
運動器の身体診察(フィジカル)×エコー超入門
定価:7,150円(税込)
刊行にあたって
腹部超音波検査は「お腹の聴診器」ともよばれ,実地臨床の場において腹部領域の疾患の鑑別診断上,第一選択となる画像である.厚生労働省で掲げている臨床研修の到達目標の基本的な臨床検査の項でも唯一,自ら実施し結果を解釈できる画像検査として位置づけられており,初期研修医にとって習得すべき検査法となっている.
今回出版された『腹部の身体診察×エコー超入門』はこれから腹部超音波検査を習得しようと考えている医師や臨床検査技師,診療放射線技師,看護師,准看護師の皆様をおもな対象にしており,腹部領域の超音波検査の入門書として位置づけられている.総論では超音波検査の長所と他の画像検査との対比,超音波の原理や各モードの特徴と超音波プローブの操作法,近年,臨床の場で普及しつつある肝エラストグラフィ,超音波に特有なアーチファクトについて解説した.また各臓器の解剖と正常超音波像および描出法,さらに腹部領域でしばしば遭遇する症状である腹痛について病歴聴取や身体診察のポイントに加えて,超音波検査が診断に有用な腹痛の部位別にみた代表的疾患について解説した.また各論では各臓器の代表的な疾患の病態や概要とともに症例を提示して,身体診察のポイントとエコーの読影のポイントを解説した.
わが国の医療現場の第一線でご活躍中の先生方が執筆された本書の各原稿を拝見すると,改めて腹部超音波検査は非侵襲的で日常臨床の場で必要不可欠な検査法であること,腹部領域の診断にきわめて有用であることが認識された.本書はこれから超音波検査を習得しようとしている方々のみならず,すでに超音波検査に携わっている医師や技師の方々にも大変有意義な書籍であると思われる.
この場をお借りして今回の企画にご賛同頂き,ご多忙な中,執筆して頂いた諸先生方に謝辞を申し上げる.また本書の企画と編集および校正にご尽力を頂いた診断と治療社の土橋幸代氏,妹尾英一氏に御礼を申し上げる次第である.
2025年5月
杏林大学医学部医学教育学 特任教授
森 秀明
刊行にあたって
執筆者一覧
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略語一覧
Part 1 総論① ―腹部超音波検査活用のための基礎知識―
A 腹部の診療における超音波検査とは 平井都始子
1. 腹部の診療における超音波検査の長所と限界
2. 腹部の診療におけるX 線,CT,MRI 併用/ オーダーの判断のポイント
B 腹部の超音波検査:プローブを当てる前に知っておきたいこと 平井都始子
1. 超音波検査の原理と特徴
2. 被検者側の準備(体位,その他)と注意点
3. 表示モード,ドプラ法(カラードプラ,パワードプラ,他),エラストグラフィ
4. プローブの操作法の実際
5. 各種アーチファクトとその対策
C 腹部臓器を正しく描出できますか? 各臓器の解剖とその超音波画像 森 秀明
1. 肝臓
2. 胆嚢・胆管
3. 膵臓
4. 脾臓
5. 消化管(食道・胃・十二指腸・小腸・大腸)
6. 腎臓・尿路・男性生殖器
7. 副腎
8. 脈管
9. 腹腔・後腹膜腔
10. 女性生殖器
Part 2 総論② ―腹痛診療の基礎知識―
A 腹痛の診療における病歴聴取・身体診察・各種検査のポイント 森 秀明
1. 病歴聴取
2. 身体診察
3. 検査
B 腹痛の診療における痛みの部位と主訴から診断・鑑別できる病態・疾患 森 秀明
1. フローチャートで概観する
2. 痛みの部位別にみた代表的疾患
Part 3 各論 ―腹部診療における超音波検査活用の実際―
A 肝臓 小山里香子
1. 急性肝炎・劇症肝炎
2. 慢性肝炎
3. 肝硬変
4. 脂肪肝
5. うっ血肝
6. 門脈ガス血症
7. 肝膿瘍
8. 良性肝腫瘍(肝嚢胞・肝血管腫・限局性結節性過形成)
9. 悪性肝腫瘍(肝細胞癌・肝内胆管癌・転移性肝腫瘍)
B 胆嚢・胆管 関根智紀
1. 胆嚢結石・胆管結石
2. 急性胆嚢炎
3. 胆嚢捻転症
4. 胆嚢コレステロールポリープ
5. 胆嚢腺筋腫症
6. 胆嚢癌・胆管癌
7. 閉塞性黄疸
C 膵臓 比佐岳史
1. 急性膵炎
2. 慢性膵炎・自己免疫性膵炎
3. 膵充実性偽乳頭状腫瘍(SPN)
4. 膵漿液性腫瘍(SN)
5. 膵粘液性嚢胞腫瘍(MCN)
6. 膵管内乳頭粘液性腫瘍(IPMN)
7. 膵神経内分泌腫瘍(NET/NEN)
8. 膵癌
D 脾臓 關 里和
1. 脾膿瘍
2. 脾嚢胞
3. 脾血管腫
4. 脾梗塞
5. 転移性脾腫瘍
E 食道・胃・十二指腸・小腸・大腸 森 貞浩
1. 食道癌
2. 急性胃粘膜病変(AGML)
3. 胃癌
4. 消化管穿孔
5. 腸閉塞・イレウス
6. 腸重積
7. 急性虫垂炎
8. 大腸炎・大腸憩室炎
9. 炎症性腸疾患
10. 虚血性大腸炎
11. 大腸癌
12. アニサキス症
F 腎・副腎 河本敦夫
1. 腎結石・尿管結石
2. 馬蹄腎
3. 水腎症
4. 慢性腎不全
5. 嚢胞・傍腎盂嚢胞
6. 多発性嚢胞腎(PKD)
7. 腎血管筋脂肪種
8. 腎細胞癌
9. 腎盂癌
10. 副腎腫瘤
G 膀胱・男性生殖器
1. 膀胱結石 青木芽衣子,小路 直
2. 膀胱腫瘍 青木芽衣子,小路 直
3. 神経因性膀胱 大野晟南,小路 直
4. 残尿 大野晟南,小路 直
5. 鼠径ヘルニア 成瀬 淳,小路 直
6. 精巣回転症 成瀬 淳,小路 直
7. 精索水腫・陰嚢水腫 成瀬 淳,小路 直
8. 精巣上体炎 成瀬 淳,小路 直
9. 前立腺肥大症 小路 直
10. 前立腺結石 小路 直
H 血管 佐藤 洋
1. 腹部大動脈瘤
2. 腹部大動脈解離
3. 急性腸間膜動脈閉塞
I 腹腔・後腹膜腔
1. 腹水・胸水 友近 瞬
2. 腹腔内膿瘍 友近 瞬
3. 後腹膜腫瘍 川村直弘
4. IgG4 関連後腹膜線維症 川村直弘
5. 腹膜偽粘液腫 川村直弘
6. 癌性腹膜炎 川村直弘
7. 悪性リンパ腫 友近 瞬
8. 腹部リンパ節腫大 友近 瞬
J 小児科領域
1. 肥厚性幽門狭窄症 富所由佳,河野達夫
2. 先天性胆道拡張症 富所由佳,河野達夫
3. 急性虫垂炎 富所由佳,河野達夫
4. 腸重積 河野達夫
5. 腸回転異常症 河野達夫
6. 精索捻転(精巣捻転) 河野達夫
7. 便秘 浅原涼子,河野達夫
8. 副腎神経芽腫 浅原涼子,河野達夫
K 産婦人科領域 田嶋 敦
1. 卵巣出血
2. 卵巣茎捻転
3. 卵巣腫瘤・多嚢胞性卵巣症候群
4. 胞状奇胎
5. 子宮体癌
6. 子宮筋腫・子宮腺筋症
7. 異所性妊娠(子宮外妊娠)
L その他,救急場面で腹部症状を訴える疾患
1. 大動脈解離・急性冠症候群・感染性心内膜炎 長友慶子,渡邉 望
2. 呼吸器疾患(肺炎,肺塞栓,膿胸,気胸) 和田晃宜,太田智行
3. 腹部外傷 中尾俊一郎
付録 ―腹部の診療における超音波検査を行ったあとのこと―
A 腹部超音波検査で診たあとの指導医への報告でおさえるべきこと 西村重彦
B 腹部超音波検査で診たあとのレポートでおさえるべきこと 西村重彦
索引