日本リウマチ学会 シェーグレン症候群診療ガイドライン 2025年版
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改訂第3版序文
IgG4関連疾患(IgG4‒related disease:IgG4‒RD)に関する最新情報をお伝えしてきている本書は,初版は2015年,改訂第2版は2019年に出版され,今回は改訂第3版になります.初版も改訂第2版も岡崎和一先生と川 茂幸先生が編集主幹をお務めになられましたが,若干の年齢差ではありますが,世代交代ということで,改訂第3版は川野充弘と中村誠司がその務めを引き継がせていただきました.
ご存知のように,IgG4‒RDはわが国から世界に先駆けて発信された疾患であり,2011年に開催された第1回IgG4‒RD国際シンポジウムにおいてわが国が提唱する疾患概念や疾患名が認められてから,15年が経とうとしています.わが国のIgG4‒RDに関する研究は,当初から一貫して厚生労働省難治性疾患研究班と関連学会によるオールジャパン体制で進められており,成果を発信して世界をリードしてきました.その厚生労働省難治性疾患研究班の班長は,2020〜2022年度は中村が,2023〜2025年度は川野が務めて研究班を取りまとめましたので,そうした経緯もあって本書の編集主幹を務める貴重な機会をいただいたものと理解しています.さらに,川野は2007年にIgG4研究会を立ち上げ,2019年にはその研究会を日本IgG4関連疾患学会に発展させ,理事長を務めました.本書では,本疾患に関する最新情報としてそのオールジャパン体制の成果もお示しいたしますが,世界初の診断基準や臓器別診断基準の策定,モノグラフ,国際的出版物,診療ガイダンスの刊行,国際シンポジウムの開催,患者レジストリの実施,患者会の設立などを通して,IgG4‒RDの疾患概念の普及と啓発に多大な貢献をしてきたと自負しています.
IgG4‒RDが希少疾患であることもあり,今後は患者レジストリで症例の集積を続けることでより正確な病態の把握に努めるとともに,診断基準についても引き続き改訂と検証を続けていく必要があると思います.治療法についても,グルココルチコイドが著効はしますが,本疾患は高齢者に好発し,2型糖尿病の合併率が高く,難治性で再発する症例も少なくないことから,新規の治療法の開発が待たれます.さらに,病因に関しても,多くの新しい興味ある知見が得られているものの,いまだに解明には至っていないのが現状です.このように,本疾患に関しては多くの解決すべき課題が残っているのも事実です.本書では,本疾患に関する最新情報とともに,この現状を知っていただければと思います.読者の皆様方の本疾患に関する理解が深まり,新たな知見を見いだすことにも繋がり,残された課題の解決にご尽力いただければ幸いです.
最後に,本書の改訂にあたり,企画から出版までご尽力をいただきました「診断と治療社」の編集部の皆様に深謝いたします.
令和7年11月
編集主幹
金沢医科大学血液免疫内科学 川野充弘
長崎国際大学 中村誠司
口 絵
改訂第3版序文 川野充弘/中村誠司
改訂第2版序文 岡崎和一/川 茂幸
初版序文 岡崎和一/川 茂幸
執筆者一覧
Ⅰ IgG4関連疾患の概要
1.疾患概念と病態生理 岡崎和一/内田一茂
2.発見の経緯と研究の歴史 川 茂幸
3.病因論 金子直樹/森山雅文
4.国際シンポジウムの意義と役割 髙橋裕樹/川野充弘
5.厚労科研研究班の活動と実績 川野充弘/梅原久範
6.診断(IgG4 関連疾患包括診断基準とACR/EULAR 分類基準) 坪井洋人/松本 功/正宗 淳
7.治 療 田中良哉
8.疫 学 内田一茂/岡崎和一
9.潜在的IgG4 関連疾患 辻 良香/川上 純
10.疾患フェノタイプ 梅原久範/新川雄高
11.疾患活動性指標 中山田真吾
12.IgG4 関連疾患センター設置の意義と役割 神澤輝実 /瀬戸口京吾
13.社会への啓発と患者会の設立 梅原久範
Ⅱ 臓器別病変
1.中枢神経病変
病態 河内 泉
病理 清水 宏
検査・診断 豊田圭子
治療と予後 島津 章
2.眼病変
病態 曽我部由香
病理 加瀬 諭
検査・診断 臼井嘉彦
治療と予後 高比良雅之
3.唾液腺病変
病態 金子直樹/森山雅文
病理 能登原憲司
検査・診断 山本元久
治療と予後 神田真聡/髙橋裕樹
4.甲状腺病変
病態 赤水尚史/竹島 健
病理 李 亜瓊/覚道健一
検査・診断 竹島 健/赤水尚史
治療と予後 西原永潤
5.呼吸器病変
病態 小松雅宙/山本 洋
病理 寺﨑泰弘
検査・診断
a.画像検査の特徴的な所見 川上 聡/藤永康成
b.臨床検査の特徴と鑑別疾患を含む診断 半田知宏
治療と予後 松井祥子
6.膵病変
病態
a.AIP の病態,臓器特異的な機能障害 渡邉貴之/川 茂幸
b.免疫学的背景 内田一茂/岡崎和一
病理 能登原憲司
検査・診断
a.検査 中島悠貴/岩崎栄典
b.診断基準 池浦 司
治療と予後
a.薬物療法 滝川哲也/正宗 淳
b.予後:慢性膵炎への移行と膵内外分泌機能不全 中村 晃
c.生命予後,膵発癌リスク 辻前正弘/児玉裕三
7.胆道病変
病態 中沢貴宏/内藤 格
病理 中沼安二
検査・診断 中沢貴宏/内藤 格
治療と予後 栗田裕介/窪田賢輔
8.肝病変
病態 田中 篤
病理 中沼安二
検査・診断 田中 篤
治療と予後 田中 篤
9.消化管病変
病態 増田充弘/児玉裕三
病理 能登原憲司
検査・診断 増田充弘/児玉裕三
治療と予後 増田充弘/児玉裕三
10.腎・泌尿器病変
病態 山田和徳
病理 原 怜史
検査・診断 佐伯敬子
治療と予後 水島伊知郎
11.後腹膜病変
病態 澤 直樹
病理 笠島里美
検査・診断 井上 大
治療と予後 高安健太/木下秀文
12.動脈病変
病態 笠島里美
病理 笠島里美
検査・診断 真鍋徳子
治療と予後
a.外科的治療 笠島史成
b.内科的治療 水島伊知郎
13.リンパ節病変
病態 西村碧フィリーズ/佐藤康晴
病理 西村碧フィリーズ/佐藤康晴
検査・診断 西村碧フィリーズ/佐藤康晴
治療と予後 西村碧フィリーズ/佐藤康晴
14.皮膚病変
病態 戸倉新樹
病理 戸倉新樹
検査・診断 八木宏明
治療と予後 濱口儒人
15.前立腺病変
病態 神澤輝実/古賀文隆
病理 神澤輝実/古賀文隆
検査・診断 神澤輝実/古賀文隆
治療と予後 神澤輝実/古賀文隆
Ⅲ 鑑別診断
1.画像所見からみた鑑別診断 小山 貴
2.病理所見からみた鑑別診断 佐藤 啓
3.膵病変・胆道病変の鑑別診断 渡邉貴之
Ⅳ 合併症
1.糖尿病 植田圭二郎/藤森 尚
2.がん 塩川雅広
3.リンパ腫 錦織亜沙美/佐藤康晴
索引