株式会社 診断と治療社

はじめよう骨粗鬆症治療薬 選び方と使い方

高齢者の骨折は要介護や生命予後に直結し,骨粗鬆症の予防・治療は重要性を増しています.また新たな治療薬の保険適用も進み,診断・治療への期待が高まっています.本書は『骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン2025年版』に準拠し,薬剤の選択,逐次療法,切り替え・中止の適切なタイミングに加え,関連疾患への対応まで実践的に網羅しました.一人ひとりの患者の骨粗鬆症・骨折リスクに配慮した診療を実現するための決定版です.
  • 東京大学大学院医学系研究科老年病学 小川 純人編集
定価:
5,500円(本体価格 5,000円+税)
発行日:
2025/11/07
ISBN:
9784787827272
頁:
272頁
判型:
B5
製本:
並製
在庫:
在庫あり
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序文

わが国において,高齢者の骨折は要介護の要因となっており,ADL/QOLや生命予後に大きな影響をおよぼすため,骨粗鬆症の予防・治療はますます重要になってきている.高齢者における骨折の発生には,転倒リスクの増加に加えて骨粗鬆症に伴う骨強度低下が大きなリスク因子として知られている.その一方,筋骨連関や骨・血管連関をはじめとする臓器連関の解明,治療薬の開発などが進み,骨粗鬆症の予防・診断・治療において大きな進展,パラダイムシフトが認められている.こうした中,日本骨粗鬆症学会,日本骨代謝学会,骨粗鬆症財団より『骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン2025年版』が刊行され,システマティックレビューに基づくエビデンスの評価・統合や『顎骨壊死検討委員会ポジションペーパー2023』『グルココルチコイド誘発性骨粗鬆症の管理と治療のガイドライン2023』の内容を盛り込むなど,『骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン2015年版』を改訂する形で新しい概念や項目が加えられることとなった.また,新規骨粗鬆症治療薬としてゾレドロン酸,アバロパラチド,ロモソズマブや既存薬物の新たな剤形等が保険適用になるなど,骨粗鬆症の診断・治療に対する期待や可能性もますます広がってきている.
本書では『骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン2025年版』の内容をふまえ,骨粗鬆症をめぐる診療の現状や支援体制,治療薬処方に関する最新の知識や実践的な処方を中心に,各分野のエキスパートの先生方よりわかりやすくコンパクトに解説いただいた.その際,メリット・デメリットを勘案した薬剤治療に加えて,逐次療法や切り替え・中止のタイミングなど,日常臨床でよく遭遇する疑問や課題への具体的な解決方法や,骨代謝にかかわる様々な疾患・病態とその管理などについても,実際的かつ最新のエビデンスをふまえて解説いただいた.これにより,骨粗鬆症に関する最新の治療戦略・トピックス・展望を,「骨粗鬆症のキホン!」「診断のキホン!」「薬物療法のキホン!」「くすりについて知ろう」「くすりを使いこなそう」「こんなときどうする?」「くすり以外の治療の実践」「骨折予防と骨折への対応」といった,わかりやすい章立て,内容で一冊にまとめることができた.
本書を通じて骨粗鬆症の予防・診断・治療に関する理解が深まり,一人ひとりの患者の骨粗鬆症・骨折リスクに配慮した診療の実践,研究につながれば幸いである.

2025年10月
東京大学大学院医学系研究科老年病学
東京大学医学部附属病院老年病科
教授

小川純人

目次

序文 小川純人 
執筆者一覧
略語一覧

Part1 骨粗鬆症のキホン!
 A 骨粗鬆症ってどんな病気?  今井教雄 
 B どうして骨強度は低下する?  矢可部満隆 

Part2 診断のキホン!
 A 問診・フィジカル  飯高世子 
 B 骨密度測定  鷹見洋一 
 C 骨代謝マーカー  佐藤友紀 
 D 慢性疼痛・QOL  浦野友彦 
 E 骨粗鬆症のリスク評価  伊木雅之 
 F 骨粗鬆症検診  吉村典子 

Part3 薬物療法のキホン!
 A 治療開始のタイミング  浦野友彦 
 B 薬剤選択のポイント  沖本信和 
 C 治療経過の診かた―切り替え・中止の判断  東 浩太郎 

Part4 くすりについて知ろう
 A 骨吸収抑制―骨を守る(骨が壊れるのを防ぐ)
  01 ビスホスホネート薬(アレンドロネート,リセドロネート,ミノドロン酸,イバンドロネート,ゾレドロン酸)  井上玲子 井上大輔 
  02 SERM(ラロキシフェン,バゼドキシフェン)  寺内公一 
  03 抗RANKL抗体薬(デノスマブ)  髙士祐一 
  04 女性ホルモン薬(結合型エストロゲン,エストラジオール,エストリオール,プロゲステロン)  牧田和也 
 B 骨形成促進―骨をつくる(新しく骨をつくるのを助ける)
  01 PTH1型受容体作動薬(テリパラチド,アバロパラチド)  田中伸哉 
  02 抗スクレロスチンモノクローナル抗体薬(ロモソズマブ)  蛯名耕介 
 C 骨代謝改善―骨に栄養を与える(骨の強さをサポートする)
  01 活性型ビタミンD3薬(アルファカルシドール,カルシトリオール,エルデカルシトール)  遠藤逸朗 
  02 カルシウム薬  田中健一 岡田洋右 
  03 ビタミンK2薬(メナテトレノン)  東 浩太郎 
 D 疼痛改善―痛みを和らげる
  01 カルシトニン薬  山田真介 

Part5 くすりを使いこなそう
 A 逐次療法
  01 ビスホスホネート薬 どのタイミングで始める?切り替える?  井上玲子 井上大輔 
  02 PTH1型受容体作動薬 どのタイミングで始める?切り替える?  田中伸哉 
  03 デノスマブ どのタイミングで始める?切り替える?  髙士祐一 
  04 ロモソズマブ どのタイミングで始める?切り替える?  蛯名耕介 
 B 副作用・合併症への対応
  01 顎骨壊死(ビスホスホネート薬)  田口 明 
  02 高カルシウム血症(カルシウム薬と活性型ビタミンD3薬併用,PTH1型受容体作動薬)  山本昌弘 
  03 低カルシウム血症(抗RANKL抗体薬)  小山卓摩 
  04 エストロゲン製剤とSERMの副作用(心血管疾患を中心に)  寺内公一 

Part6 こんなときどうする? ―基礎疾患がある場合
 A 副甲状腺・甲状腺疾患  槙田紀子 
 B 関節リウマチ  古谷武文 
 C 生活習慣病 
  01 糖尿病  金沢一平 
  02 CKD  山田真介 
  03 脂質異常症  山内美香 
  04 高血圧  中神啓徳 
  05 COPD  平井豊博 
 D 認知症  細井達矢 
 E グルココルチコイド治療  隅川舞子 岡田洋右 
 F ホルモン療法  田中瑞栄 

Part7 くすり以外の治療の実践
 A 運動療法  新井智之 
 B 栄養療法  上西一弘 

Part8 骨折予防と骨折への対応
 A ロコモティブシンドロームおよびフレイル・サルコペニアと骨折予防  石橋英明 
 B 転倒と骨折  渡邉 剛 
 C 骨折の診断と治療,管理  渡邉 剛 
 D 病診・多職種連携  中藤真一 

Part9 役立つ情報・資料
 A 全身骨格と骨組織
 B 骨粗鬆症患者QOL評価質問表(2000年度版)
 C JOQOLのドメイン別表記
 D 骨粗鬆症関連の診療報酬  本間政人 

「骨粗鬆症治療Q&A」
 Q 患者が定期的な通院を嫌がる場合,どうすればよい?
 Q 高齢の患者が薬物療法を嫌がる場合,どう対応すればよい?
 Q 骨リモデリングの役割としていわれていることは?
 Q テリパラチドやアバロパラチドなどPTH1R作動薬の骨量増加作用と抗スクレロスチン抗体の骨量増加作用の組織学的な違いは?
 Q 高齢の患者,何歳まで治療を続ける?
 Q 骨粗鬆症患者に骨折が生じた場合は,すぐにテリパラチド投与に切り替える?
 Q 骨吸収抑制薬からPTH1R作動薬の切り替え時に注意することは?
 Q PTH1R作動薬からの切り替えに適当な薬剤は何か?
 Q 治療や経過の診かたは男女同じでよい?
 Q 糖尿病では血糖管理を十分に行えば骨粗鬆症の検査や治療薬は必要ない?
 Q 認知症患者に骨粗鬆症治療を行う意味はあるか?
 Q 骨折リスクの高い患者が運動を避けたがる場合,どのようにアプローチすればよいか?
 Q くり返す骨折,どう対応する?

索引

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