景の肺炎①」基礎疾患のある患者の肺炎かな?と仮説
15 「特殊な患者背景の肺炎②」新生児の肺炎かな?と仮説
16 「咳が止まらない・呼吸を休む」百日咳かな?と仮説
17 「画像検査で空洞を認める」肺の空洞影・結節影 鑑別診断フロー
18 「肺炎治療中の症状増悪」膿胸・肺化膿症かな?と仮説
19 「耳が痛い」外耳炎・中耳炎かな?と仮説

第3章 頭頸部感染症
頭頸部感染症の診かた・考えかた・注意点
20 「目が腫れている・痛い」眼窩蜂窩織炎かな?と仮説
21 「喉が痛い①」急性喉頭蓋炎かな?と仮説
22 「喉が痛い②」扁桃周囲膿瘍・咽後膿瘍かな?と仮説
23 「毎回同じ場所が赤く腫れる」繰り返す頸部感染症 鑑別診断フロー

第4章 泌尿器・生殖器感染症
泌尿器・生殖器感染症の診かた・考えかた・注意点
24 「気道症状がない乳児が発熱」単純性尿路感染症かな?と仮説
25 「膀胱尿管逆流のある患者の感染症」複雑型尿路感染症かな?と仮説
26 「カテーテル留置中の患者の感染症」カテーテル関連尿路感染症かな?と仮説
27 「タマが痛い!」精巣上体炎かな?と仮説
28 「尿培養でブドウ球菌?」尿グラム染色または培養でブドウ球菌を認めたとき 鑑別診断フロー
29 「性的活動が活発な患者の下腹部痛」性感染症かな?と仮説

第5章 中枢神経感染症
中枢神経感染症の診かた・考えかた・注意点
30 「全身状態不良,新生児発熱など」髄膜炎かな?と仮説
31 細菌性髄膜炎治療後のフォローアップフロー
32 「細菌性髄膜炎治療中の再発熱,感染性心内膜炎の患者」脳膿瘍かな?と仮説
33 「脳室-腹腔シャント留置後6か月以内の頭痛・嘔吐」脳室-腹腔シャント感染かな?と仮説

第6章 皮膚軟部組織感染症
皮膚軟部組織感染症の診かた・考えかた・注意点
34 「皮膚所見に比して急激な疼痛」壊死性筋膜炎(蜂窩織炎)かな?と仮説
35 「皮膚(リンパ節)に膿が溜まっている」 皮下膿瘍(リンパ節膿瘍)かな?と仮説
36 「しこりがある」化膿性リンパ節炎・膿瘍かな?と仮説
37 「変な発疹がある」多形滲出性紅斑・結節性紅斑かな?と仮説
38 「皮膚が赤く?ける」ブドウ球菌熱傷様皮膚症候群かな?と仮説
39 「四肢を動かそうとしない①」関節炎(化膿性または単純性)かな?と仮説
40 「四肢を動かそうとしない②」急性骨髄炎かな?と仮説
41 「スポーツ外傷後の不明熱」筋膿瘍かな?と仮説

第7章 血流感染症
血流感染症の診かた・考えかた・注意点
42 長期留置型中心静脈(CV)カテーテル留置中血液培養陽性時のマネジメントフロー

第8章 心疾患関連感染症
心疾患関連感染症の診かた・考えかた・注意点
43 「先行感染から数日後の全身状態不良・不機嫌」急性心筋炎かな?と仮説
44 「先天性心疾患のある患者の不明熱」感染性心内膜炎かな?と仮説

第9章 腹腔内感染症
腹腔内感染症の診かた・考えかた・注意点
45 「下痢・嘔吐」急性胃腸炎かな?と仮説
46 「心窩部から右下腹部に移動する腹痛」急性虫垂炎かな?と仮説
47 「筋性防御,板状硬,全身状態不良」汎発性腹膜炎かな?と仮説
48 「胆道閉鎖症,葛西術後の既往がある患者の発熱・黄疸」急性胆管炎かな?と仮説
49 急性膵炎に対する予防抗菌薬マネジメントフロー
50 「先行抗菌薬投与のある患者の頻回水様性便」Clostridioides difficile感染症かな?と仮説
51 「消化管潰瘍,特発性血小板減少性紫斑病,鉄欠乏性貧血」Helicobacter pylori感染症かな?と仮説

第10章 外傷関連感染症
外傷関連感染症の診かた・考えかた・注意点
52 「動物に咬まれた!」動物咬傷時の治療・予防フロー
53 「怪我をした!」外傷時破傷風予防フロー
54 開放骨折に対する感染症予防フロー
55 顔面外傷・頭部外傷に対する感染症予防フロー
56 「歯ブラシをくわえて転んだ」口腔内外傷かな?と仮説
57 「熱傷後の発熱」熱傷後の感染症?と仮説

第11章 外来で出会う感染症
外来で出会う感染症の診かた・考えかた・注意点
58 「血液検査でAST/ALTの上昇を認める」肝機能障害 鑑別診断フロー
59 「繰り返す感染症,体重増加不良,免疫不全の家族歴など」原発性免疫不全症かな?と仮説
60 「便に虫(卵)がついていた」条虫症・回虫症かな?と仮説
61 無脾症・脾臓摘出後の患者に対する感染症予防フロー
62 「おりものが増えた」帯下増加患者に対するマネジメントフロー
63 「赤ちゃんの舌に白いかすがついている」鵞口瘡かな?と仮説
64 「BCGワクチン接種数日後に接種部位が赤く腫れている」コッホ現象かな?と仮説
65 「BCGワクチン接種1か月後に接種部位を中心にざ瘡様発疹が出現」結核疹かな?と仮説
66 免疫不全患者(おもにDiGeorge症候群)の予防接種フロー
67 「血液検査でHBs抗原が陽性」HBs抗原陽性時のマネジメントフロー
68 腸管出血性大腸菌感染症後マネジメントフロー
69 海外渡航児のワクチン接種相談マネジメントフロー

第12章 手術関連感染症
手術関連感染症の診かた・考えかた・注意点
70 ICUで管理中の心臓血管外科術後発熱マネジメントフロー
71 一般病棟で管理中の心臓血管外科術後発熱マネジメントフロー
72 泌尿器科関連周術期予防抗菌薬マネジメントフロー

第13章 新生児・周産期関連感染症
新生児・周産期関連感染症の診かた・考えかた・注意点
73 「母体に既往がある.出生児が鼻閉・皮膚が?けている」先天梅毒かな?と仮説
74 「眼が開けられないほどの眼脂がついている」新生児結膜炎かな?と仮説
75 「新生児のけいれん,発熱,全身状態不良など」新生児HSV脳炎かな?と仮説
76 帝王切開後母体発熱時のマネジメントフロー

第14章 院内でよく出会う感染症
院内でよく出会う感染症の診かた・考えかた・注意点
77 「培養検査からP. aeruginosaが検出」侵襲性緑膿菌感染症マネジメントフロー
78 「水痘既往のある患者の集簇した発疹」帯状疱疹かな?と仮説

第15章 その他,知っておくとよい感染症・関連インシデント
その他,知っておくとよい感染症・関連インシデントの診かた・考えかた・注意点
79 「脾臓がない患者の発熱」無脾症患者の感染症マネジメントフロー
80 「母乳を間違えてしまった」母乳取り違えマネジメントフロー

CHART番外編1 いつになったら通園できるの?
CHART番外編2 小児感染症科医ドボンシリーズ

索 引
あとがき 大竹正悟


Column
結核ってどうやって否定するの?
聴診所見の重要性~隠れた心室中隔欠損症~
急性肺炎の初期治療に第3世代セファロスポリン系抗菌薬が必要なのはいつ?
グラム染色で腸内細菌属とP. aeruginosaを見分けることはできるのか?
新生児への抗菌薬投与,内服移行は可能なの?
白血球が著増する感染症といえば?
BALれるのか,BALれないのか,それが大きな問題
誤嚥性肺炎にABPC/SBTは必要なのか?
眼窩蜂窩織炎の選択薬は?
killer sore throatとは?
ESBL産生菌の尿路感染症がセフォチアムで改善することはあるの?
腎機能障害がある患者の抗微生物薬投与量は?
スーパー淋菌ってなんだ!?
抗菌薬適正使用というジレンマ
late onsetのGBS髄膜炎や菌血症では母乳栄養をやめたほうがいいのか?
LRINECスコアって知ってる?
各ガイドラインが示す急性膵炎への抗菌薬予防投与の推奨
新生児が動物に咬まれた!予防抗菌薬は静注?内服?
C3,C4が正常なのに血清補体価(CH50)が感度以下!?
ツベルクリン反応の皮内注射をうまく実施するために……
小児において感染症関連の術前検査は必要なのか?
ICUで治療中の発熱はすべて感染症か?
出生児のルーチンの点眼薬で淋菌性・クラミジア結膜炎を予防できるのか?
HSV脳炎の否定には発症数日後の髄液PCR検査が必要か?
帯状疱疹ワクチン(シングリックス®)って何?

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序文

序文―兵庫こども感染症内科の「手の内」を明かします

監修を務めました笠井です.
本書を手に取っていただきありがとうございます.タイトルに惹かれたのでしょうか,たまたま平積みになっていたからでしょうか.ひょっとしたら,初期ローテで小児科研修中,小児科専門医コース修行中で,感染症は多いけどだいたい「ふんわり」,でも広すぎて整理されていなくて,何をやってよいかよくわからん.ちょっと本でも買って読んでみようと思われていますかね.でも成書とかよばれる本や洋書はいろんな意味で「重い」ですよね.だからこの本を手に取ったのですかね.
この序文を読んでくださりありがとうございます.その本を買うかどうか迷っているときは,私も本屋さんで必ず序文をまず読みます.医学書は安くない買い物ですので,吟味してください.個人的な買うかどうかの判断の基準は,内容はもちろん重視しますが,誰がどの程度本気で書いたかを最重要視しています.
本書の著者は大竹正悟医師です.大竹,って誰? 知る人は知る,知らない人は知らない人物です.ここだけの話,大竹医師は小児医療,小児感染症の次世代を担う逸材です(今のうちにサインをもらっておくとよいですよ).大竹医師は小児科専門医研修を終えた後に,兵庫県立こども病院感染症内科設立後2代目のフェローとなりました.初代フェローがフェローと扱ってよいのか,むしろパートナーであった伊藤雄介先生(現・兵庫県立尼崎総合医療センター小児救急集中治療科長/小児感染症内科長)でした.その伊藤先生の後釜という院内他科や他職種からのすごいプレッシャーの下,また当科は二人診療科ですので,ずっと私と一対一という圧力に耐え,コンサルからICTから飲み会から上司の暴言の尻拭いを「ワンオペ」され,3年間生き延びてきたスーパーマンです.特に感染症診療やコンサルテーションにおいては,本質的な問いを重視し,成書や文献の内容を鵜呑みにするような「コピペ」知識や診断を「キーワード」だけでする診療を許されないカンファレンスの繰り返し,そして常に自分の考えや治療には「愛と哲学」までも求めてきました.結果,私としてはどこに出しても恥ずかしくないレベルに鍛え抜いたつもりです.
そう本書はその厳しいフェロー研修中に大竹医師が生き延びるために,自分でまとめた本です.ポイントは自分で生き延びるために本気で書いたというところです.情報をただただ集めただけのものではないということです.当院感染症内科では血液腫瘍を中心とした免疫不全者の感染症や集中治療管理される重症感染症を中心に年間約500件を超えるコンサルテーションを受けています.その内実は特殊な微生物関連の感染症から,むずかしい治療に伴う合併症としての難治感染症は無論のこと,肺炎や尿路感染症の,基本的でもバリエーションが多く,実は正解がありそうでない領域です.本書はほとんど疾患別の章立てにはなっていません.むしろよく出会う症候やclinical questionに対して,考え方と問題解決までのフローをまとめたものです.まさに当科が毎日数件新しくがっぷり四つで取り組んでいるみんなが困っている問題に対する解決の「手の内」を読みやすい形で明かした本です.
目の前の患者さんにベストを尽くしたくて小児科医になられたことでしょう.マストを日々丁寧に親切に愚直に何千回も繰り返すことだけがベストに近づける道です.今日から本書を片手に子どもたちのためにハードワークしましょう.

2022年3月

兵庫県立こども病院 感染症内科 部長
笠井 正志


まえがき

この度は本書を手に取って下さり本当にありがとうございます.本書の最大の特徴である診療フローチャートを私が作り始めたのは2020年5月です.新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が流行し「第1波」と呼ばれた最中,COVID-19の感染対策を行う中で様々なジレンマと遭遇しました.
正直な話,現場は新型コロナウイルスがRNAウイルスであることやエンベロープを持つウイルスであることなどの「正しい情報」は求めておらず,「実際どうすればいいのか」という問いに対する迅速かつわかりやすい回答を求めていました.文章主体のマニュアルを掲載しても何度も同じ質問を受けるため,質問の内容と回答をフローチャート形式にして電子カルテに掲載した結果,相談件数が激減しました.そこで,普段の診療においてもコンサルトに対する,より簡潔で明確,かつ相談下さった方にとって学びになるものは,この形式ではないかと気づいたのです.
そして,上司であり師匠である笠井正志先生より「お前に相談しなくてもいいように,だれが見ても理解できる診療フローチャートを100個作れ」と半ば無理難題な指示を頂いたことからこの途方もない旅が始まりました.それから約2年かけて本書の出版にまで至ったという流れです.
本書のフローチャートの特徴は本文にも記載しますが,以下の3点を意識しました.

①思考過程を可視化し,感染症診療を1つのストーリーとして考察できる
②文章よりも明らかに視覚的な理解が進む
③自分が必要な情報以外の部分にも目を通しやすい

そして,本書はエビデンスや原則【マスト】だけでなく,リアルワールドの愛・哲学・こどもに優しい診療を突き詰めた笠井イズムと,私が生き延びるために悩み,考え抜いたロジックと情熱【ベスト】を全て注ぎました.最終的に第1版では80個にとどまってしまいましたが,是非この渾身のフローチャートたちに目を通して頂ければと思います.

最後に,このような機会を与えて下さった笠井先生,瀬崎さんをはじめとした診断と治療社の編集部・企画部の皆さん,本当にありがとうございました.

2022年3月
兵庫県立こども病院 感染症内科  2代目フェロー
大竹 正悟