株式会社 診断と治療社

女性内分泌クリニカルクエスチョン100 改訂第2版

女性の生涯にわたる健康や女性特有の疾患を理解するうえで欠かせない「女性内分泌の知識」.そんな女性内分泌について,臨床現場でよく問題になるポイントや治療方針を考えるうえで欠かせない知識を中心にQ&A方式でまとめました.改訂第2版は頸管熟化剤,経口避妊薬,経口GnRHアンタゴニスト,サプリメントなどCQを10個追加し,内容がさらに充実しました.研修医,専攻医は必読の1冊です.
  • 社会福祉法人恩賜財団母子愛育会 総合母子保健センター愛育病院 院長 百枝 幹雄編集
  • 帝京平成大学 健康医療スポーツ学部 看護学科 教授 綾部 琢哉 執筆者
  • 埼玉医科大学医学部総合医療センター 産婦人科 教授 髙井 泰執筆者
定価:
6,600円(本体価格 6,000円+税)

クリニカルクエスチョン

発行日:
2025/11/07
ISBN:
9784787827463
頁:
328頁
判型:
B5
製本:
並製
在庫:
在庫あり
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序文

改訂第2版の序

 女性の生涯にわたる健康を支えるうえで,女性内分泌の知識は欠かせない要素です.月経,妊娠,出産,授乳といった女性特有の生理機能だけでなく,思春期や更年期,高年期に起きるさまざまな身体のトラブルにも,内分泌的なアプローチは有効となります.この分野の進歩は著しく,ホルモン製剤の開発も日々進んでいます.
 このような背景の下,2016年に『基礎からわかる女性内分泌』(診断と治療社)を,さらに2017年に『女性内分泌クリニカルクエスチョン90』(診断と治療社)を上梓しました.私としては,前者を教科書,後者を問題集のようなつもりで編集いたしました.当時は女性内分泌に特化した体系的な教科書は少なく,またそれぞれの分野の第一人者に執筆を依頼して最新情報を提供したこともあり,研修医から専門医まで,さらには内科の先生にも多くの方に読んでいただきました.しかし,やはり初版から10年近くが経ちますと,新しい情報を加える必要が出てきたため,今回,新たに10個のクリニカルクエスチョン(CQ)を追加し,『女性内分泌クリニカルクエスチョン100』として改訂第2版をお届けします.
 今回の改訂では,一部の項目は訂正にとどまっていますが,大幅に書き直した項目も多くあります.初版の出版後に新しく登場した薬剤,たとえば頸管熟化剤,経口妊娠中絶薬,経口GnRHアンタゴニストなどに関するCQも追加しました.また,女性医療の分野で広く使われているサプリメントについても,ホルモンに似た作用をもつものに焦点を当て,新しい章を設けています.
 現代はインターネットで多くの情報が得られる時代ですが,この分野の第一人者による解説を網羅的に読める本書のようなテキストには勝るものがないと確信しています.もちろん,本書の内容は,編集者である私が日々の診療で疑問に思ったことを中心に選んだものなので,読者の皆様には,まだまだ多くの疑問が浮かぶかもしれません.今後も新しい薬剤や治療法が開発されれば,数年後にはさらなる改訂が必要になるでしょう.しかし,初版と同じ言葉を繰り返しますが,少なくとも現時点では,皆様が安心して日々の臨床に役立てていただける内容になっていると確信しています.

2025年10月

恩賜財団母子愛育会 総合母子保健センター愛育病院
百枝 幹雄





初版の序

 様々な生理機能の中で内分泌系ほど性差の著しい機能はないでしょう.もちろん,内分泌系の多くは男女に共通するものですが,生殖あるいはそれにかかわる臓器においては大きな相違があります.そのうちの女性特有の内分泌疾患を扱う産婦人科医にとって,生殖,周産期,腫瘍,女性医学の4領域のすべてにおいて,内分泌学の知識,診療技術は必須です.そこで,前書『基礎からわかる女性内分泌』では,女性の内分泌について基礎から臨床まで系統的にまとめました.本書はその系統的な基礎知識を実践的に発展させるべく,女性内分泌に関して臨床の場でよく問題になるポイントや,治療方針を考える基盤となる知識を中心に,Q & A方式でまとめました.『基礎からわかる女性内分泌』とは,ちょうど教科書と問題集のような関係ともいえるでしょう.
 本書のクエスチョンは必ずしも網羅的ではなく,各疾患の疫学や診断よりも治療や治療の背景にある病態が中心です.また,臨床現場で女性を診療しているすべての医師を対象としていますので,アンサーはできるだけ実践的なものとしました.そのあとに続く解説で,アンサーの背景やエビデンスを詳述していますので,Q & Aを中心に関連する広い知識を獲得できるようになっています.
 本書の使い方として,日常診療において疑問が生じた時点で関連する項目を参照していただくこともできますし,最初から順に,あるいは興味のある項目を順不同に読んでいただくこともできます.しかし,せっかくのQ & A形式ですから,アンサーを見る前にご自身のアンサーを考えた上でアンサーと解説を読まれることをお勧めします.それにより,理解がより深いものになると思います.
 その際,読者のアンサーと本書の執筆者のアンサーが異なる場合もあるでしょう.臨床医学において,特に本書のように実践的な内容については,アンサーが一つではなく,また時代とともに変わっていくことは当然のことです.しかし,本書では,それぞれの項目に造詣の深い内分泌の専門家が,最新の情報,エビデンス,ガイドラインに基づいて解説しています.将来,新たなクエスチョンも現れ,アンサーの改訂も必要になると思いますが,少なくとも現時点では,皆様が安心して臨床に生かしていただける内容であると確信しています.

2017年4月

聖路加国際大学聖路加国際病院女性総合診療部
百枝 幹雄

目次

改訂第2版の序
初版の序
執筆者一覧
略語一覧

Chapter1 思春期
 CQ1 思春期発来のメカニズムは?
 CQ2 早発思春期の治療は必要か?
 CQ3 遅発思春期の治療は必要か?

Chapter2 原発性無月経
 CQ4 原発性無月経となる視床下部や下垂体の異常にはどのような疾患があるか?
 CQ5 性分化疾患の社会的性別はどのように決定するか?
 CQ6 副腎性器症候群(AGS)は何歳からどのように治療するか?
 CQ7 アンドロゲン不応症候群(AIS)の性腺摘出は必要か?
 CQ8 Turner症候群のホルモン補充療法(HRT)は何歳からどのように行うか?
 CQ9 純粋型性腺形成不全症(CGD)の性腺摘出は必要か?

Chapter3 続発性無月経
 CQ10 続発性無月経に対するホルモン検査の手順と解釈は?
 CQ11 挙児希望のない中枢性無月経はどのように治療するか?
 CQ12 体重減少性無月経を治療する際の留意点は何か?
 CQ13 神経性やせ症(AN)は何科で診療すべきか?
 CQ14 女性アスリートの3主徴(FAT)とは?
 CQ15 Sheehan症候群はどのように治療するか?
 CQ16 Chiari-Frommel症候群やArgonz-del Castillo症候群の治療法は?
 CQ17 Forbes-Albright症候群に手術は必要か?
 CQ18 高プロラクチン血症をきたす薬剤は?
 CQ19 甲状腺機能異常ではなぜ月経異常をきたすのか?

Chapter4 多囊胞性卵巣症候群(PCOS)
 CQ20 多囊胞性卵巣症候群(PCOS)と耐糖能異常の関係は?
 CQ21 挙児希望のない多囊胞性卵巣症候群(PCOS)の治療法は?
 CQ22 挙児希望のある多囊胞性卵巣症候群(PCOS)の治療法は?
 CQ23 なぜ腹腔鏡下卵巣開孔術(LOD)は多囊胞性卵巣症候群(PCOS)に効くのか?
 CQ24 多囊胞性卵巣症候群(PCOS)のもつ健康リスクは?

Chapter5 排卵障害
 CQ25 挙児希望のない希発月経の治療法は?
 CQ26 卵巣予備能評価における血中FSHや血中AMHの測定の意義と限界は?
 CQ27 排卵予知としての尿中黄体化ホルモン(LH)測定を行う際の効果的な方法とは?
 CQ28 クロミフェン(クロミッド🄬)による妊娠率を高めるには?
 CQ29 排卵誘発でのレトロゾール(フェマーラ🄬)とクロミフェン(クロミッド🄬)の使い分けは?
 CQ30 排卵のある不妊患者にゴナドトロピン療法は有効か?
 CQ31 hMG製剤とrFSH製剤の使い分けは?
 CQ32 卵巣過剰刺激症候群(OHSS)を防ぐ排卵誘発法は?
 CQ33 生殖補助医療(ART)における調節卵巣刺激法(COS)の使い分けは?
 CQ34 生殖補助医療(ART)における低卵巣刺激法(MOS)はどのように行うか?

Chapter6 黄体機能不全
 CQ35 挙児希望のない頻発月経の治療法は?
 CQ36 一般不妊治療における黄体機能不全の治療法は?
 CQ37 生殖補助医療(ART)における効果的な黄体ホルモン補充療法は?

Chapter7 早発卵巣不全(POI)
 CQ38 卵巣機能に影響する抗がん薬は?
 CQ39 早発卵巣不全(POI)に対する排卵誘発法を成功させるには?
 CQ40 早発卵巣不全(POI)に対するホルモン補充療法(HRT)はどのように行うか

Chapter8 異常子宮出血
 CQ41 異常子宮出血のFIGO分類とは?
 CQ42 思春期の機能性異常子宮出血の治療法は?
 CQ43 更年期の機能性異常子宮出血の治療法は?

Chapter9 月経随伴症状
 CQ44 月経前症候群(PMS)にホルモン療法は有効か?
 CQ45 月経前症候群(PMS)のホルモン療法以外の治療法は?
 CQ46 月経時片頭痛の治療法は?
 CQ47 挙児希望のない機能性月経困難症の治療法は?
 CQ48 挙児希望のある機能性月経困難症の治療法は?
 CQ49 月経移動の方法と留意点は?

Chapter10 子宮内膜症
 CQ50 現時点ではまだ挙児希望のない子宮内膜症の治療は手術か薬物療法か?
 CQ51 挙児希望のある卵巣子宮内膜症性囊胞は手術すべきか?
 CQ52 痛みのある深部子宮内膜症の治療は手術か薬物療法か?
 CQ53 稀少部位子宮内膜症の治療は手術か薬物療法か?

Chapter11 子宮筋腫・子宮腺筋症
 CQ54 現時点ではまだ挙児希望のない子宮筋腫の治療法は?
 CQ55 挙児希望のある子宮筋腫ではどのように手術するか?
 CQ56 現時点ではまだ挙児希望のない子宮腺筋症の治療法は?
 CQ57 挙児希望のある子宮腺筋症ではどのような場合に手術するか?

Chapter12 妊娠・分娩・産褥
 CQ58 流産予防にプロゲスチンやhCGは有効か?
 CQ59 早産予防にプロゲステロンは有効か?
 CQ60 ジノプロストン腟内留置用製剤(CR-PGE2)による頸管熟化のコツは?
 CQ61 ジノプロスト(PGF2α)による陣痛誘発・促進のコツは?
 CQ62 オキシトシンによる分娩誘発・促進のコツは?
 CQ63 産褥の乳汁分泌抑制はどのように行うか?

Chapter13 避妊
 CQ64 経口避妊薬(OC)の使い分けは?
 CQ65 経口避妊薬(OC)を勧めるコツや服用を継続させるコツは?
 CQ66 緊急避妊薬(ECP)の使い方は?
 CQ67 まだ日本に導入されていない避妊法にはどのようなものがあるか?
 CQ68 経口中絶薬の作用機序と使い方は?

Chapter14 更年期障害
 CQ69 更年期障害に対するホルモン補充療法(HRT)の使い分けは?
 CQ70 ホルモン補充療法(HRT)以外の更年期障害の治療法は?
 CQ71 ホルモン補充療法(HRT)の禁忌・慎重投与は?
 CQ72 ホルモン補充療法(HRT)は何歳まで続けてよいか?

Chapter15 閉経後のヘルスケア
 CQ73 閉経後の骨粗鬆症予防にホルモン補充療法(HRT)は有効か?
 CQ74 閉経後の脂質異常症予防にホルモン補充療法(HRT)は有効か?
 CQ75 閉経後の心疾患の予防にホルモン補充療法(HRT)は有効か?
 CQ76 閉経後の糖尿病の予防にホルモン補充療法(HRT)は有効か?
 CQ77 Alzheimer病(AD)の予防にホルモン補充療法(HRT)は有効か?
 CQ78 尿失禁(UI)にホルモン補充療法(HRT)は有効か?
 CQ79 閉経関連尿路性器症候群(GSM)の治療法は?

Chapter16 子宮内膜増殖症・子宮内膜癌
 CQ80 子宮内膜増殖症のホルモン療法の方法は?
 CQ81 子宮内膜癌の発生や進行にエストロゲンはどう関わるか?
 CQ82 妊孕性温存希望の子宮内膜異型増殖症・子宮体癌に対するホルモン療法の方法は?

Chapter17 乳癌
 CQ83 乳癌に対するホルモン療法の使い分けは?
 CQ84 タモキシフェン(ノルバデックス🄬)の子宮内膜に対する副作用とその対策は?
 CQ85 BRCA1/2病的バリアント保持者女性に対するリスク低減卵管卵巣摘出術(RRSO)の効果は?

Chapter18 ホルモン製剤
 CQ86 エストロゲン製剤の種類や投与経路の違いは?
 CQ87 プロゲスチン製剤の世代による違いは?
 CQ88 経口避妊薬(OC)・低用量エストロゲン・プロゲスチン配合薬(LEP)の周期投与と連続投与の違いは?
 CQ89 経口避妊薬(OC)・低用量エストロゲン・プロゲスチン配合薬(LEP)による動静脈血栓塞栓症の対策は?
 CQ90 経口避妊薬(OC)・低用量エストロゲン・プロゲスチン配合薬(LEP)は何歳から服用開始し,何歳まで服用可能か?
 CQ91 プロゲスチン療法に伴う異常子宮出血の対策は?
 CQ92 レボノルゲストレル放出子宮内システム(LNG-IUS)装着のコツは?
 CQ93 経口GnRHアンタゴニストの使い方のコツは?
 CQ94 GnRHアナログ療法に伴う低エストロゲン症状の対策は?
 CQ95 選択的エストロゲン受容体修飾薬(SERM)の種類と有効性は?
 CQ96 選択的プロゲステロン受容体修飾薬(SPRM)の種類と有効性は?

Chapter19 ホルモン様サプリメント
 CQ97 エクオールの作用は?
 CQ98 レスベラトロールの作用は?
 CQ99 ビタミンDの作用は?
 CQ100 メラトニンの作用は?

索 引

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