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小児科診療 最新号

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雑誌「小児科診療」2023年 Vol.86 No.2 全身をみて,腎・尿路疾患に気づく

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掲載論文

序 文  神田祥一郎

Ⅰ.総 論
腎・尿路疾患と腎外症状  神田祥一郎
腎・尿路疾患と遺伝子異常  山村智彦

Ⅱ.腎外症状を伴う腎・尿路疾患
CAKUT(先天性腎尿路異常)  倉岡将平
コラム:女性生殖器異常を伴うCAKUT  中村実沙子
繊毛病(ciliopathy)  榊原菜々・他
ADPKD/ARPKD  白井陽子・他
ネフローゼ症候群  滝澤慶一
尿細管疾患  安藤太郎・他
Alport症候群  堀之内智子

Ⅲ.全身疾患に伴う腎・尿路疾患
感染症と腎・尿路疾患  中野栄治
溶血性尿毒症症候群  梶保祐子
コラム:1996年に発生した大規模集団感染による溶血性尿毒症症候群  五十嵐 隆
膠原病と腎・尿路疾患  小椋雅夫
ANCA関連血管炎  平野大志
IgA血管炎―紫斑病性腎炎―  原田涼子
コラム:チアノーゼ腎症  益田 瞳
糖尿病  千葉有美子
先天代謝異常  西村竜哉
Onco-Nephrology  日髙もえ

症例報告
中隔子宮による外因性の一過性胸郭変形の一例 菅野奈緒・他

ねらい

全身をみて,腎・尿路疾患に気づく

神田祥一郎  /東京大学医学部小児科

 腎臓は肝臓と同様に「沈黙の臓器」といわれることがあります.それは,よほど機能が低下しない限り,むくみや倦怠感などの自覚症状が現れにくいからです.症状の出現が遅いために,腎疾患の存在に気づいたときにはすでに腎機能障害が進行しているということもあるくらいです.それでも成人8人に1人が慢性腎臓病(chronic kidney disease:CKD)を有している時代ですので,小児と比べると成人は腎疾患の存在に気づきやすいでしょう.一方,小児は症状が現れにくいことに加え頻度が低いことから,慢性腎臓病を早期診断することはとても難しいです.
 では,どのようにしたら,早期診断できるでしょうか?
 その試みの1 つが学校検尿・3 歳児検尿です.血尿,蛋白尿,尿糖の3 項目でスクリーニングを行うこの検査は,腎炎やネフローゼ症候群,糖尿病などを早期診断するのに大変有用です.しかし,小児慢性腎不全の頻度の高い原疾患である先天性腎尿路異常(congenital anomalies of the kidney andurinary tract:CAKUT)やネフロン癆は,腎機能障害の進行とともに希釈尿を呈するようになるため,一般尿検査の定性検査では異常所見をみとめにくいです.つまり,「沈黙の臓器」である腎臓は,疾患の種類によっては尿検査によるスクリーニングさえも潜り抜けてしまうのです.
 そんな腎臓病の早期診断の一助となるのが,腎外症状です.もちろん,腎・尿路症状のみを呈する疾患も少なくありませんが,いくつかの腎・尿路疾患は合併しやすい腎外症状が知られています.そこで,腎・尿路疾患に合併し得る腎外症状に出会った際,「もしかしたら腎・尿路疾患が隠れているかもしれない」と腎・尿路に注意をはらうことでその存在に気づけることがあります.また,腎・尿路疾患を有する患者に出会った際,合併しやすい腎外症状を検索することでトータルケアにつなげることができます.つまり,個別の臓器に注目するのではなく,「全身をみる」という臨床医の基本姿勢が,腎疾患の存在に気づく契機になり得るとともにトータルケアに必要である,ということです.
 さらに,腎・尿路疾患が特定の腎外症状を合併するのには,それぞれ理由があります.本特集号を通じて「全身をみて,腎・尿路疾患に気づく」という臨床の基本から背景に存在する基礎の病態にまで目を向けていただけたらと思います.
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