自信がもてるカルテの書き方
定価:3,520円(税込)
まえがき
はじめに
「先生,ChatGPTって何に使えるんですか?」
多忙な診療の合間に,研修医から,同僚から,あるいは自分自身の心の内で,このような問いが生まれることが増えてきたのではないでしょうか.
2022年11月にChatGPTが登場して以来,「生成AI」という言葉は瞬く間に世界を駆け巡りました.当初は「面白いけれど,医療現場では使えない」と感じた方も多かったかもしれません.しかし,わずか2年余りの間に,その進化は私たちの想像をはるかに超えました.今や生成AIは,論文を要約し,診療ガイドラインを整理し,患者説明文を作成し,研究計画の穴を指摘し,さらには多言語での医療コミュニケーションまで支援してくれる―まさに,私たちの知的作業を劇的に変える力を持つに至っています.
しかし,その可能性の大きさゆえに,こんな声も聞こえてきます.
「興味はあるけれど,何から始めればいいかわからない」
「医療という特殊な現場で,どう安全に使えばいいのか」
「患者さんの情報を扱うのに,セキュリティは大丈夫なのか」
「使い方を間違えたら,責任はどうなるのか」
本書は,まさにこうした疑問や不安を抱えるすべての医療者―医師,看護師,薬剤師,そして医療に関わるすべての専門職―のために書かれました.
本書の特徴
1.医療現場に特化した実践的な内容
本書は,一般的なAI解説書ではありません.「患者説明文をどう作るか」「診療ガイドラインをどう活用するか」「退院サマリーをどう効率化するか」―医療者が日々直面する具体的な業務に即した,実践的なテクニックを豊富に紹介しています.
2.安全性と倫理を最優先
生成AIは強力なツールですが,その使い方を誤れば,患者さんのプライバシーを脅かし,医療の質を損なう危険性もあります.本書では,「何をしてはいけないか」「どう情報を守るか」「責任はどこにあるのか」といった,AI時代の医療倫理と安全管理について,1章を割いて詳しく解説しています.
3.初心者から上級者まで段階的に学べる構成
「登録方法がわからない」という方から,「プロンプトライブラリを作りたい」「チーム全体で導入したい」という方まで,幅広いレベルに対応しています.各Chapterは独立しているため,必要な部分から読み始めることもできます.
4.院内ガイドライン作成のための実践的指針
特に,院内で生成AIの利用ガイドラインやマニュアルを作成する必要に迫られている方々にとって,本書はその「マニュアルを作るためのマニュアル」として機能します.導入時の注意点,運用のベストプラクティス,よくある失敗例とその回避法まで,組織レベルでの活用に必要な知識を網羅しています.
本書で学べること
本書は,単なるツールの使い方を超えて,生成AIと「どう付き合うか」の本質を伝えます.
Chapter 1〜2では,生成AIの基本から始め,ChatGPT,Claude,Geminiといった主要ツールの特徴と登録方法,そして安全な使い方の基礎を学びます.
Chapter 3〜5では,日常診療,情報収集,研究・論文作成という,医療者の三大業務における具体的な活用法を,豊富な実例とともに紹介します.「こんなことまでできるのか」という驚きを,ぜひ実感してください.
Chapter 6では,医学生・研修医教育から,症例ベースのクイズ作成,医学英語学習まで,教育・研修への応用を探ります.
Chapter 7では,最も重要でありながら見過ごされがちな「情報の安全性とリスク管理」について徹底解説します.個人情報保護,ガイドライン遵守,ハルシネーションへの対処―このChapterを読むことで,自信を持ってAIを使えるようになります.
Chapter 8では,プロンプトの高度なテクニック,チーム医療での活用,プロンプトライブラリの作り方,そして自分専用のAI秘書の作成まで,一歩進んだ実践技術を学びます.
Chapter 9では,AIと医療倫理,医師の役割の変化,法制度の動向,そして施設導入の実践的注意点まで,未来を見据えた視座を提供します.
AIは,医療をより「人間らしく」する
本書を通じて,一つの重要なメッセージをお伝えしたいと思います.
それは,AIは医師や医療者の仕事を奪うのではなく,私たちをより「人間らしい」医療者にしてくれる,ということです.
知識の記憶や検索という重労働から解放されたとき,私たちは患者さんと向き合う時間を増やせます.定型的な文書作成から解放されたとき,チームとのコミュニケーションに集中できます.情報収集が効率化されたとき,その情報を患者さんの個別性に合わせて統合し,共に最善の治療を目指す―そんな本来の医療に立ち返ることができるのです.
医療の語源は,ラテン語の“medicus”―「癒す者」を意味します.AIは,私たちをその本質へと導いてくれる,最高の贈り物なのです.
本書の使い方
この本は,最初から順番に読んでも,必要なChapterだけを拾い読みしても構いません.各Chapterの冒頭には,そのChapterで学べることが明記されていますので,今のあなたに必要な部分から始めてください.
そして何より,読むだけでなく,実際に試してみることが大切です.患者説明文を一つ作ってみる,論文を一本要約してみる,カンファレンスの議事録を整理してみる―その小さな一歩が,あなたとAIとの長い付き合いの始まりになります.
本書は,医師でありかつAI研究者の清水先生と若手医師・田中先生の対話形式で構成されています.二人の会話を通じて,あなた自身も一緒に学び,考え,成長していく―そんな体験をしていただければ幸いです.
最後に
AIの世界は,今この瞬間も進化し続けています.本書で紹介する具体的なツールや機能は,半年後,1年後には古くなっているかもしれません.しかし,本書で伝える「AIとの付き合い方の本質」―良い問いを立てる力,批判的に吟味する姿勢,倫理観を持って使いこなす責任感―は,決して色褪せることのない普遍的な価値です.
この一冊が,あなたとあなたのチームが生成AIと共に未来の医療を切り拓くための,信頼できる羅針盤となることを願っています.
さあ,新しい時代の医療へ,一緒に踏み出しましょう.
まえがき
著者プロフィール/プロンプトデータ
Chapter 1 生成AIとは何か?─医療者のための超入門
1 ChatGPT,Claude,Geminiとは?
2 生成AIと従来のAIの違いは?
3 医療におけるAI利用の現状と倫理的な留意点は?
4 個人情報・機密情報の扱いは? ガイドラインはある?
Chapter 2 基本的な使い方
5 登録方法とプランの違い(無料/有料)は?
6 情報流出をふせぐには? 情報を漏らさず,学習させることはできる?
7 検索アプリとしても使える?
8 日本語での使い方のコツ,基本プロンプトの書き方と注意点は?
9 もってくる情報は最新?(最新のガイドラインのもの?)
10 情報はどのくらい正確?
11 医療用語をうまく理解してくれないときは,どうしたらいい?
12 音声入力や音声出力にも対応してる?
13 できないことはある? 得意/不得意など
Chapter 3 日常の診療業務への活用
14 診断や治療方針について,相談やアドバイスをもらうこともできる?
15 患者説明文をわかりやすく書き直しできる?
16 診療ガイドラインの要点をまとめてもらうことはできる?
17 診断や治療の判断を任せるのは危険? 信用度は?
18 薬の飲み合わせの確認に使える?
19 多言語(英語,中国語など)での医療説明文を作れる?
Chapter 4 新しい情報をキャッチアップする(自己研鑽を含む)
20 メールの文面を整えることはできる?
21 Excelでのデータ整理や統計計算もできる?
22 医療記事や症例報告の要約を頼むことはできる?
23 ガイドラインや最新論文の情報を拾える?
24 オンライン会議の議事録を作成できる?
25 自分だけの音声ポッドキャストで効率よく情報収集できる?
Chapter 5 研究・論文作成への応用
26 論文の構成やアイディア出しに使える?
27 発表用のスライド作成はできる?
28 症例報告の作成はできる?
29 英文校正・翻訳のサポートは?
30 図は作れる? その場合の著作権は?
31 イラストは作れる? その場合の著作権は?
32 引用文献リストの整形はできる?
Chapter 6 教育・研修・学習支援
33 医学生・研修医への教育に使える?
34 症例ベースのクイズや問題を作れる?
35 医学用語のやさしい解説を作れる?
36 医学英語の学習サポートに使える?
37 院内マニュアルなど指定した複数の文書の中だけから回答させることはできる?
Chapter 7 情報の安全性・リスク
38 医療情報をそのまま入力しても大丈夫?
39 ハルシネーション(事実でない内容の生成)で注意すべき点は?
40 情報の出典が不明瞭なときはどうしたらいい?
Chapter 8 実践活用のテクニック
41 よりよい答えを引き出すプロンプトのコツは?
42 「プロンプトライブラリ」はどう作ればいい?
43 自分の文章のテイストを学習させることはできる?
44 ChatGPTを自分仕様にカスタマイズできる?
Chapter 9 これからの医療とAI─未来への展望
45 AIと医療倫理
46 法制度やガイドラインの動向は?
47 施設で導入する際の注意点は?
48 明日から取り入れたい「AIリテラシー」は?
付録 ほかにもあるぞ! 生成AI情報
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