株式会社 診断と治療社

【5月下旬刊行予定】 糖尿病学2026

糖尿病領域において,わが国の研究者・医師が主導した,優れた基礎研究,臨床・展開研究を集めた珠玉のイヤーブック.
今年は18編を収録.基礎研究では「RASのPI3Kαへの結合を促進する「分子接着剤」による糖取り込み増強作用」など病態の深い理解や将来の治療戦略を切り拓く可能性を秘めた9編を収録した.臨床研究・展開研究では「チルゼパチドによる日本人肥満症に対する臨床試験(SURMOUNT-J試験)」など実臨床に役立つ深い洞察を得られる9編を集めた.内科医・糖尿病専門医の必読書.
  • 国家公務員共済組合連合会 虎の門病院 門脇 孝編集
  • 東京大学大学院医学系研究科 糖尿病・代謝内科 山内 敏正編集
定価:
11,000円(本体価格 10,000円+税)
発行日:
2026/05/21
ISBN:
9784787827746
頁:
164頁
判型:
B5
製本:
並製
在庫:
在庫無し

序文

 『糖尿病学』は1976年に創刊され,今号で第51集を迎える.本書は毎年,その年の糖尿病に関する重要な話題や研究成果を取り上げ,糖尿病学の進歩を刻むマイルストーンとしての役割を果たしてきた.とりわけ,日本人研究者による時代をリードする研究を中心に,研究者自身の手によって臨場感あふれる解説を加えることに主眼を置いている点に本書の特色がある.研究成果の背後にある「研究の歴史」や「思考の流れ」といった過程も含めて提示することで,読者の理解をより一層深めることを目指している.こうした方針のもと,本年も第69回日本糖尿病学会年次学術集会にあわせ,『糖尿病学2026』を刊行する運びとなった.
 さて,本書では今年も多様なテーマを取り上げることができた.基礎研究では,「RASのPI3Kαへの結合を促進する「分子接着剤」による糖取り込み増強作用」「肝臓由来の分泌因子Activin Bが糖代謝を制御する新たな仕組み」「Wolfram症候群:膵β細胞脱分化によりインスリン依存性糖尿病を発症する」「受精前プログラミング仮説(PfOHaD):受精前に起因する褐色脂肪の機能制御」など,糖代謝制御の新機序や疾患概念の深化につながる研究をはじめ,肥満制御と関連する腸内環境や心代謝疾患の遺伝的背景に関する知見など,病態の深い理解や将来の治療戦略を切り拓く可能性を秘めた9編を収載した.これらは臨床応用までに時間を要するものも含まれるが,わが国の基礎研究の水準の高さと今後の研究動向を示すものとして重要である.
 一方,臨床研究・展開研究においても9編を収録した.「1型糖尿病における急速進行群と緩徐進行群とその予測因子(TIDE—J研究)」や「日本における単一遺伝子糖尿病の遺伝的・臨床的特徴」といったプレシジョン・メディシンの進展を示す研究に加え,「女性の低体重/低栄養症候群(FUS):糖代謝異常との接点」や「糖尿病のサルコペニアバイオマーカー:最近の動向」など,日常診療に直結するテーマも取り上げている.また,「Four Pillars時代の糖尿病関連腎臓病治療とCONFIDENCE試験」や「チルゼパチドによる日本人肥満症に対する臨床試験(SURMOUNT—J試験)」など,新規治療の位置づけについてそれぞれの臨床試験に直接関わった研究者からの洞察を得ることができる内容となっている.
 紙幅の関係上,ここですべてを詳述することはできないが,いずれの論文もそれぞれの領域における最新の到達点を示すものであり,読者各位にはぜひ関心のある項目から紐解いていただきたい.
 おかげさまで,本年も18編の珠玉の論文を収載することができた.いずれも研究者の英知と弛まざる努力,そして情熱の結晶である.限られた期間の中で最新の知見をまとめていただいた執筆者の先生方に深く感謝申し上げる.

令和8年4月
門脇 孝
山内敏正

目次

口絵
序文
執筆者一覧

基礎研究
1.RASのPI3Kαへの結合を促進する「分子接着剤」による糖取り込み増強作用
[田中 純,寺山浩司]
はじめに
研究の背景とコンセプト
GLUT4スクリーニングから同定されたD223とD927
PI3Kα—RAS相互作用の選択的増強
構造解析:RAS—p110α界面での作用メカニズム
PI3Kα活性化におよぼすRASファミリー間の寄与
動物モデルにおけるインスリン様薬理作用と血糖改善
まとめ

2.肝臓由来の分泌因子Activin Bが糖代謝を制御する新たな仕組み
[小林直樹,植木浩二郎]
はじめに
Activin Bの分子生物学的背景と栄養応答性
Activin Bの細胞内シグナル活性化経路
Activin Bの生理的役割
Activin Bは複数のメカニズムで強力に糖代謝を改善する
Activin BはFGF21産生を介してインスリン感受性の改善およびエネルギー消費の亢進を誘導する
第2のメカニズム:グルカゴンシグナル抑制による糖産生抑制
Activin Bによるグルカゴン変動がグルコース応答性インスリン分泌を規定する
おわりに

3.運動強度に応じた基質選択的な肝糖新生の役割と制御
[堀内嵩弘,金子慶三,片桐秀樹]
はじめに
運動強度に応じた主要な糖新生基質の使い分け
肝糖新生経路の切り替えに伴う運動能の向上
肝細胞の細胞質レドックス変化を介したグリセロール・乳酸からの糖新生亢進
肝細胞の細胞質レドックス制御による運動能の亢進
運動強度に応じた基質選択的な肝糖新生の変化とその制御
おわりに

4.Wolfram症候群:膵β細胞脱分化によりインスリン依存性糖尿病を発症する
[椎木幾久子,田部勝也]
はじめに
Wolfram症候群におけるインスリン分泌不全とβ細胞脱分化
β細胞脱分化における細胞内ストレスの役割
脱分化β細胞におけるエネルギー代謝障害とTxnipの役割
Wolfram症候群に対するGLP—1治療の可能性
膵β細胞不全とβ細胞脱分化
おわりに

5.液—液相分離(LLP)によるオートファジーの駆動機構
[藤岡優子,野田展生]
はじめに
主要Atgタンパク質とPAS
PASはLLPで形成された液滴である
PASはAtg8脂質化の反応場として機能する
PAS液滴はAtg8修飾された膜小胞を取り込む
おわりに

6.受精前プログラミング仮説(PfOHaD):受精前に起因する褐色脂肪の機能制御
[米代武司,荒井 誠,酒井寿郎]
はじめに
褐色脂肪の多様な熱産生機構
ヒト褐色脂肪の個人差と生活習慣病リスク
受精の時期が褐色脂肪の個人差を決める
受精時期に起因する褐色脂肪の活性化とエネルギー消費量
受精時期が肥満度に及ぼす影響
経世代的制御の分子基盤
おわりに

7.視床下部摂食中枢におけるFTOの働き
[河野大輔]
はじめに
FTOと肥満
AgRPニューロンのFTOによる体重調節作用
AgRPニューロンのFTOが脱メチル化するRNA
FTOによるKif1aの選択的スプライシングの調節とその意義
AgRPニューロンにおけるFTO—KIF1A経路の生理的意義
おわりに

8.新規プレバイオティクス,水溶性酢酸セルロースによる抗肥満作用
[大野博司]
はじめに
プレバイオティクスの効果には個人差がある
水溶性酢酸セルロースは肥満や代謝異常を改善する
水溶性酢酸セルロースは脂肪分解を促進し,糖分解を抑制する
水溶性酢酸セルロースの代謝効果は腸内細菌依存的である
酢酸はB. thetaiotaomicronの増殖ならびに糖質消費を促進する
今後の展開

9.呼吸器疾患と心代謝疾患における集団間の遺伝的異質性の解明
[山本悠司,白井雄也,熊ノ郷 淳,岡田随象]
はじめに
呼吸器・免疫疾患と心血管代謝疾患のゲノムワイド関連解析(GWAS)
ポリジェニック・リスク・スコア(PRS)とメタボロームの統合解析による疾患間の遺伝的関係の検証
パスウェイPRS解析とシングルセル解析による疾患間で共通する生物学的メカニズムの探索
おわりに

臨床研究・展開研究
10.1型糖尿病における急速進行群と緩徐進行群とその予測因子(TIDE—J研究)
[能宗伸輔]
はじめに
わが国に特徴的な1型糖尿病のサブタイプ
TIDE—J研究の概要
β細胞機能低下の軌跡:サブタイプ間の比較
急性発症1型糖尿病の進展における多様性
HLA遺伝子型による進行速度の層別化
緩徐進行1型糖尿病における予測因子
劇症1型糖尿病における予測因子
臨床的意義と今後の展望
おわりに

11.日本における単一遺伝子糖尿病の遺伝的・臨床的特徴
[吉治智志,長谷部雅士,稲垣暢也]
はじめに
単一遺伝子糖尿病の分類とわが国における診療上の課題
わが国の全国調査からみた単一遺伝子糖尿病の実態
大規模集団データに基づく最新の知見
おわりに

12.女性の低体重/低栄養症候群(FUS):糖代謝異常との接点
[田村好史]
はじめに
低体重/低栄養症候群(FUS)とは
低体重や痩せ願望をもたらす背景
女性の低体重/低栄養と関連する病態
痩せた若年女性における耐糖能異常とその機序
女性の低体重/低栄養症候群(FUS)の定義
5型糖尿病の概念と女性の低体重/低栄養症候群(FUS)との接点
女性の低体重/低栄養症候群(FUS)に対する予防・介入と今後の展望
おわりに

13.糖尿病のサルコペニアバイオマーカー:最近の動向
[島袋充生,田辺隼人]
はじめに
糖尿病とサルコペニア
サルコペニアのバイオマーカー:筋量・筋機能・身体機能の評価
新規メカニズムと将来の展望
尿中タイチンとサルコペニア
おわりに

14.JDCP Studyからみえた2型糖尿病患者の食事摂取状況の実態および
ナトリウム・カリウム摂取量と心血管疾患発症リスクの関係
[堀川千嘉,曽根博仁]
はじめに
JDCP Studyからみえた2型糖尿病患者の食事摂取状況の実態
JDCP Studyからみえた2型糖尿病患者のカリウムおよびナトリウム摂取量と心血管疾患発症リスクとの関連
おわりに

15.糖尿病治療における治療アドヒアランスと心血管疾患リスク:
診療報酬明細データベースを用いた後ろ向きコホート研究
[岡田 啓,山口聡子]
はじめに
糖尿病をもつ人における受診アドヒアランスの課題
糖尿病をもつ人における受診アドヒアランスと予後との関連
糖尿病治療における受診アドヒアランスと心血管疾患リスク:研究デザインと対象集団
結果の概要
考察
おわりに

16.高齢者糖尿病における認知機能低下予防を目的とした多因子介入の効果検証:大脳白質病変の有無に基づくサブグループ解析(J—MIND—Diabetes研究)
[杉本大貴,櫻井 孝]
はじめに
方法
結果
考察と結論

17.Four Pillars時代の糖尿病関連腎臓病治療とCONFIDENCE試験
[村岡 賢,西 裕志,南学正臣]
はじめに
糖尿病関連腎臓病(DKD)の定義や最近の話題
糖尿病関連腎臓病(DKD)治療のFour Pillars
糖尿病関連腎臓病(DKD)に対する併用療法と迅速導入の必要性
CONFIDENCE試験
おわりに

18.チルゼパチドによる日本人肥満症に対する臨床試験(SURMOUNT—J試験)
[門脇 孝]
SURMOUNT—Jが行われた背景
SURMOUNT—J試験の目的,対象,方法
結果
考察

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