株式会社 診断と治療社

早期の発見と適切な支援につなげる! 小児の難聴 【7月上旬発売予定】

難聴を早期に発見し,適切な支援・療育につなげるための羅針盤が誕生!見やすくわかりやすいオールカラーで,難聴の定義から検査,各疾患,支援機器に至るまで,網羅的,実践的な内容をていねいに解説しているうえ,療育・教育現場や福祉制度の解説も充実.興味深いコラム,難聴児の保護者や難聴当事者のエッセイ,実践的なQ&Aまで掲載され,盛り沢山な内容となっている.小児難聴にかかわるすべての専門家に必ず役立つ一冊.
  • 聖マリアンナ医科大学耳鼻咽喉科 小森 学編集
定価:
6,380円(本体価格 5,800円+税)
発行日:
2026/07/02
ISBN:
9784787827562
判型:
B5
製本:
並製
在庫:
在庫無し

序文

 近年,小児難聴の診療環境は目覚ましい発展を遂げています.新生児聴覚スクリーニングによる早期発見と適切な療育介入の開始が標準化され,遺伝学的検査の進歩により難聴の背景にある要因が次々と解明されるようになりました.先天性サイトメガロウイルス感染症等の要因への対応も含め,かつては「原因不明」とされていた難聴に対して,明確な根拠に基づいた個別化医療を提供できる時代を迎えています.また,補聴器の性能向上だけでなく,人工内耳の早期適応拡大,EASの普及に加え,本年(2026年)春には,一側性難聴に対する人工内耳の適応拡大や新たな骨導インプラントの保険適用等,子どもたちが豊かな音の世界へアクセスするための選択肢も多様化しています.
 しかし,どれほど技術が高度化しようとも,小児難聴の臨床において私たちが決して見失ってはならない本質があります.それは,子どもは「小さな大人」ではなく,1人の主体的な人間であるということです.私自身『インフォームド・アセント』の概念を非常に大切にしています.痛みを伴う処置や不安を抱かせる検査を行う際,私たちは決して子どもに対して「痛くないよ」と嘘をつくのではなく,これから何が起きるのか,なぜそれが必要なのかを,子どもの発達段階に応じた言葉で真摯に伝え,子ども自身の納得と同意を引き出すことが必要です.耳鼻咽喉科の数多い疾患の中でも特に長く付き合っていく必要がある小児難聴では,この誠実な向き合い方こそが,子どもとの間に揺るぎない信頼関係を築き,共に歩むために最も必要なものであると考えます.
 また,外科的治療を担う耳鼻咽喉科医としての立場からいえば,子どもたちの未来をより確かなものにするためには,次世代を担う若手医師への教育も不可欠です.手術手技の言語化や,適切な指導下での実践を通じて,高度な医療技術を絶え間なく伝承していくこともまた,私たち医療者に課せられた重大な責務であると確信しています.
 本書は,こうした時代の変化と,変わらぬ診療の理念を踏まえ,小児難聴にかかわるすべての専門家,そして保護者の方々にとっての「羅針盤」となるべく企画されました.他の成書との違いとして,小児難聴の診療においては先天性難聴だけではなく中耳疾患に対する理解も非常に重要であることから,広く難聴を引き起こす疾患全般の知識を網羅するべく編成しております.難聴の定義や聴覚の発達に始まり,心理発達検査を含む各種検査,中耳炎や先天性真珠腫,内耳奇形といった疾患別の病態生理とアプローチ,さらには最新の支援機器のフィッティングまで,網羅的かつ実践的な内容を収載しています.さらに本書の大きな特徴は,医療の枠組みを越え,教育現場や療育施設からの視点,福祉制度の解説を充実させた点,そして何より,一側性難聴や人工内耳ユーザーの当事者,難聴児を育てる保護者の方々のエッセイを収録した点にあります.
 医療は病院の中で完結するものではありません.子どもたちが社会の中で自分らしく生きていくためには,医師,言語聴覚士,看護師,心理士,教育・福祉関係者,そしてご家族が,垣根を越えて連携する「多職種チーム」の存在が不可欠です.
 ご多忙の折,本企画の趣旨に深くご賛同いただき,それぞれの分野で第一線の臨床・研究に携わる執筆陣の皆様より,熱意あふれる素晴らしい御原稿をお寄せいただきましたことに,心より御礼申し上げます.とりわけ,本書の編集において多大なるご尽力を賜りました(株)診断と治療社の小林雅子氏に心より厚く御礼申し上げます.本書が,小児難聴の専門的な「成書」として日々の臨床や教育の現場で広く活用され,ひいては難聴をもつすべての子どもたちの輝かしい未来を切り拓く一助となることを,切に願っております.

2026年5月
聖マリアンナ医科大学耳鼻咽喉科学教室 主任教授
小森 学

目次

序文  小森 学
執筆者一覧

Ⅰ 難聴の定義・分類
 A 聴覚の発達  小森 学
 B 難聴の定義  大石直樹
 C 難聴の分類:伝音難聴・感音難聴・混合性難聴  梶原理子

Ⅱ 聴覚検査と言語発達検査
 A 新生児聴覚スクリーニング検査  白井杏湖
 B 精密聴力検査  松田悠佑
 C 心理発達検査  近藤由以子
 D 遺伝学的検査
  1 先天性難聴遺伝子検査  西尾信哉
  2 遺伝カウンセリングの実際  原田佳奈

Ⅲ 乳児期にみられる難聴
 A 先天性難聴
  1 遺伝性難聴(非症候群性)  工  穣
  2 先天性サイトメガロウイルス感染症  守本倫子
  3 ANSD  本藏陽平
  4 症候群性難聴  荒井康裕
 B 形態異常
  1 内耳奇形  樫尾明憲
  2 小耳症  彦坂 信
  3 外耳道閉鎖症  伊藤 吏

Ⅳ 幼児期にみられる難聴
 A 遅発性/進行性難聴
  1 ウイルス性難聴  土橋奈々
  2 若年発症型両側性感音難聴  吉村豪兼
 B 中耳炎  森田由香

Ⅴ 学齢期にみられる難聴
 A 機能性難聴  阪本浩一
 B 聴覚過敏  阪本浩一
 C 聞き取り困難症/聴覚情報処理障害(LiD/APD)  阪本浩一

Ⅵ 聴覚支援機器
 A 補聴器
  1 気導補聴器  野田哲平,片岡祐子
  2 骨導補聴器  片岡祐子
  3 軟骨伝導補聴器  片岡祐子
  4 その他の補聴器  片岡祐子
 B 人工内耳  吉田忠雄
 C 人工中耳・骨導インプラント  岩田真治,山田啓之
 D 補聴援助システム  櫻井結華

Ⅶ 難聴児の療育
 A 聾学校の立場から  佐々木 勝
 B 支援施設の立場から:言語獲得の保障とライフステージ別支援  藤吉昭江,福島邦博
 C 福祉制度  石川浩太郎

Ⅷ Note
  1 難聴児の育児について  難聴児の母親・匿名希望
  2 人工内耳児の育児について  人工内耳児の母親・匿名希望
  3 一側性難聴当事者の立場から  岡野由実
  4 わかったふりに隠されたSOS―中等度難聴の医師が伝える,教室の「サイレントな困難」  茂木雅臣
  5 人工内耳当事者の立場から  狩野拓也

Ⅸ 小児の難聴Q&A
医療従事者向け
 Q1 専門医に紹介するタイミングを教えてください  白井杏湖
 Q2 子どもが遺伝性難聴とわかったとき,保護者にはどのように説明しますか?  工  穣
 Q3 「通常学級か難聴特別支援学級か」の選択について相談を受けた際,どのようにアドバイスしますか?  土橋奈々
 Q4 2歳で言葉が出ないのは異常でしょうか?  横山菜悠
 Q5 どのような症状から発達障害を疑うのでしょうか?  近藤由以子
保護者向け
 Q6 診察を受ける前にチェックしておくことはありますか?  梶原理子
 Q7 難聴の子どもとどのようにコミュニケーションをとればよいでしょうか?  荒井康裕
 Q8 補聴器を着ける子どもが保育園・幼稚園・学校に通う際,どのように伝えるべきでしょうか?  松田悠佑
 Q9 難聴の遺伝子検査って受けたほうがいいのでしょうか?  原田佳奈
 Q10 人工内耳はどのメーカーのものがよいのでしょうか?  吉田忠雄
 Q11 補聴器装用を急に嫌がるようになりました.どうしたらよいでしょうか?  片岡祐子
 Q12 耳掃除ってやったほうがいいのでしょうか?  森田由香
 Q13 補聴器を使っていると耳は悪くなりませんか?  片岡祐子
 Q14 リスニング試験の際に補聴器や人工内耳だと難しいのですが,どうしたらよいでしょうか?  石川浩太郎

Column
胎教  横山菜悠
胎児の感覚器の発達  横山菜悠
耳小骨はなぜ3つあるのか:進化が生んだ精密な音響システム  平林源希
風邪で耳が詰まる理由:魚だった頃の名残りが生んだ脆弱性  平林源希
一側性高度難聴に対する人工内耳  吉田忠雄
骨導の不思議  任 書晃
デフスポーツについて  大谷真喜子
人工内耳と音楽  山本典生
人工内耳の未来  山本典生

参考資料
索 引

関連書籍

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