
運動器の身体診察(フィジカル)×エコー超入門
定価:7,150円(税込)
●発刊のことば●
このたび,『小児の身体診察×エコー超入門』が発刊されます.発刊に際し,編集を務めた1人として本書の目指す方向性について述べたいと思います.
その前に,私と超音波とのかかわりを簡単に述べます.私は40数年前に腹部超音波検査(腹部エコー)に出会い,手探り(自己流)で取り組み,その威力・魅力に取りつかれました.2000年に浅井宣美氏(現・茨城県立こども病院)と出会い,小児領域に超音波検査を普及しようということで意気投合し,全国で様々な普及活動をしてきました.
私は「腹部エコーをお腹の聴診器のように活用する」ことを理想として臨床の第一線で診療に当たってきましたし,多くの後輩たちに伝えてきました.次第に小児領域でも超音波検査が市民権を得つつあり,とてもうれしく感じています.心臓,頭部はもとより,腹部,体表,関節,肺,救急とエコーは頭のてっぺんから足の先まで小児の身体のすべての領域で活用されるようになっています.そこで,現在では「小児医療に携わる医療者はエコーを診療の友として活用し,子どもに優しい医療を実現しよう」と呼び掛けています.
本書はまさに「子どもに優しい医療」に通じる内容だと思います.私がエコーを始めてまだ経験が浅い頃,腸重積症の診断について小児科地方会で発表したことがあります.そのとき,先輩から「腸重積症の診断には問診や診察が大事でエコーは必要ない」といわれた記憶があります.また,腸重積症のエコー下整復について全国学会で発表した際には大御所の先生から「透視下整復には客観性があるが,エコー下整復には客観性がない」といわれたことをよく覚えています.しかし,今はどうでしょうか? 先輩や大御所にいわれた言葉を反面教師や発奮材料として頑張ってきたことが今につながっているのだと思っています.まさに「継続は力なり」です.
本書の著者の多くは浅井宣美氏からエコーの手ほどきを受けた方です.中でも児玉和彦氏の「小児の診察における問診のポイント」「小児の身体診察のポイント」は目から鱗のことが満載です.私も初心に戻ることができました.確かにエコーは診断で決定的な役割を担う場合もありますが,あくまで正しい診断をするためのツールです.つまり,問診,診察,各種検査にエコー検査を加味して総合的に診断することが重要です.身体診察とエコー検査のどちらか一方ではだめなのです.両者のスキルアップが子どもの診療にとって必須なのだと思います.
本書にはたくさんの動画が収められています.静止画だけではわかりにくいところも動画を見ると納得できることも多いと思います.筆者には若手が多く,デビュー戦の方もおられるため,不十分な点もあると思いますが,そこは温かく,また厳しい目で見守っていただけたら幸いです.
本書が続者の皆様の身体診察とエコーのスキルアップに役立つことを祈念しています.
2025年4月
JCHO徳山中央病院健康管理センター センター長
内田正志
発刊のことば 内田正志
本書のマエセツ 小野友輔/児玉和彦
執筆者一覧
動画再生方法
Part1 総論 ◆小児における身体診察×エコーの基礎
A 小児の診察における問診のポイント 児玉和彦
B 小児の身体診察のポイント
1.総論 児玉和彦
2.各論 児玉和彦
C 小児の診察におけるエコーの意義 市村 将/小野友輔
D エコー検査とプレパレーション 松平千佳
Part2 各論① ◆小児における身体診察×エコーの活用:正常像と異常所見
A 頭頸部
1.唾液腺 出澤洋人
2.甲状腺 出澤洋人
3.頸部リンパ節 出澤洋人
B 心臓
1.先天性心疾患 林 立申
2.川崎病 林 立申
3.心筋症 林 立申
C 消化管
1.小腸・大腸・胃 弘野浩司
2.虫垂 東間未来
D 腎・尿路系 城戸崇裕
E 副腎 城戸崇裕
F 陰嚢・精巣・精巣上体 貴達俊徳
G 乳腺・子宮・卵巣 出澤洋人
H 股関節 塚越祐太
I 四肢・関節 弘野浩司
J 新生児領域
1.頭部 星野雄介
2.肺 星野雄介
3.腹腔―壊死性腸炎 岡田侑樹
4.その他―産瘤・帽状腱膜下血腫・頭血腫 岡田侑樹
Part3 各論② ◆小児におけるエコーガイド下整復とその評価の実際
A 腸重積の整復とその評価法 東間未来
B 肘内障の整復とその評価法 小野友輔
Part4 ケース紹介 ◆小児における身体診察×エコーの実際例
A 症例1 不機嫌が持続したため腸重積を疑ってエコー検査をしたが,実際には鼠経ヘルニア嵌頓であったケース 小野友輔
B 症例2 右膝化膿性関節炎が疑われ右膝関節のMRIが施行されたケース 弘野浩司
C 症例3 前医からの情報による診断エラー未遂.腎前性から腎後性腎不全に変更したケース 城戸崇裕
D 症例4 肥厚性幽門狭窄症疑いで紹介され,腹部エコーをきっかけに発作性上室頻拍を診断したケース 出澤洋人
D 症例5 エコーで明らかな異常所見を認め,実施中の追加問診が診断確定の決定打となったケース 内田正志
Q&A
Dr.弘野のQ&Aコーナー 弘野浩司
索引
編集後記 吉元和彦