株式会社 診断と治療社

ゼロからわかる! 即実践 MASLD・MASH診療マスターガイド 【7月下旬発売予定】

MASLD・MASH診療を迷わず実践できる!最新エビデンスに基づく診断アルゴリズムや非侵襲的検査,食事・運動などの生活指導から薬物療法まで,一連の診療の流れをわかりやすく解説しました.また,健診で脂肪肝を指摘された患者への対応や専門医への紹介のタイミングなど,現場で直面する疑問にもお応えします.冒頭の「キモをおさえる!」や「肝要図版ダイジェスト」で,おさえておきたい診療のポイントにすぐにアクセスできる,現場でお役立ていただける1冊です.
  • 国際医療福祉大学医学部消化器内科学 統括教授/国際医療福祉大学熱海病院 病院長 中島 淳 監修
  • 大阪大学大学院医学系研究科生体物理工学講座 教授 鎌田 佳宏編集
定価:
7,150円(本体価格 6,500円+税)
発行日:
2026/07/27
ISBN:
9784787827388
判型:
製本:
並製
在庫:
在庫無し

序文

刊行に寄せて

近年,肝臓領域の医療は大きな転換期を迎えています.特に,従来“NAFLD・NASH”とよばれてきた脂肪性肝疾患が,“MASLD・MASH”という新たな概念へと再整理されたことは,単なる名称変更にとどまらず,疾患理解と診療の枠組みを大きく変える出来事でした.脂肪肝はもはや一部の専門医のみが扱う疾患ではなく,生活習慣病や心血管疾患,糖尿病などと密接にかかわる全身性の疾患として,多くの臨床医が日常診療で向き合うべき重要な課題となっています.
一方で,MASLD・MASH診療に関する情報は急速に更新され続けています.非侵襲的診断法(NIT)の進歩により,肝生検に頼らずに線維化リスクを評価する方法が確立されつつあり,FIB-4 indexを起点とした診療アルゴリズムが国際的な標準として広まりました.また近年では,レスメチロムやセマグルチドをはじめとする新規治療薬の開発が進み,MASLD・MASHの治療戦略も大きく変化しようとしています.こうした状況のなかで,「どのような病態の患者を拾い上げ,どのように評価し,どの段階で治療介入を行うのか」という実臨床の判断は,これまで以上に重要になっています.
しかしながら,最新のガイドラインや研究成果は必ずしも日常診療の形で整理されているとは限らず,特にプライマリ・ケア医や非肝臓専門医にとっては,情報を統合して理解することが容易ではありません.健診で脂肪肝を指摘された患者をどのようにフォローすべきか,どの段階で専門医に紹介すべきか,あるいは生活指導と薬物療法をどのように組み合わせるべきか――こうした臨床上の疑問に答える実践的な指針が求められています.
本書は,そのような背景のもと,「日常診療で迷わないための実践書」として企画されました.SLD時代の新しい疾患概念を整理したうえで,診断アルゴリズム,非侵襲的診断法の活用,生活習慣介入,新規薬物療法,合併症管理,そして長期フォローアップに至るまでを,一連の臨床の流れとして体系的に解説しています.世界標準の診療指針と日本発のエビデンスを架橋しながら,実臨床の場で役立つ知識を提供することを目指しました.
編集を担当された鎌田佳宏先生を中心に,本領域で活躍されている多くの専門家の先生方が執筆に参加され,第一線の臨床経験に基づく実践的な内容がまとめられています.図表やフローチャートも豊富に用いられており,必要な情報を短時間で確認できる構成となっています.
本書が,MASLD・MASH診療にかかわる医師のみならず,糖尿病,循環器,腎臓,老年医学など多くの領域の医療者にとって,日常診療の指針となる一冊となることを願っています.そして,本書が脂肪性肝疾患診療の理解を深め,よりよい医療につながる一助となれば幸いです.

2026年7月
監修 中島 淳






はじめに

本書は,MASLD・MASHを,プライマリ・ケアから専門医診療,さらには新規薬物療法の時代まで一貫して扱う「超実践」ガイドとして企画されました.「病名が変わったこと」は出発点にすぎず,どのような病態の患者をどのように拾い上げ,どのような非侵襲的診断法で層別化し,どの段階でどの治療を行うか─その一連の流れを,世界標準と日本発エビデンスを架橋しながら整理することを目指しています.

◆序章で伝えたいこと:SLD時代の新常識と治験最前線
序章では,「A.SLD時代の新常識」「B.MASLD治験最前線」という2本立てで,書籍全体の“地図”を提示します.
前半では,Steatotic Liver Disease(SLD)という枠組みと,MASLD・MetALD・ALDの新分類を概説し,FIB-4 indexを起点とした世界標準の診断アルゴリズムと,日本のガイドライン・奈良宣言をどのように実臨床で統合するかを俯瞰します.
後半では,NITを用いた治験デザイン,組織学的エンドポイントと FIB-4 index・ELF・VCTEなどの指標の関係,そしてセマグルチドを含む最新の治療薬開発の動向を概観し,「どのような病態の患者を治し,どう評価するか」を考える土台を提供します.

◆セマグルチドの登場が意味するもの
週1回皮下投与のセマグルチド2.4mg は,MASHかつ線維化F2–F3を対象とした第3相ESSENCE試験において,脂肪肝炎の消失や線維化ステージの改善を有意に達成し,体重減少や心血管代謝リスク指標の改善も同時に示しました.
日本ではすでに肥満症・2型糖尿病に対して公的医療保険での使用が認められ,MASLD・MASHへの適応拡大と保険収載が議論され,2026年に保険収載となりました.
第3章D薬物療法:現行薬と新規治療の展望」では,セマグルチドを含むGLP-1受容体作動薬,レスメチロム,ラニフィブラノールなどの治験中の薬やSGLT-2阻害薬について,
・どのような患者背景で
・どのアウトカム(体重,肝線維化,心血管イベント)を目標に
・どのNITを用いて治療効果をモニタリングするか
を具体的に検討しています.
同時に,第3章A「治療目標の設定」やE「合併症管理」では,セマグルチド時代のMASLD診療においても,「減量」「肝線維化抑制」「心血管・腎リスク低減」「サルコペニア・フレイルの予防」をどのようにバランスさせるかという視点から,長期戦略を提示します.

◆各章でめざしたこと
第1章「MASLD・MASH診療の基本と最新情報」では,概念・疫学・自然経過からリスク因子,高齢者・MetALD・予後までを俯瞰し,「どのような病態の患者を見逃してはいけないか」を整理します.コラムでは,病名変更のポイント,飲酒との境界,メタボリックシンドロームや「やせ型MASLD」との関係,脂肪肝を放置した場合のリスクを,簡潔なサマリーと図表で示しました.
第2章「MASLD・MASHの診断ストラテジー」では,問診・身体所見,血液検査,画像検査,診断アルゴリズム,非侵襲的診断アプローチをひとつの流れとして再構成しています.ALTや超音波で拾い上げた後,FIB-4 index(低リスク1.3〈66歳以上2.0〉未満,中間リスク,2.67超の高リスク)と血小板数,Ⅳ型コラーゲン7S(T4C7S),M2BPGi,ELFスコア,VCTEなどを組み合わせて,「F2–3を取りこぼさず,F4を見落とさない」ための実践的アルゴリズムを示します.コラム群では,無症状脂肪肝の見つけ方,飲酒量申告と現実のギャップ,検査結果の解釈の落とし穴,AI診断支援や「肝生検なしでハイリスクを見抜く」最新アプローチまで,診断にまつわる“現場の悩み”に焦点をあてました.
第3章「MASLD・MASHの治療ストラテジー」では,生活習慣介入(食事・運動・栄養療法)から薬物療法,新規治療薬,合併症管理までを一続きのストーリーとして扱います.セマグルチドを含む薬物療法は,あくまで生活習慣介入と多職種連携の上に位置づけられるべきであり,「どのNIT指標がどれだけ動けば有意な治療効果とみなせるか」という視点から,治療効果判定の実務も解説しています.
第4章「患者指導とフォローアップ」では,患者の心理的サポート,長期フォローアップ戦略,治療対象患者の拾い上げ,専門医紹介のタイミングなど,「続けてもらう工夫」にフォーカスしました.
第5章「MASLD・MASH」診療にまつわるQ&A」および「患者さんへの説明用資料集」では,疫学・診断・合併症・治療に関するよくある疑問と,そのまま説明に使える資料を収載し,本書全体の総仕上げとしています.

◆読者へのメッセージ
本書は,肝臓専門医だけでなく,プライマリ・ケア医,糖尿病・循環器・腎臓・老年医学の専門医,そして管理栄養士,理学療法士,薬剤師,看護師,医療ソーシャルワーカーなど,多職種の方々に手に取っていただくことを想定しています.
セマグルチドをはじめとする新規治療薬の保険収載が進むこれからの数年は,MASLD・MASH診療にとって大きな転換期となりますが,どれだけ薬が進歩しても,「どのような病態の患者を拾い上げ,どのように説明し,どのように伴走するか」という臨床の基本は変わりません.
本書が,診断アルゴリズムやカットオフ値を確認するためのリファレンスであると同時に,治験や新薬登場後も色あせない「診療の軸」を共有する一冊として,日常診療の一助となれば幸いです.

2026年7月
編集 鎌田 佳宏

目次

キモをおさえる!
肝要図表ダイジェスト・肝要計算式ダイジェスト
カラー口絵
刊行に寄せて 中島 淳
はじめに 鎌田 佳宏
執筆者一覧
略語一覧

序章 MASLD・MASH診療をはじめるために
 A SLD時代の新常識:MASLD診療を一気にアップデートする「世界標準+日本発」実践ガイド 鎌田 佳宏
 B MASLD治験最前線:NITを使いこなして「どのような病態の患者を治し,
どう評価するか」を見極める 鎌田 佳宏

第1章 MASLD・MASH診療の基本と最新情報
 A MASLD・MASHとは? 芥田 憲夫
  Column 1 NAFLDからMASLDへ:名称変更で何が変わった? 芥田 憲夫
 B プライマリ・ケア医のための早期発見・介入術 木村 岳史,田中 直樹
  Column 2 飲酒はどこまで許されるのか?$2002脂肪肝とアルコールの境界 浪崎 正,吉治 仁志
 C 危険因子と評価 藤井 英樹
 D メタボリックシンドロームとMASLD:切っても切れない関係? 新井 泰央
 E 高齢者MASLD診療の実際 宇野女慎二,清水 雅仁
 F MetALD診療の実際 赤羽たけみ
 G 予後予測とフォローアップ 田中 直樹,若林 俊一,木村 岳史
  Column 3 脂肪肝,放置するとどうなる? 田中 直樹

第2章 MASLD・MASHの診断ストラテジー
 A 見逃せない臨床症状・検査所見アラート 村上 詩歩,川中 美和
  Column 4 無症状の脂肪肝,どうやって見つける? 村上 詩歩,川中 美和
 B 診断アプローチ:問診・所見から診断へ 森下 朝洋
  Column 5 飲酒量,申告と現実のギャップをどう埋める? 藤井 英樹
 C 血液検査の読み方 石破 博
  Column 6 検査結果の解釈,ココに注意! 石破 博
 D 画像検査の選択と実践 岩城 慶大
  Column 7 画像検査の状況に応じた使い分けガイド 岩城 慶大
 E 血液マーカーによる診断アルゴリズムと鑑別診断のポイント 多田 俊史
  Column 8 AI診断支援は脂肪肝診療の未来をどう変える? 三浦 光一
 F 非侵襲的診断アプローチ:ハイリスク患者の画像診断による抽出 大枝 敏
  Column 9 肝生検なしでハイリスク患者を見抜く,最新アプローチ 大枝 敏

第3章 MASLD・MASHの治療ストラテジー
 A 治療目標の設定 伊藤 隆徳
  Column 10 治療目標を共有し,モチベーションを高めるには? 伊藤 隆徳
 B  実践的な食事療法:エビデンスに基づく食事指導 中野 暖,藤吉 真英,川口 巧
  Column 11 食事療法:継続のための実践的アプローチ 中野 暖,藤吉 真英,川口 巧
 C 効果的な運動療法:個別処方のコツ 堤  翼,橋田 竜騎,川口 巧
  Column 12 運動処方:患者別組み立てガイド 堤  翼,橋田 竜騎,川口 巧
 D 薬物療法:現行薬と新規治療の展望
  1 治療薬の選び方と実践 米田 正人,小林 貴,岩城 慶大
  2 新規治療薬の展望 角田 圭雄,瀬古 裕也,米田 正人,鎌田 佳宏,中島 淳
  Column 13 脂肪肝の遺伝子治療,どこまで進んでる? 瀬古 裕也
 E 合併症管理
  1 MASLD代謝性合併症マネジメント 鈴木 浩之,堤  翼,川口 巧
  2 心血管イベントリスク:評価・管理のポイント 則武 秀尚,川田 一仁
  3 他臓器がんスクリーニング戦略 飛田 博史
  Column 14 脂肪肝患者の多職種連携,スムーズに進めるには? 吉田 雄一
 F 肝硬変・肝がんの早期発見と管理戦略 玉城 信治
  Column 15 肝移植のこれまでと,おさえておきたいポイント 野田 剛広,土岐祐一郎,江口 英利

第4章 患者指導とフォローアップ
 A 患者指導のコツ:伝え方で大きく変わる! 柴山 薫,磯田 広史
  Column 16 患者の心理的サポート,どうすればいい? 柴山 薫,磯田 広史
 B 長期フォローアップ戦略 小木曽智美
  Column 17 フォローアップ中断を防ぐ,継続のコツは? 小木曽智美
 C 治療対象患者の拾い上げ 高橋 宏和
  Column 18 専門医紹介,適切なタイミングは? 高橋 宏和

第5章 MASLD・MASH診療にまつわるQ&A
 A 疫学/全般 小野 正文,兵庫 秀幸
 B 診断 小野 正文,兵庫 秀幸
 C 合併症 小野 正文,兵庫 秀幸
 D 治療 小野 正文,兵庫 秀幸

患者さんへの説明用資料集 小野 正文,兵庫 秀幸
INDEX

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