株式会社 診断と治療社

できる!差がつく! 自信がもてるカルテの書き方

文書別の「しくじり記載例」と「模範例」で一目瞭然!

研修医や若手医師向けに,質の高いカルテ作成のための基本的な事項や気を付けるべきポイントなどを解説しました.
なかなか教えてもらう機会のない,紹介状を受けたとき・送るときのマナーや礼儀,病状説明や入退院時の書式,患者死亡時の書類,病歴システムで要求される記載のコツなども解説.外来や病棟,集中治療や救急の現場で,すぐに役立つ必携の書です!
  • 岡山大学学術研究院医歯薬学域総合内科学 大塚 文男編集
定価:
3,520円(本体価格 3,200円+税)
発行日:
2025/11/13
ISBN:
9784787827241
頁:
260頁
判型:
B5
製本:
並製
在庫:
在庫あり
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序文

 診療録(カルテ)をはじめ,診断書・指示書・診療情報提供書などのさまざまな医療文書の作成は,すべての医師に求められる必須のスキルであり,正確にわかりやすく書くことの重要性について多くの医師が認識していると思います.しかしながら,カルテの書き方を医学部の授業や臨床実習の中で系統立てて学ぶ機会が少ないのも現状です.具体的にどのようなカルテの書き方がよいのかと聞かれると……,答えに少々悩みます.とくに若手医師のなかには,自分で書いたカルテに自信がないという先生も案外多いのではないでしょうか?
 近年,診療効率の向上や,患者データ管理の効率化,院内連携の強化が重視され,電子カルテの普及率増加とともにカルテ記載に関する環境も大きく変化しています.最近の若手医師は電子カルテを基本として教育を受けていますが,私を含む昭和生まれの現役医師の多くは,先輩医師の読めない……,ときに理解不能な(笑)……紙カルテを手本にして,手書きカルテで教育を受けてきました.本書では,これから臨床に携わる研修医や若手医師を対象に,質の高いカルテを作成するための基本的な事項,医療文書ごとに気を付けるべきポイントや記載の作法をまとめてみました.カルテに関する医療知識および法的見解に造詣の深い先生の解説とともに,若手医師の自験例も交えてわかりやすく執筆いただきました.
本書の構成として,全体を3つのPartに分け,「Part 1」では医師にとってのカルテ記載への理解を深めるために,カルテの重要性・意義とその記述のABCを学べるよう,熱いマインドを持った総合診療分野のエキスパートの諸先生に担当いただきました.執筆者からの熱いメッセージにも注目です! 初学者のみならず,ベテランのみなさんにも読み応えのある内容となっています.医療訴訟を専門とする弁護士の先生からは,法律視点でカルテの重要性を解説していただきました.
 そして「Part 2」には,患者をとりまくさまざまなシーンにおける医療記録の作成として,大切なトリセツをまとめています.みなさんの外来や病棟で,集中治療や救急の現場ですぐに使える内容です.なかなか教えてもらう機会のない,紹介状を受けたとき・送るときのマナーや礼儀,病状説明や入退院時の書式,患者死亡時の書類などの必携項目もそろえました.初期研修やレジデント研修に使用されている病歴システムで要求される記載のコツも紹介しています.また外科処置や手術同意,介護保険意見書,訪問看護や栄養指導の指示書の書き方もすぐれものです.さらに感染症や虐待発見時の届出,診療報酬明細書の解説まで,意外に知られていない診療録のトリビア,そして米国や東洋医学の診療録や看護記録など,目から鱗のカルテ豆知識はみなさんのカルテスキルをきっとブラッシュアップするでしょう.
最後に「Part 3」では,カルテ用語や医療文書の種類,カルテ開示など医師として知っておくべきアラカルトを紹介しています.先輩からの失敗談や経験談など,ためになるエピソードを盛り込んでおり,医療トラブル回避のための参考事例も必見です.
 みなさんが日々行っているカルテ記載は,患者診療のための記録として重要であることはもちろんですが,医師・看護師・薬剤師・技師・介護士を含む多職種のみなさんと診療を共有するうえで,医療チームの共通言語として有力なツールです.患者をとりまく多くの医療者や,その他の業種の方々を含めて,多種多様な考え方を見える化できるのがカルテです.目下進行中の医療DXでは,保健・医療・介護の各段階の情報が共通化・標準化されようとしています.カルテの電子化やIT化の中で,業務の簡便化・効率化が進み,医師の働き方改革の渦中,いかに無駄を省くか……が重視されています.しかし,電子化でツールは変われど患者中心の医療を誠実に提供したいという医療者のマインドは,いつの時代もカルテを通じて熱く通じあえるものでありたいと願っています.カルテに記載された内容は,患者診療においてのみならず,いざ医療者がトラブルに巻き込まれた場合,医療者を救う重要な証拠にもなりえます.よいカルテは,患者をとりまく多職種医療チームの共通言語として機能し,患者と医療者をつなぐ大切な診療の絆となるでしょう.
 本書は,初学の医療者のみならず,エキスパートの先生にとっても必読の一冊といえます.みなさんの外来や病棟で,あるいは研修医や専攻医の指導の中で,このテキストはどこかで必ず役立つと思います.さあ,みなさん,本書を手に取って安全&スマートなカルテ記載を一緒に学びましょう!

編者からのメッセージ
よいカルテとは……?
・患者をとりまく多職種医療チームの共通言語となる
・誠実な医療を提供するマインドが表現されている
・患者診療だけでなく医療者をも救う重要な証となる
・患者と医療者をつなぐ唯一無二の診療の絆である

2025年10月
  岡山大学学術研究院医歯薬学域総合内科学教授
  岡山大学病院総合内科・総合診療科長
  大塚文男

目次

はじめに
編集・執筆者一覧

Part.1 医師にとってのカルテ記載を理解しよう
 1 カルテとは何か? 診療録,診療記録,医療文書とは?  中野靖浩
 2 カルテの重要性  元浦博之,森 博威,内藤俊夫
 3 カルテのカタチと構造をなすPOMR  相原秀俊,平田理紗,多胡雅毅
 4 カルテ記載が重要になる場面(医療訴訟)  森脇 正
 5 電子カルテと紙カルテ(違いと注意点)  大塚勇輝
 6 カルテの代行入力と記載効率化  髙瀬了輔

Part.2 さまざまなカルテのトリセツ(添削例付き)
A 院内必須書類
 1 初診外来記録  小野雅敬,志水太郎
 2 継続外来記録  武岡宏明,鍋島茂樹
 3 救急外来記録  佐々木陽典
 4 集中治療記録  松岡勇斗
 5 入院時記録/入院診療計画書  大國皓平
 6 院内紹介状(返書を含む)  山本紘一郎
 7 病棟経過記録  佐住洋祐
 8 処方箋  徳増一樹
 9 検査・処置・手術説明同意書  野間和広
 10 病状説明同意書  副島佳晃
 11 手技記録(外科症例レポート)  藤 智和
 12 退院時サマリー  増田陽平
 13 病歴要約(EPOC2, J-OSLERなど)  須山敦仁
 14 院外への診療情報提供書(返書を含む)  越智可奈子
B その他
 1 死亡診断書(死体検案書)  藤川達也
 2 介護保険主治医意見書  大村大輔
 3 訪問看護指示書  横田雄也
 4 栄養指導指示書(外来・訪問)  本多寛之
C できれば知っておきたい書類
 1 感染症発生届,虐待発見時の通告, 診療報酬明細書  萩谷英大,岡田あゆみ,安田美帆
 2 外国語での対応ここがポイント(診断書,紹介状を含む)  西村義人

Part.3 カルテ・アラカルト
 1 各種「診断書・意見書の指定医」の要件を理解する  大野洋平
 2 カルテで使用される略語(まとめ一覧)  川口満理奈
 3 医療文書の種類(まとめ一覧)  赤穂宗一郎
 4 「診療情報の提供等に関する指針」と「カルテ開示」の枠組み  花山宜久

コラム
・固有カルテと共有カルテの違い  郷原英夫
・東洋医学のカルテから  植田圭吾
・リアルタイムカルテの技法  中村俊介
・看護記録のポイントと問題点  安藤弥生
・生成AIとカルテ  増田陽平
・日米のカルテを比較する  西村義人,原田 洸

索引

関連書籍

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