株式会社 診断と治療社

【4月中旬発売予定】 発達障害をときほぐす ニューロダイバーシティが照らす実践知

本書は「発達障害とは何か」という問いをあえて掲げず,IQ,境界知能,療育,グレーゾーン,5歳児健診,2eギフテッドなどのテーマを取り上げ,ケースを中心に構成している.レッテル貼りを避け,子ども一人ひとりにていねいに向き合うことで,発達の多様性や柔軟性が浮かび上がる.臨床と研究を往還してきた児童精神科医が,従来の発達障害観を超え,ニューロダイバーシティの視点から新たな解釈を試みた一冊.
定価:
3,520円(本体価格 3,200円+税)
発行日:
2026/04/14
ISBN:
9784787827586
頁:
140頁
判型:
A5
製本:
並製
在庫:
在庫無し

序文

はじめに

私は児童精神科医です.児童精神科医として働き出した40年前,発達障害とかかわるなかで,当時の知識では理解できないことがあまりにも多く,衝撃を受けたことをよく覚えています.以来,発達障害の診療や研究にかかわりながら,その謎に導かれるまま今に至りました.この間,自閉症を含む発達障害研究は急速に進み,「治すべき障害」,「治らない障害」という二項対立的な理解は見直され,発達障害それ自体は尊重されるべき神経多様性の1つとして,よりインクルーシブな社会を目指す潮流が生まれました.
少なくとも研究面では,数十年という比較的短期間に大きな進歩がありました.施策の後押しによって社会状況も大きく変わりました.その一方で,医療の現場ではエビデンスと実践の乖離が大きくなり,過剰診療や過少診療に振れやすい危うさがあるのも事実です.また研究の視点からは従来,研究が前提としてきたことと現実の間に乖離が生じてしまい,研究が現実に追いつけないという状況にあるのも事実です.
支援の名のもとに行われたさまざまな「介入」が,必ずしも子どもや家族の支えにつながらず,迷子になり漂流する彼らに出会うことも少なくありません.それは,これまで私たちが経験したことのない「ひずみ」といえるのかもしれません.発達障害それ自体が,かつて想定されていたような単純化して説明できる均質な「障害」ではないということを,すなわちその多様さ,複雑さ,そして何よりも「発達可能性」を私たちはしっかり受け止める覚悟が必要だと考えます.
本書は,「発達障害とは」という問いをあえて立てていません.むしろ,多くの方が疑問に感じておられるだろうIQ,療育,グレーゾーン,境界知能,2eギフテッド,5歳児健診など身近なテーマを取り上げて,ケース中心の構成としました.読者の皆さんが少し立ち止まって新しい気づきと出会うきっかけとなれば幸いです.

神尾陽子

目次

はじめに

第1章 IQ再考
Case1 下限域のIQに隠された知性
Case2 はっきりした知的な遅れのある子どもの養育と療育

第2章 境界知能再考
Case3 特別支援学校での学びと悩み
Case4 通常学級での学びと悩み
Case5 フリースクールでの学びと悩み

第3章 療育再考
Case6 ABA個別療育と幼稚園の並行通園
Case7 集団療育と保育園の並行通園
Case8 就学前の発達支援と就学後の特別支援教育の不連続

第4章 療育と親支援
Case9 「かんしゃく」は異常な行動?
Case10 親への心理教育も診断プロセスのうち
Case11 療育が親子の心の安定に
Case12 療育が親のエンパワメントに

第5章 親の発達特性へのアプローチ
Case13 止まらぬ子,揺れる母と父
Case14 子の特性と母の特性の相互作用が生んだ育児困難

第6章 発達障害のグレーゾーンって何?
Case15 過剰に“事例化”するとき
Case16 カモフラージュからの解放
Case17 職場のうつに隠されたASD特性

第7章 5歳児健診再考
Case18 1歳6か月児健診,3歳児健診で見逃されてしまうケース
Case19 出生後から継続的なモニタリングがなされていたが,個別的な支援につながる伴走がなかったケース
Case20 1歳6か月児健診以降,受けてきた支援情報の集約・引き継ぎが課題となったケース

第8章 2eギフテッド再考
Case21 ADHDとギフテッド
Case22 ASD閾下とギフテッド
Case23 ASDとギフテッド
Case24 ADHD閾下とギフテッド

Index
おわりに
著者プロフィール

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