株式会社 診断と治療社

明日からできる!子どものADHD診療 小児科・一般精神科外来での実践ガイド

神経発達症の認知が広まるに伴い「児童精神科の予約半年待ち……」,そんな状況を何とかしたい‼ 一般の小児科,精神科外来で実践可能なリアルなADHD診療戦略をぎゅっと一冊に凝縮! とくに,薬物療法の詳細は従来にない充実ぶりで,処方のコツから薬剤切り替えの注意点,副作用の対応,併存症の治療まで実用情報が満載です.ADHDの子どもたちとその養育者に寄り添い続けてきた編著者陣の,温かなまなざしと臨床知が詰まった,“現場のための”決定版!
  • 国立精神・神経医療研究センター知的・発達障害研究部 部長 髙橋 長秀編集
  • 山梨大学医学部小児科学講座 学部内准教授 加賀 佳美編集
定価:
4,400円(本体価格 4,000円+税)
発行日:
2025/06/04
ISBN:
9784787827005
頁:
216頁
判型:
A5
製本:
並製
在庫:
在庫あり
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序文

はじめに

 ADHDの有病率の増加,社会的認知度の高まりから,ADHD診療の需要は高まるばかりであるが,それに対してADHDの診断・治療ができる医師は圧倒的に不足している.学会でのADHDシンポジウムに立ち見が出るほど医師たちが集まることは,この分野への関心が高いことを示しているが,これからADHD診療をはじめようと考えている医師が,専門的な知識を学ぶ機会は限られている.わが国には「注意欠如・多動症―ADHD―の診断・治療ガイドライン」という素晴らしい成書があるのだが,これを読み込んでADHD診療に臨むのはなかなかハードルが高く,かといって,実際の診療のポイントについてコンパクトにまとめた書籍は見当たらず,そのようなニーズに応えるべく,診断と治療社の島田様の発案で,企画・編集・執筆したのが本書である.
 本書『明日からできる! 子どものADHD診療~小児科・一般精神科外来での実践ガイド~』は,これから子どものADHDを診ようとする一般小児科医や一般精神科医を対象読者層としており,本書を一読し,時には手元に置いて参照していただくことで,ADHDの診断と治療の実践的な知識を,独学で身につけることができるようになると考えている.
 本書は,まず神経発達症の疫学研究の第一人者である土屋先生に,ADHDの診療を行ううえで知っておいていただきたい疾患の概念・歴史・病態などをコンパクトにまとめていただいたChapter 1からはじまる.Chapter 2では,ADHD診療の第一のハードルとなる診断について,一般外来で行うことを念頭に,全国でADHD診療の啓発活動を行っておられる小坂先生,眞田先生にわかりやすく執筆していただいた.Chapter 3は,体系的な知識を得ることが難しいためにADHD診療を敬遠しがちになる心理社会的療法や,社会的リソース・環境調整・学校との連携などについて,この分野で数々の業績をあげておられる辻井先生に具体的に記載いただいた.Chapter 4では本書の3分の1ほどのページを割き,薬物療法について,処方のコツや切り替え時の注意点など,診察室でのADHD児や養育者とのやりとりを念頭に置いて記載した.Chapter 5は,診察室で実際よく起こる困りごとへの対処法を児童精神科医の育成をライフワークとされている加藤先生に詳述していただいた.最終Chapterでは,新聞やインターネットでよく見かけるADHDの最近のトピックスについて,ADHDオタクを自負する編者が,エビデンスをもとに医学的な見解をまとめた.このような最近のトピックスについての知識は,ADHD児や養育者と良好な関係を築くためにも有用であると考えている.
謝辞:まず,本書を手に取ってくださったすべての先生方,本当にありがとうございます.本書が,ADHD診療をはじめられる先生方にとっての道標となり,ADHDの子どもたちの発達を支え,彼らがもつ可能性を最大限に引き出すための一助となることを願っています.本書の完成は,過去の偉大な先達が築いた基盤と,世界中の研究者たちによる厳密なデータ収集があってこそ成しえたことです.多くのADHDの子どもたちとその養育者からの貴重な意見も,この作業を支えてくれました.
 ご多忙ななか,私以外,誰1人締切を破ることなく,各Chapterを完成させてくれた執筆者の先生方,本書の方向性を見据えながら貴重なご意見をくださった共同編者の加賀先生,そしてこのプロジェクトを支えてくれた診断と治療社の島田様に謝意を表します.
 最後に,常に支えてくれる家族へ.プロのADHDを自称する私に振り回されながらも温かく見守ってくれる妻,子どもたち,ADHDそのものである愛犬ドン,そして些細なことでも大袈裟にほめながら育ててくれた両親に心からの感謝を伝えたいと思います.

2025年4月

目次

はじめに  髙橋長秀
編著者紹介

Chapter 1 ADHD診療を行うにあたって知っておいてほしいこと
01 簡単に説明,ADHDの歴史  土屋賢治
02 ADHDの疫学と原因  土屋賢治
03 ADHDの子どもの脳内では何が起こっているのか?  髙橋長秀

Chapter 2 ADHDの診断と評価の実際
01 受診まで~「様子をみましょう」と言い続けられてきました~  小坂浩隆,眞田 陸
02 診断の手順~情報の収集の仕方にはコツあり!~  小坂浩隆,眞田 陸
03 評価の手順~質問紙を使うのが便利!~  小坂浩隆,眞田 陸
04 鑑別診断①~この検査だけはやっておこう!~  小坂浩隆,眞田 陸
05 鑑別診断②~この項目だけは確認しておこう!~  小坂浩隆,眞田 陸
06 併存症の評価~併存することが多いものを頭に入れておこう~  小坂浩隆,眞田 陸

Chapter 3 ADHDの心理社会的療法
01 ADHD診療で利用できる社会的なリソースにはどのようなものがありますか?  辻井農亜
02 環境調整は,具体的に何をしますか?  辻井農亜
03 診察室で行う親ガイダンスについて教えてください  辻井農亜
04 学校との連携はどのようにとればよいでしょうか?  辻井農亜
05 治療の目標はなんでしょうか?  辻井農亜

Chapter 4 ADHDの薬物療法
01 どんなときに薬物療法を検討すればよいでしょうか?  髙橋長秀
02 どの薬剤を選択すればよいですか?  髙橋長秀
03 処方後に効果の確認はどのようにして行いますか?  髙橋長秀
04 処方後に副作用の確認はどのように行いますか?  髙橋長秀
05 薬剤の切り替えを検討するのはどのようなときですか?またどのような点に注意が必要ですか?  髙橋長秀
06 薬を続けるか,中止するかを判断する基準はなんですか?  髙橋長秀
07 併存症への対応について教えてください  髙橋長秀
08 サプリメントについて相談を受けることがありますが,どう返答したらよいですか?  髙橋長秀

Chapter 5 診察室での困りごと
01 話がとまらないADHD児,養育者への上手な対応方法はありますか?  加藤秀一
02 予約に必ず遅れてくるADHD児にできる工夫はありますか?  加藤秀一
03 診察時に親子げんかがはじまることがありますが,どう対応すればいいですか?  加藤秀一
04 専門機関に紹介する目安はありますか?  加藤秀一

Chapter 6 ADHDに関する最近のトピックス
01 女児のADHD  髙橋長秀
02 ゲーム行動症(ゲーム依存)との関連  髙橋長秀
03 ゲームがADHDの治療に使える?  髙橋長秀
04 ニューロモデュレーション(rTMSやtDCSなど)  髙橋長秀
05 ギフテッド,HSP/HSCとADHDの関連  髙橋長秀

Index
おわりに  加賀佳美

COLUMN
ADHDであると考えられている歴史上の人物  髙橋長秀
ADHDの有病率増加に対する1つの仮説:ADHD特性を有する人はADHD特性を有する人をパートナーに選びやすい  髙橋長秀
インターネットでの自己診断に注意!  髙橋長秀
ADHD診療をはじめた頃に大変だったこと  髙橋長秀
環境調整って?  辻井農亜
臨床の場で心理検査の結果を説明するとき  辻井農亜
ADHD診療の醍醐味  髙橋長秀
ビデオゲームを使った個別化治療の試み  髙橋長秀

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