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雑誌「小児科診療」2025年 Vol.88 No.7 発生から考えてみよう!早産児診療の諸問題とその対応
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バックナンバー
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掲載論文
序 文 /北東 功
Ⅰ.早産児に関する知識のまとめ
発生学的な生育・成育限界 /中西秀彦
早産児の環境 /三輪雅之
母子関係の“発生”と早産の母の感情 /鴇田夏子
Ⅱ.急性期の諸問題
呼吸窮迫症候群・慢性肺疾患 /廣畑晃司・他
早産児無呼吸発作 /有光威志・他
動脈管開存症・循環不全 /豊島勝昭
頭蓋内出血・脳室周囲白質軟化症 /市村信太郎・他
腎機能異常 /濱田 陸・他
feeding intolerance・壊死性腸炎・特発性小腸穿孔 /宮沢篤生
早産児代謝性骨疾患 /友滝清一
未熟児貧血 /小町詩織・他
感染免疫 /高田英俊
未熟児網膜症 /中山百合
Ⅲ.遠隔期の諸問題
成長とDOHaD /東海林宏道
注意欠如多動症,限局性学習症,自閉スペクトラム症 /島内智子・他
原 著
迅速診断した小児パレコウイルス感染症の臨床的特徴 /澁谷泰紀・他
症例報告
ミカンによる食物依存性運動誘発アナフィラキシーの1 例 /山本櫻子・他
Ⅰ.早産児に関する知識のまとめ
発生学的な生育・成育限界 /中西秀彦
早産児の環境 /三輪雅之
母子関係の“発生”と早産の母の感情 /鴇田夏子
Ⅱ.急性期の諸問題
呼吸窮迫症候群・慢性肺疾患 /廣畑晃司・他
早産児無呼吸発作 /有光威志・他
動脈管開存症・循環不全 /豊島勝昭
頭蓋内出血・脳室周囲白質軟化症 /市村信太郎・他
腎機能異常 /濱田 陸・他
feeding intolerance・壊死性腸炎・特発性小腸穿孔 /宮沢篤生
早産児代謝性骨疾患 /友滝清一
未熟児貧血 /小町詩織・他
感染免疫 /高田英俊
未熟児網膜症 /中山百合
Ⅲ.遠隔期の諸問題
成長とDOHaD /東海林宏道
注意欠如多動症,限局性学習症,自閉スペクトラム症 /島内智子・他
原 著
迅速診断した小児パレコウイルス感染症の臨床的特徴 /澁谷泰紀・他
症例報告
ミカンによる食物依存性運動誘発アナフィラキシーの1 例 /山本櫻子・他
ねらい
北東 功 /聖マリアンナ医科大学新生児科
早産児診療における数々の課題-呼吸・循環・感染・栄養・神経発達・家族支援-は,しばしば「未熟性」ということばで語られてきました.しかしながら,何がどのように「未熟」であり,それがどのような経緯を経て出生時に顕在化するのかを深く理解するには,出生時点の病態だけでなく,その根底にある「発生」という視点が非常に重要です.
ヒトの器官や機能は,胎内環境という特異な条件下で,精緻なタイミングと制御機構によって発達していきます.肺のサーファクタント産生,腎の濃縮能の獲得,腸管免疫系の成熟,脳内ネットワークの形成など,どれ1つとして単線的な成長ではなく,複雑な分化と統合の過程をたどります.早産児の課題とは,これら発生の過程が途中で断ち切られてしまうことによって生じるものといえるでしょう.
また,発生から考えるという視点は,生物学的器官の成熟にとどまりません.母と子の関係性の構築もまた,胎児期から連続したプロセスであり,出産後からはじまるものではありません.胎児期における母体と胎児の相互作用は,ホルモン,神経系,免疫系の影響といった生理的な結びつきを背景として,母は胎動を感じることで,胎児は母の声を感じることなどから心理的な結びつきが始まり,出生後の愛着形成へとつながってゆきます.早産という出来事は,この愛着形成のプロセスにも物理的・時間的な大きなずれを生じさせ,結果として母子間の関係構築に困難をもたらすことがあります.
本特集号では,このような「身体とこころの発生の連続性」に着目し,早産児診療における様々な側面を多角的に再考しました.各分野の第一線で活躍される先生方に,呼吸・循環・感染・神経発達・栄養管理といったNICU入院中にしばしば問題となる医学的テーマに加え,母子関係,家族支援,倫理的課題といった社会的問題,幼児・学童期以降でみとめられる遠隔期の問題について「発生」と関連づけてご執筆いただきました.
本号の特集を通じて,私たちはヒトの発生とその中断がもたらす影響を改めて捉え直し,早産児診療を単なる「未熟児医療」としてではなく,生後の発生を支える包括的な医療として考える契機となれば幸いです.そして医療者は,単に病態の解決を行う存在ではなく,早産児が産まれたあとも「正常な発生のプロセス」に復帰できるよう支援する水先案内人であるという認識を深めていただければと願っています.
本特集が,読者の皆さまにとって,新たな視座を提供し,日々の臨床と研究に役立つ一助となることを心より願っております.
早産児診療における数々の課題-呼吸・循環・感染・栄養・神経発達・家族支援-は,しばしば「未熟性」ということばで語られてきました.しかしながら,何がどのように「未熟」であり,それがどのような経緯を経て出生時に顕在化するのかを深く理解するには,出生時点の病態だけでなく,その根底にある「発生」という視点が非常に重要です.
ヒトの器官や機能は,胎内環境という特異な条件下で,精緻なタイミングと制御機構によって発達していきます.肺のサーファクタント産生,腎の濃縮能の獲得,腸管免疫系の成熟,脳内ネットワークの形成など,どれ1つとして単線的な成長ではなく,複雑な分化と統合の過程をたどります.早産児の課題とは,これら発生の過程が途中で断ち切られてしまうことによって生じるものといえるでしょう.
また,発生から考えるという視点は,生物学的器官の成熟にとどまりません.母と子の関係性の構築もまた,胎児期から連続したプロセスであり,出産後からはじまるものではありません.胎児期における母体と胎児の相互作用は,ホルモン,神経系,免疫系の影響といった生理的な結びつきを背景として,母は胎動を感じることで,胎児は母の声を感じることなどから心理的な結びつきが始まり,出生後の愛着形成へとつながってゆきます.早産という出来事は,この愛着形成のプロセスにも物理的・時間的な大きなずれを生じさせ,結果として母子間の関係構築に困難をもたらすことがあります.
本特集号では,このような「身体とこころの発生の連続性」に着目し,早産児診療における様々な側面を多角的に再考しました.各分野の第一線で活躍される先生方に,呼吸・循環・感染・神経発達・栄養管理といったNICU入院中にしばしば問題となる医学的テーマに加え,母子関係,家族支援,倫理的課題といった社会的問題,幼児・学童期以降でみとめられる遠隔期の問題について「発生」と関連づけてご執筆いただきました.
本号の特集を通じて,私たちはヒトの発生とその中断がもたらす影響を改めて捉え直し,早産児診療を単なる「未熟児医療」としてではなく,生後の発生を支える包括的な医療として考える契機となれば幸いです.そして医療者は,単に病態の解決を行う存在ではなく,早産児が産まれたあとも「正常な発生のプロセス」に復帰できるよう支援する水先案内人であるという認識を深めていただければと願っています.
本特集が,読者の皆さまにとって,新たな視座を提供し,日々の臨床と研究に役立つ一助となることを心より願っております.