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雑誌「診断と治療」2025年 Vol.113 No.12 日常診療で出会ったら? アルコール・薬物・ギャンブル・ゲーム依存を知る
- 定価:
- 2,970円(本体価格 2,700円+税)
- 在庫:
- 在庫無し
バックナンバー
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掲載論文
ねらい 樋口 進
物質依存
物質依存とは―その概念と疫学― 松本俊彦
物質依存の診断 角南隆史,杠 岳文
物質依存の治療 澤山 透
アルコール依存の症状と治療―一般内科と専門医療機関での対応― 木村 充
アルコール依存の身体合併症 堀江義則
アルコール健康障害における内科と精神科の連携 手塚幸雄
薬物依存の症状と治療 成瀬暢也
処方薬依存の症状と治療 平野祥子,小林桜児
行動嗜癖
行動嗜癖の概念と疫学 松下幸生
嗜癖行動症の診断と治療 佐久間寛之
ギャンブル障害の症状と治療 朝倉崇文
ゲーム・ネット依存の症状と治療 松﨑尊信
その他の行動嗜癖について―フードアディクションー 橋本 望
トピックス
依存症治療におけるハームリダクション 白坂知彦,常田深雪,齋藤利和
アディクションのある人の家族の支援 森田展彰
内科医も知って得する社会資源 加賀谷有行,下原唯千夏
アディクションと発達障害 館農 勝
ネット依存のデジタルデトックス治療 西村光太郎
臨床例
胸壁膿瘍を合併した化膿性脊椎炎の1例 荊尾木綿,杉本 匠,瀬戸友利恵,上田幹雄
連載
何だろ? ちょっとエコーに聞いてみる?
心窩部痛の原因は? 畠 二郎
弁護士が答えます! 法律相談クリニック
厚生局の個別指導ってどんなもの? 太田善大
物質依存
物質依存とは―その概念と疫学― 松本俊彦
物質依存の診断 角南隆史,杠 岳文
物質依存の治療 澤山 透
アルコール依存の症状と治療―一般内科と専門医療機関での対応― 木村 充
アルコール依存の身体合併症 堀江義則
アルコール健康障害における内科と精神科の連携 手塚幸雄
薬物依存の症状と治療 成瀬暢也
処方薬依存の症状と治療 平野祥子,小林桜児
行動嗜癖
行動嗜癖の概念と疫学 松下幸生
嗜癖行動症の診断と治療 佐久間寛之
ギャンブル障害の症状と治療 朝倉崇文
ゲーム・ネット依存の症状と治療 松﨑尊信
その他の行動嗜癖について―フードアディクションー 橋本 望
トピックス
依存症治療におけるハームリダクション 白坂知彦,常田深雪,齋藤利和
アディクションのある人の家族の支援 森田展彰
内科医も知って得する社会資源 加賀谷有行,下原唯千夏
アディクションと発達障害 館農 勝
ネット依存のデジタルデトックス治療 西村光太郎
臨床例
胸壁膿瘍を合併した化膿性脊椎炎の1例 荊尾木綿,杉本 匠,瀬戸友利恵,上田幹雄
連載
何だろ? ちょっとエコーに聞いてみる?
心窩部痛の原因は? 畠 二郎
弁護士が答えます! 法律相談クリニック
厚生局の個別指導ってどんなもの? 太田善大
ねらい
日常の臨床で遭遇する様々な疾患や健康問題の背後に依存が見え隠れすることがよくある.世界保健機関(WHO)は,アルコールは200以上もの疾病や典型的な外傷の原因となっていると述べている.本特集でも,大量飲酒による身体疾患について取り上げている.当然のことであるが,身体疾患だけでなく精神疾患の背後に依存が存在することも多い.一般にうつ病患者は高率にアルコール依存を合併しており,うつ病とアルコール依存の重症度に高い相関が見られる.これらの健康問題の改善のためには,断酒または減酒が必要である.しかし,多くの患者は,健康問題の治療には積極的だが,その原因になっている依存の治療には消極的である.一般に,ある疾患の治療を受けなければならない人のなかで,その治療を受けていない人の数や割合を治療ギャップと呼ぶ.依存はすべての精神疾患で最も治療ギャップが大きいといわれている.この治療ギャップを小さくするために,内科等の一般科から患者を専門医療機関につなげる,いわゆる連携の促進が求められてきている.しかし,様々な問題があり,現実的にはなかなか進んでいない.
依存の分野では最近大きな変化があった.従来,依存といえばアルコールや薬物などの物質依存に限定されていた.しかし,ここ10年位の間に,ギャンブルやゲームなどといった,いわゆる行動嗜癖が依存の仲間入りをし,その領域が大幅に拡大した.行動嗜癖は物質を摂取するわけではないので,身体疾患を引き起こすことはほぼない.しかし,ギャンブルによる借金や家庭不和などで,うつ病や自殺企図などがよく見られる.またネット・ゲーム依存には,睡眠障害や引きこもりなどが高率に合併する.臨床場面では,これらのメンタルヘルス問題の背後にある行動嗜癖の存在を疑って適切な対応が求められる.
本特集は物質依存や行動嗜癖にターゲットを当てて,その疾患の病因,症状,診断,治療について説明している.内科等の一般科の先生方に,ご理解いただけるようにわかりやすく記載されている.治療ギャップの狭小化を踏まえ,依存の軽症例については,各科の先生に対応のチャレンジをお願いしたい.しかし,治療が進まない場合や重症のケースについては,専門医療機関への紹介が適切である.その辺りの方法等については,それぞれの総説を参照されたい.また,依存の治療と回復支援は医療だけでは難しい.そこには,家族への支援,自助グループやその他の社会資源の活用が必要となる.一般科の先生はこのような知識や,具体的に誰にどのような支援を依頼するのがよいかなどはご存じないはずである.本特集では,このような情報も盛り込んである.本特集が日常臨床で遭遇する様々な依存やその関連問題の適切な対応に貢献できることを願う.
最後に用語について簡単に説明する.既述の通り,依存の概念や用語(特に日本語訳)が最近大きく変わった.臨床や研究で使用されている依存にかかわる診断基準などには,WHOによる国際疾病分類(ICD)と米国精神医学会による『精神疾患の診断・統計マニュアル』(DSM)がある.ICDは現行のICD-10からICD-11の移行時期にある.DSMは,その第5版(DSM-5)から,DSM-5-TR(text revision)に移行したところである.ICDでは一貫して依存の概念を堅持しており,ICD-10では依存症,ICD-11では依存という用語が使われている.一方,DSMでは,DSM-5から依存ではなく使用障害(use disorder)という概念と用語に切り替わった.さらに,DSM-5-TRやICD-11から,このdisorderの翻訳が障害から症に変わった.また,新たに加わったgambling disorder,gaming disorderは,それぞれ,ギャンブル行動症,ゲーム行動症と翻訳されている.本特集のそれぞれの総説を読む際には,これらの情報を踏まえて理解されたい.なお,本特集全体では,物質依存と行動嗜癖を合わせて依存と呼んでいる.一般内科の先生方に最もわかりやすい用語と考えたからである.
国立病院機構久里浜医療センター
樋口 進
依存の分野では最近大きな変化があった.従来,依存といえばアルコールや薬物などの物質依存に限定されていた.しかし,ここ10年位の間に,ギャンブルやゲームなどといった,いわゆる行動嗜癖が依存の仲間入りをし,その領域が大幅に拡大した.行動嗜癖は物質を摂取するわけではないので,身体疾患を引き起こすことはほぼない.しかし,ギャンブルによる借金や家庭不和などで,うつ病や自殺企図などがよく見られる.またネット・ゲーム依存には,睡眠障害や引きこもりなどが高率に合併する.臨床場面では,これらのメンタルヘルス問題の背後にある行動嗜癖の存在を疑って適切な対応が求められる.
本特集は物質依存や行動嗜癖にターゲットを当てて,その疾患の病因,症状,診断,治療について説明している.内科等の一般科の先生方に,ご理解いただけるようにわかりやすく記載されている.治療ギャップの狭小化を踏まえ,依存の軽症例については,各科の先生に対応のチャレンジをお願いしたい.しかし,治療が進まない場合や重症のケースについては,専門医療機関への紹介が適切である.その辺りの方法等については,それぞれの総説を参照されたい.また,依存の治療と回復支援は医療だけでは難しい.そこには,家族への支援,自助グループやその他の社会資源の活用が必要となる.一般科の先生はこのような知識や,具体的に誰にどのような支援を依頼するのがよいかなどはご存じないはずである.本特集では,このような情報も盛り込んである.本特集が日常臨床で遭遇する様々な依存やその関連問題の適切な対応に貢献できることを願う.
最後に用語について簡単に説明する.既述の通り,依存の概念や用語(特に日本語訳)が最近大きく変わった.臨床や研究で使用されている依存にかかわる診断基準などには,WHOによる国際疾病分類(ICD)と米国精神医学会による『精神疾患の診断・統計マニュアル』(DSM)がある.ICDは現行のICD-10からICD-11の移行時期にある.DSMは,その第5版(DSM-5)から,DSM-5-TR(text revision)に移行したところである.ICDでは一貫して依存の概念を堅持しており,ICD-10では依存症,ICD-11では依存という用語が使われている.一方,DSMでは,DSM-5から依存ではなく使用障害(use disorder)という概念と用語に切り替わった.さらに,DSM-5-TRやICD-11から,このdisorderの翻訳が障害から症に変わった.また,新たに加わったgambling disorder,gaming disorderは,それぞれ,ギャンブル行動症,ゲーム行動症と翻訳されている.本特集のそれぞれの総説を読む際には,これらの情報を踏まえて理解されたい.なお,本特集全体では,物質依存と行動嗜癖を合わせて依存と呼んでいる.一般内科の先生方に最もわかりやすい用語と考えたからである.
国立病院機構久里浜医療センター
樋口 進